この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Journal of Innovation in Applied Natural Science
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
小麦粉の一部をアワ粉に置き換える試み
インドネシアのブンクル州には、小麦粉を生地に使い、パイナップルジャムなどをのせて焼く「バイ・タット(bay tat)」という伝統菓子があります。研究チームは、この菓子の小麦粉の一部を、地元で栽培されているアワ(フォックステイルミレット、学名 Setaria italica)の粉に置き換えたとき、菓子の化学的な成分がどう変わるのかを調べました。
著者らは、アワ粉には食物繊維やタンパク質、カルシウムや鉄などのミネラルが比較的多く含まれると説明しています。一方でインドネシアでは、アワは主に家畜の飼料として使われ、食品素材としての可能性はあまり知られていないといいます。小麦の輸入量が多い状況もあり、地元で採れる作物を食品に生かして小麦粉への依存を減らす意味があると論文は位置づけています。そのうえで、バイ・タットにアワ粉をどの程度混ぜると成分がどう変化するのかは、これまで明らかになっていなかったと述べています。
5通りの配合をつくって成分を測る
研究はブンクル大学の実験室と家庭規模の製造場所で行われました。粉の配合を唯一の条件として変える「完全無作為化デザイン」という実験設計を用い、小麦粉だけ(アワ粉0%)の対照に加え、小麦粉をアワ粉で20%、30%、40%、50%置き換えた、合わせて5種類の生地を用意しました。各条件を3回ずつ繰り返し、全部で15の試料をつくっています。
生地は、煮たココナッツミルクと砂糖を一晩おいたものに、マーガリン、卵、重曹、バニラ、塩を加え、そこへ配合比に従って小麦粉とアワ粉を少しずつ混ぜて成形し、パイナップルジャムをのせて卵黄を塗り、175℃のオーブンで約10分焼いたと記されています。砂糖やココナッツミルクなど粉以外の材料の量は、どの条件でも同じにそろえられました。
焼き上がった菓子について測ったのは、水分、炭水化物、タンパク質、粗繊維の4項目です。水分は試料を105℃の乾燥機で乾かして重さの減りから求める方法、タンパク質は窒素量から換算するケルダール法など、食品分析で一般的な手順が使われました。得られた数値は分散分析(ANOVA)で条件間に差があるかを調べ、差が認められた項目についてはダンカンの多重比較検定でさらに比較しています。
水分と炭水化物は減り、タンパク質と繊維は増えた
論文の報告によれば、アワ粉の割合を増やすほど、菓子の水分と炭水化物は下がり、タンパク質と粗繊維は上がりました。水分は小麦粉だけの23.13%から、アワ粉50%では16.57%へ、炭水化物は43.24%から37.97%へと低下しています。反対にタンパク質は7.88%から14.88%へ、粗繊維は0.61%から2.56%へと増えました。4項目すべてで、配合の違いによる差が統計的に意味のあるものだったと著者らは述べています。
著者らはこの変化の理由として、アワ粉と小麦粉の成分の違いを挙げています。用いたアワ粉は小麦粉より炭水化物が少なく、タンパク質と粗繊維は多かったこと、またアワ粉のグルテンがごく少ないため生地が焼成中に水分を保ちにくいことが、水分の低下に関係していると説明しています。なお水分については、どの配合もインドネシア国家規格(SNI)が定める上限を下回っていたと報告されています。
同時に、この研究が調べたのは上記の4項目にとどまることも論文自身が限界として挙げています。脂質や灰分、ミネラル、抗酸化作用は測られておらず、食感や色、食べた人の好み、保存中の品質変化も検討されていません。置き換えの割合も50%までしか試していないため、最適な配合がどこにあるかは今回の範囲では決められないとしています。
地元の作物を伝統菓子に生かす手がかり
この研究が示したのは、アワ粉の混ぜる割合そのものが、バイ・タットの成分を左右する主要な要因だということです。著者らは、小麦粉の半分までをアワ粉に置き換えてもタンパク質と粗繊維は増やせたと述べ、伝統菓子をつくる人たちが配合を考えるうえでの手がかりになると位置づけています。地元で育つ作物の使い道を広げ、伝統的な食品の新しい形を探る試みとして、成分という具体的な数値で裏づけを与えた研究だといえます。
著者:Marietha Kristiani Br. Sinurat(Universitas Bengkulu)、Sri Wulandari(Universitas Bengkulu)、Laili Susanti(Universitas Bengkulu)、Ulfah Anis(Universitas Bengkulu)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Marietha Kristiani Br. Sinurat, Sri Wulandari, Laili Susanti, Ulfah Anis Chemical Characteristics of Bay Tat Traditional Cake at Various Levels of Foxtile Millet (Setaria italica) Flour Substitution. Journal of Innovation in Applied Natural Science 2026-09-11. DOI: 10.58723/jinas.v2i2.227. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。