著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Indonesian Journal of Innovation Studies
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
インスタント調味料は、香辛料などを決められた配合で混ぜて加工したもので、料理の手間を省ける便利な食品です。工場で大量に作られるため、細菌などによる生物的な汚染、化学物質による汚染、異物の混入を防ぐ品質管理が欠かせません。
こうした管理の代表的な仕組みがHACCP(危害分析重要管理点)です。原材料の受け入れから製品の完成までの各工程で起こりうる危害をあらかじめ分析し、特に重点的に管理すべき工程を決めて監視する方法です。著者らは、HACCPの原則は食品業界で広く採用されている一方、特定の料理向けの粉末調味料について実際の運用を具体的に記録した報告は少ないと指摘しています。
そこで研究チームは、インドネシア東ジャワ州モジョケルトにあるアジノモト・インドネシアの工場で作られている粉末のインスタント調味料「サジク」を対象に、HACCPの12の手順がどのように適用されているかを整理しました。
何をどのように調べたか
この論文は産業実習(インターンシップ)での活動をもとにまとめられたものです。著者らは、関係者への対面での聞き取り、現場での直接の観察、先行研究などの文献調査を組み合わせて情報を集めました。
HACCPの12手順は、HACCPチームの編成、製品の説明、想定される使用者の確認、製造工程の流れ図の作成と現場での確認という準備段階と、それに続く7つの原則からなります。7原則とは、危害の分析、重要管理点(CCP)の決定、管理基準(許容できる限界)の設定、監視方法の決定、基準を外れたときの対応の決定、仕組みが計画どおり機能しているかの検証、記録と文書化です。
危害の分析では、サルモネラ菌などの生物的危害、許可されていない添加物や重金属などの化学的危害、ガラス片や金属片などの物理的危害を想定し、起こる可能性と被害の重さの組み合わせで重要度を判断しています。そのうえで、判断の流れを順に問う「決定樹」を使って重要管理点を決めています。
主な結果
論文によると、サジクの製造工程では二つの工程が重要管理点とされました。一つは、粉砕しない原材料を計量する工程で、食品添加物の量を管理するためのものです。もう一つは金属探知機による検査工程で、金属片などの異物を取り除くためのものです。
計量工程では、メタ重亜硫酸ナトリウム(二亜硫酸ナトリウム)と、着色料の黄色6号アルミニウムレーキが管理の対象です。論文では管理基準として、調味料としての前者を67ppm(規制値は200ppm)、後者を23ppm(規制値は70ppm)と示しています。レシピどおりに計量されているかを、計量担当の作業員がバッチごとに1回確認します。基準を外れた場合は作業を止めて計量し直すとされています。
金属探知機の工程では、機械で使われている最も小さなボルトから取った試験片を探知できることが基準とされています。探知機で排除された製品の確認は袋ごとに1回、探知機の感度確認は1シフトあたり4回行われ、担当作業員と品質管理担当者が実施します。問題が起きた場合は作業を止めて探知機を再確認し、基準に合わない製品を廃棄し、金属の種類を特定します。再発防止として、探知機の清掃、月1回の校正と点検、年1回のメーカーによる校正、従業員への教育が挙げられています。
さらに、計量記録や完成品の分析結果、探知機の確認記録を見直すことで仕組みの働きを検証し、これらの記録を保管することで、外部の監査担当者も含めて情報を確認できるようにしていると報告されています。
この研究が示すこと
著者らは、サジクの製造では12の手順に沿ってHACCPが適用され、製造の最初から最後まで食品の安全を支える仕組みになっていると結論づけています。特に、添加物の量を守るための計量と、金属の混入を確かめる金属探知機が、具体的な管理の要として位置づけられています。
この報告は、粉末調味料の製造現場で、どの工程を重点的に管理し、どのような基準と手順で監視・記録しているかを具体的に示した事例として、HACCPが実際の工場でどのように運用されているかを知る手がかりになります。
著者:Zidny Maziya(Universitas Muhammadiyah Sidoarjo)、Syarifa Ramadhani(Universitas Muhammadiyah Sidoarjo)、Saiful Anwar(Universitas Muhammadiyah Sidoarjo)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Zidny Maziya, Syarifa Ramadhani, Saiful Anwar. HACCP (Hazard Analysis Critical Control Point) on Sajiku MSS (Menu Spesific Seasoning) Product at PT. Ajinomoto Indonesia Mojokerto Factory. Indonesian Journal of Innovation Studies 2026-10-05. DOI: 10.21070/ijins.v25i3.2375. 原著ライセンス:CC BY.