すき焼き鍋に薄切りのうし [乳用肥育牛肉] リブロース 脂身つき 生を1枚くぐらせると、赤身と脂身のサシがふわりと溶けて甘い香りが立つ。牛肉は通年出回る食材だが、北海道をはじめ鹿児島・宮崎などが代表的な産地として知られ、脂ののった一皿は夏の食卓でも変わらず存在感を放つ。薄切り1枚は約50g、すき焼き1人分なら約120gが目安になる。この「脂身つき」という一言にこそ、リブロースのうまみと注意点の両方が詰まっている。

可食部100gあたりのエネルギーは380kcal、脂質は37.1gにのぼる。脂質のうち特に多いのが飽和脂肪酸で、可食部100gあたり15.1gを占める。飽和脂肪酸は体内で合成できるため必須の栄養素ではないが、摂りすぎると血中のコレステロールや中性脂肪を増やしやすいとされ、特にLDL(悪玉)コレステロールを上昇させて血中脂質を高めやすいとされる。飽和脂肪酸の摂取量と血中コレステロール濃度の間には正の関連が古くから知られており(Keys・Hegstedの式)、また炭水化物の一部を不飽和脂肪酸に置き換えた食事は血圧を低下させるとされ、飽和脂肪酸を減らすことで循環器疾患のリスクが17%低下したという報告もある(日本人の食事摂取基準)。パルミチン酸ステアリン酸といった飽和脂肪酸は、バターやラード、肉の脂身、生クリームなど動物性の脂に多く含まれる成分である。

※本段落に示した飽和脂肪酸の摂取と血圧・循環器疾患リスクに関する記述は栄養疫学上の知見であり、特定の食品の効果を示すものではありません。

一方でリブロースの脂には、コクや香りといった独特の風味を生む役割もある。うまみの主役はアミノ酸にもあり、リブロースに含まれるアミノ酸のうち最も多いのはグルタミン酸で、可食部100gあたり2200mg。昆布だしのうまみ成分としても知られる酸で、次いでアスパラギン酸1300mg、リシン1200mgと続く。脂の風味とグルタミン酸のうまみが重なり合うことで、リブロースならではの濃厚な後味が生まれる。たんぱく質は可食部100gあたり14.1gで、女性30〜49歳の推奨量50g/日の約28%にあたる。牛肉は豚肉や鶏肉に比べてや脂質が多く、吸収率の高いヘム鉄やビタミンB12亜鉛が豊富で、脂質には一価不飽和脂肪酸も含まれる。ただし牛肉は食物アレルギーを起こしやすいとされる食材のひとつでもあるため、体質によっては注意が必要だ。

夏場の食べ方としては、脂の多いリブロースを薄切りにして冷しゃぶ風にしたり、すき焼きで野菜と一緒に割り下でさっと煮たりすると、脂の重さを他の食材が受け止めてくれる。持ち帰りは保冷剤で温度を上げないようにし、使い切れない分はドリップを拭いてラップに包み冷凍すれば、冷蔵で2〜3日、冷凍なら2〜3週間ほどが保存の目安になる。

牛肉は和牛・国産牛・輸入牛に分けられ、和牛は脂肪が多く輸入牛は脂肪が少ない傾向があるとされる。今回取り上げた乳用肥育牛肉のリブロースは、風味を支える脂と、摂りすぎ注意の飽和脂肪酸という二面性をあわせ持つ部位だ。だからこそ薄切りにして野菜と合わせる、赤身の多い部位と組み合わせるといった一皿の工夫が生きてくる。脂の性質を知った上で選ぶ一枚は、ただ食べるよりも一段深く味わえるはずだ。詳しい摂取の目安は日本人の食事摂取基準も参考にしてほしい。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準e-ヘルスネット「LDLコレステロール」(厚生労働省)