著者の所属・活動拠点の国は、アメリカ、マレーシア、ザンビアです。
掲載誌:Frontiers in Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
研究チームによると、子どもの栄養不良は5歳未満児の死亡の45%に関わっています。ザンビアでは5歳未満児の35%が発育阻害(年齢に比べて身長が低い状態)にあるとされます。母乳だけの時期から固形の食べ物へ移る生後6〜23か月の乳幼児は、特に栄養面で弱い立場にあります。食料に困っている家庭では、この時期の補完食(いわゆる離乳食)が、家族全員で食べている安価なおかゆになりがちです。こうしたおかゆは炭水化物が多い一方で、ほかの栄養素は少ないと著者らは指摘しています。
そこで注目されたのが、アフリカ南部で日常的に食べられている小型の魚です。この研究では、カリバ湖で獲れる「カペンタ」と呼ばれる小魚を使いました。小魚は内臓や頭ごと食べるうえ、干すことで栄養が凝縮されます。そのため、少量でもたんぱく質や脂質、亜鉛、ビタミンB12などをとることができます。ただ、魚粉は穀物がゆの栄養強化にあまり使われていません。家庭で材料を乾燥・調理する手間が負担になっていることや、新しい味が乳幼児や養育者に受け入れられるかが分かっていないことが理由として挙げられています。
研究チームは、ザンビアの食品会社と協力して魚粉入りのインスタントがゆを開発しました。今回はイチゴ味、バニラ味、プレーン、魚粉を増量したバニラ味の4種類を用意しました。成人と乳幼児のそれぞれにとってどれが受け入れやすいかを調べ、最も好まれる味を見極めることが研究の目的です。
どのように調べたか
4種類のおかゆには、共通して魚粉が使われています。ほかに、プロビタミンAを多く含むよう品種改良されたトウモロコシ粉、大豆粉、ソルガムやミレットなどの雑穀粉、バオバブやモリンガの粉、砂糖、塩が含まれます。商品は1袋50グラムの個包装で、水を加えて調理する設計です。
評価は、カリバ湖沿いの農村漁業地域であるシアボンガ地区で行われました。成人の評価には、地域のリーダーや家庭の食事を決める立場の人、漁業や魚の加工・販売に携わる人が参加しました。参加者は2日間の栄養・衛生などの講習の合間に、味を知らされないまま4種類のおかゆを順に食べました。そして、香り、見た目、食感、味、甘さ、手軽さ、総合的な受け入れやすさを5段階で評価しました。男性も意図的に参加者に含めています。これまでの調査で、男性は家庭の食べ物に関する決定権を強く持つ一方、乳幼児の栄養についての知識は女性より少ない傾向が示されていたためです。
乳幼児の評価では、養育者が子どもにおかゆを3さじずつ3回与えました。そのたびに、口を開けて受け入れる、顔をそむけるといった子どものしぐさをもとに、どれくらい好んでいるかを5段階で記録しました。食べた量や、ふだんの食事量と比べた多さもあわせて記録しています。さらに、プレーン味については専門の分析機関で栄養成分を測定しました。
主な結果
成人の評価は、最終的に46人分のデータで味ごとの差が比較されました。参加者は女性34人、男性19人でした。5段階評価の平均が4を下回ったのは、魚粉増量バニラ味の「味」の項目(3.8)だけでした。それ以外は、どの味のどの項目も「好き」から「とても好き」の範囲に入りました。香りや味など5項目の平均点では、イチゴ味が4.80と最も高く、ほかの3種類(4.41、4.30、4.04)を統計的に有意に上回りました。一方、総合的な受け入れやすさでは、バニラ味と魚粉増量バニラ味の間に有意な差はありませんでした。著者らはこの結果から、魚粉を増やしても受け入れやすさは損なわれなかったと見ています。
乳幼児の評価には生後6〜23か月の子ども33人が参加し、最終的に26人分のデータで比較が行われました。好みの平均点はイチゴ味が4.64、バニラ味が4.53、プレーンが4.15、魚粉増量バニラ味が4.01でした。統計的に有意な差が認められたのは、イチゴ味と魚粉増量バニラ味の間だけです。3回目の試食で「好き」「とても好き」と記録された子どもの割合は、イチゴ味96.2%、バニラ味90.3%、プレーン71.9%、魚粉増量バニラ味62.1%でした。魚粉増量バニラ味は、出された量の4分の3以上を食べた子どもが3割ほどにとどまり、他の味より受け入れがやや低い結果でした。
栄養分析によると、プレーン味は100グラムあたり377キロカロリー、たんぱく質15.5グラム、脂質6.1グラムを含んでいました。アフリカで広く売られている市販の補完食用おかゆ3製品と比べると、エネルギーはほぼ同程度でした。たんぱく質は市販品と比べて遜色ないか、それを上回る水準でした。例えば生後6〜8か月児に1日半袋を与える場合、補完食から必要なエネルギーの約26%、1日に必要なたんぱく質の約24%をまかなえると試算されています。ただし、脂質は乳児の1日の目安量の5〜10%程度にとどまりました。著者らは、市販品にもさらに脂質の少ないものがあり、穀物がゆ全般に共通する特徴だと述べています。そのうえで、調理の際に油を加えるといった工夫で補える可能性を挙げています。
研究が示すこと
著者らは、4種類すべてのおかゆが成人にも乳幼児にも高く受け入れられたと報告しています。中でも、この地域の人々にとってなじみの薄いイチゴ味が、両方の評価で最も好まれた点を注目すべき結果としています。また、家計の決定権を持つことの多い男性が実際に試食し、高く評価したことにも著者らは意味を見いだしています。家庭でこうした食品が取り入れられるうえで、重要な手がかりになりうるという見方です。
一方で、この研究は一つの地区の比較的少人数を対象としたものです。2日間に続けて試食したことによる影響の可能性もあり、保存性や価格についても調べられていません。こうした限界があることを踏まえたうえで、研究チームは次のように結論づけています。地元で手に入る小魚の粉で乳幼児向けのおかゆを栄養強化するという方法は、味の面で受け入れられ、実現可能であることが示されたということです。
原著論文の著者・所属:Kathleen Ragsdale(Social Science Research Center, Mississippi State University)、Terezie Tolar-Peterson(College of Health Sciences, Touro University California)、Kendra A. Byrd(Department of Food Science and Nutrition, California Polytechnic State University)、Netsayi N. Mudege(WorldFish, Lusaka Office)、Sylvia C. Banda(Sylva Food Solutions, Lusaka, Zambia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Kathleen Ragsdale, Terezie Tolar-Peterson, Kendra A. Byrd, et al. Sensory acceptance of four flavors of fish-fortified instant porridge for complementary feeding of infants and young children. Frontiers in Nutrition 2026-08-12. DOI: 10.3389/fnut.2026.1839118. 原著ライセンス:CC BY.