この研究は、ブラジルの研究機関の研究論文です。

掲載誌:European Food Research and Technology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ブラジルのアマゾン地域には多数の樹木や草本が生育していますが、その多くは「食べられるのに、ほとんど知られていない植物」として利用が進んでいません。ブラジルではこうした植物を「非慣行食用植物(UFPs)」と呼びます。これは、人口の多くにとってなじみが薄い、あるいは十分に活用されていない食用植物を指す言葉で、野生の植物、流通の限られた栽培種、よく知られた作物のあまり食べられていない部位などが含まれます。

著者らによれば、アマゾン産の食用植物に関する研究は、アサイーやカムカム、ククアスといった有名な果実に偏っており、栄養成分か民族植物学的な利用法かといった一面だけを扱ったものが多いといいます。そこで研究チームは、あまり調べられてこなかった6種のアマゾン産UFPsを取り上げ、栄養成分・生体機能性成分・抗酸化能・試験管内での細胞への作用をひとまとめに評価しました。研究の狙いは、こうした植物の価値づけと、食品や医薬分野での将来的な活用を支える基礎データを作ることだと述べられています。

何をどのように調べたか

対象となったのは、カアペバ(Piper peltatum)、シポアーリョ(Mansoa alliacea)、オラプロノビス(Leuenbergeria bleo)、ピサンプレト(Bidens bipinnata)、ポブレベーリョ(Costus spiralis)、ウルチガ(Urera caracasana)の6種です。いずれもブラジル・マナウスの一区画で採取され、植物学者による同定を受けて標本が登録されています。集めた葉は洗って凍結乾燥し、粉末にしてから分析に用いられました。

分析の柱は大きく二つです。ひとつは成分の測定で、たんぱく質・脂質・灰分・食物繊維といった一般成分、カルシウムやカリウム、鉄などのミネラル、ビタミンC(アスコルビン酸)、糖類、カロテノイド、そしてポリフェノール(植物に広く含まれる成分群)が、それぞれの専用の分析装置で定量されました。あわせて、総ポリフェノール量・総フラボノイド量と、ABTS・ORAC・FRAPという三つの手法による抗酸化能が測られています。

もうひとつは細胞を使った試験です。抗酸化能がもっとも高かった2種(ポブレベーリョとピサンプレト)の抽出物について、ヒトのがん由来細胞の増殖を抑えるかどうか(抗増殖活性)と、培養した皮膚のケラチノサイト(表皮の細胞)に付けた引っかき傷がふさがる速さ(創傷治癒を模した試験)が調べられました。これらはあくまで試験管内・培養細胞での実験です。

主な報告結果

栄養面では種ごとに得意分野が分かれました。シポアーリョはたんぱく質(6.19%)、脂質、不溶性食物繊維、炭水化物でもっとも高い値を示し、6種の食物繊維は3.40〜18.34%の範囲で、比較対象としたホウレンソウやルッコラの値を上回ったと報告されています。ミネラルではオラプロノビスがカルシウム・マグネシウム・鉄・マンガン・亜鉛・ナトリウムで高く、ウルチガはカリウムと銅で最も高い濃度でした。ビタミンCは12.47〜101.43 mg/100gと幅があり、最も多かったのはウルチガでした。

カロテノイドについては、著者らはこれら6種の profile を報告するのは初めてだとしています。合計18種類のカロテノイドが同定され、総量が最も多かったのはオラプロノビス(35.50 mg/100g)でした。どの種でも主成分は(all-E)-ルテインで、これは葉物野菜に共通して見られる特徴だと説明されています。

ポリフェノールでは、19の標準物質のうち5種類(カフェ酸・クロロゲン酸・フェルラ酸の3つのフェノール酸と、ケルシトリン・ルチンの2つのフラボノイド)が検出・定量されました。ピサンプレトではクロロゲン酸が主成分で、ポブレベーリョではルチンが多く含まれていました。総ポリフェノール量は3.57〜31.32 mg GAE/g の範囲で、ポブレベーリョとピサンプレトがとくに豊富であり、この2種は三つの抗酸化試験すべてで最も高い活性を示しました。著者らは、これがポリフェノール量の多さと関係している可能性を挙げています。

一方、細胞試験の結果は期待どおりではありませんでした。ピサンプレト抽出物はいずれのがん細胞株にも作用を示さず(GI50が試験上限の150 µg/mLを超過)、ポブレベーリョ抽出物もHT-29細胞に対する弱い細胞増殖抑制(GI50 = 15 µg/mL)を除けばほとんど不活性でした。さらに両抽出物は、がんではない不死化ケラチノサイトに対しても増殖抑制を示したため、著者らは選択性が低く、用量の設定には注意が必要だと述べています。抽出物中の個々のポリフェノールには他の研究で抗増殖作用の報告がある一方で、今回は複雑な混合物である抽出物を用いたため、これらの成分の濃度が反応を引き起こすには足りなかった可能性があり、これは本研究の限界だと論文は認めています。

この研究が示すこと

この研究は、ほとんど注目されてこなかったアマゾンの食用植物6種について、栄養成分から機能性成分、抗酸化能、細胞レベルの応答までを一続きに記録した最初のまとまったデータセットを提供しました。とくに、食物繊維やミネラル、ビタミンC、ルテインなどのカロテノイド、そしてポリフェノールの含有量が、比較対象とされた一般的な葉物野菜の報告値を上回る例が複数示されています。

同時に、成分が豊富であることと、細胞に対する効果が確認されることは別の話でもありました。抗酸化能の高かった2種でも、がん細胞への作用はほとんど見られず、正常に近い細胞との区別もつきませんでした。著者らは、試験管内の抗酸化活性が生物学的に意味のある効果につながるかは、今後適切な実験系で確かめる必要があると位置づけています。地域で入手しやすいこれらの植物を評価していくうえで、何がわかっていて何がまだ確かめられていないのかを整理した一歩といえます。

著者:Cynthia Tereza Corrêa da Silva Miranda(https://ror.org/04wffgt70 grid.411087.b 0000 0001 0723 2494 Departamento de Ciência de Alimentos e Nutrição/ Faculdade de Engenharia de Alimentos Universidade Estadual de Campinas Campinas 13083-862 São Paulo Brazil)、Adriana de Souza Lima(https://ror.org/04wffgt70 grid.411087.b 0000 0001 0723 2494 Departamento de Ciência de Alimentos e Nutrição/ Faculdade de Engenharia de Alimentos Universidade Estadual de Campinas Campinas 13083-862 São Paulo Brazil)、Stephanie Dias Soares(https://ror.org/04wffgt70 grid.411087.b 0000 0001 0723 2494 Departamento de Ciência de Alimentos e Nutrição/ Faculdade de Engenharia de Alimentos Universidade Estadual de Campinas Campinas 13083-862 São Paulo Brazil)、Ana Lúcia Tasca Gois Ruiz(https://ror.org/04wffgt70 grid.411087.b 0000 0001 0723 2494 Faculdade de Ciências Farmacêuticas Universidade Estadual de Campinas Campinas 13083-859 São Paulo Brazil)、Jhonathan Vinícius Menezes Silva(https://ror.org/04wffgt70 grid.411087.b 0000 0001 0723 2494 Departamento de Ciência de Alimentos e Nutrição/ Faculdade de Engenharia de Alimentos Universidade Estadual de Campinas Campinas 13083-862 São Paulo Brazil)、Lílian Regina Barros Mariutti(https://ror.org/04wffgt70 grid.411087.b 0000 0001 0723 2494 Departamento de Ciência de Alimentos e Nutrição/ Faculdade de Engenharia de Alimentos Universidade Estadual de Campinas Campinas 13083-862 São Paulo Brazil)、Jaime Paiva Lopes Aguiar(https://ror.org/01xe86309 grid.419220.c 0000 0004 0427 0577 Laboratório de Análises Funcionais e Química dos Alimentos Instituto Nacional de Pesquisas da Amazônia 69067-375 Manaus Amazonas Brazil)、Francisca das Chagas do Amaral Souza(https://ror.org/01xe86309 grid.419220.c 0000 0004 0427 0577 Laboratório de Análises Funcionais e Química dos Alimentos Instituto Nacional de Pesquisas da Amazônia 69067-375 Manaus Amazonas Brazil)、Felipe Tecchio Borsoi(https://ror.org/04wffgt70 grid.411087.b 0000 0001 0723 2494 Departamento de Ciência de Alimentos e Nutrição/ Faculdade de Engenharia de Alimentos Universidade Estadual de Campinas Campinas 13083-862 São Paulo Brazil)、Iramaia Angélica Neri-Numa(https://ror.org/04wffgt70 grid.411087.b 0000 0001 0723 2494 Departamento de Ciência de Alimentos e Nutrição/ Faculdade de Engenharia de Alimentos Universidade Estadual de Campinas Campinas 13083-862 São Paulo Brazil)、Gláucia Maria Pastore(https://ror.org/04wffgt70 grid.411087.b 0000 0001 0723 2494 Departamento de Ciência de Alimentos e Nutrição/ Faculdade de Engenharia de Alimentos Universidade Estadual de Campinas Campinas 13083-862 São Paulo Brazil)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Cynthia Tereza Corrêa da Silva Miranda, Adriana de Souza Lima, Stephanie Dias Soares, et al. Bioactivity and nutritional profiling of underexplored unconventional food plants with potential for applications as functional foods. European Food Research and Technology 2026-09-27. DOI: 10.1007/s00217-026-05307-1. 原著ライセンス:CC BY.