アミノ酸のひとつ「アラニン」は、糖新生(体内で糖を作り出すはたらき)やエネルギー生成に使われやすく、甘味とうま味をあわせ持つ成分です。食品成分表に載る食品の中でこの値が最も多いのは、意外にもぶたゼラチンで、100gあたり9400mg。なお、アラニンには食事摂取基準のような定量的な目安量は定められていません。だからこそ「多い食品」を数字で見比べることに意味があります。

1位ゼラチンの正体は「おまけ」だった

ゼラチンは、動物の皮や骨に含まれるコラーゲンから作られる食品で、ゼリーなどの材料になります。そのアミノ酸の内訳を見ると、面白いことが分かります。最も多いのはグリシン24000mgで、次いでプロリンヒドロキシプロリンがそれぞれ13000mg、さらにグルタミン酸10000mgと続きます。グリシン・プロリン・ヒドロキシプロリンはいずれもコラーゲンに多く含まれるアミノ酸で、コラーゲンはグリシンが全体の約3分の1を占め、プロリンとヒドロキシプロリンも豊富に含む構造をしています。一方のアラニンは9400mgで、内訳の中では5番目に位置します。つまりゼラチンがアラニン含有量で1位になっているのは、アラニンを豊富に含む食品だからではなく、コラーゲンというタンパク質の塊であるがゆえに、その構成アミノ酸のひとつとして結果的にアラニンも多く含まれている、という話なのです。ちなみに脂質はほぼゼロの食品です。

2位以下は「アラニンらしさ」が際立つ顔ぶれ

2位のかずのこ(乾)は、アラニン5400mg(推定値)。この食品ではトリプトファン1300mg(推定値)やチロシン3700mg(推定値)も多く、トリプトファンは体内でセロトニンの材料になる不可欠アミノ酸、チロシンはドパミンなどカテコールアミンやメラニン色素のもとになるアミノ酸として知られています。3位の乾燥卵白は5300mg(推定値)。卵白は水分たんぱく質が主成分です。この食品ではビタミンB2が2.09mgと豊富で、30〜49歳女性の推奨量1.2mgの約174%にあたりますが、これは推奨量に対する割合であり、通常の食事量であれば摂りすぎの心配をするようなものではありません。フェニルアラニン5100mg(推定値)も多く、これは体内でチロシンに変換される必須アミノ酸です。

4位はタイで2食品が並びます。とびうお煮干しはアラニン4700mg。カルシウムが1200mgと豊富で、30〜49歳女性の推奨量650mgの約185%にあたりますが、これも一食で食べる量であれば過剰を心配するような値ではありません。同じく4700mgで並ぶサケ節(削り節)は、サケが赤い色素成分アスタキサンチンを含むことで知られる魚を原料にした乾燥食品です。この2食品は、ゼラチンや卵白とは違い、アミノ酸全体の内訳で見てもアラニンが上位から中位に食い込んでおり、含有量の多さが「たまたま」ではなく群全体の中でも存在感のある位置にあることが特徴です。

数字の内訳が教えてくれること

アラニンという1本の物差しでランキングを作ると1位にゼラチンが来ますが、内訳を覗くとその正体は、グリシン24000mg・プロリンとヒドロキシプロリン各13000mg・グルタミン酸10000mgがいずれもアラニンを上回るコラーゲン由来の食品で、アラニンはその陰に隠れた副産物に過ぎないことが分かります。もし「アラニンを味わいたい」と思うなら、群内でもアラニンの存在感が際立つかずのこや煮干し、サケ節のような食品のほうが、数字の裏付けとしては素直な選び方といえそうです。ランキングの1位という肩書きだけでなく、その食品がそもそも何のためにある食品なのかという内訳まで見てみると、同じ数字でも見え方が変わってきます。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準食品安全委員会