100gあたり5000mg(推定値)。かずのこの乾物に含まれるトレオニン(スレオニン)の量です。トレオニンは体内で合成できず食事から摂る必要がある不可欠(必須)アミノ酸のひとつで、日本人の食事摂取基準では個別のアミノ酸としての推奨量や目安量は設定されていません。ならば順位に意味はないかというと、並べてみると妙なことが起きています。

2位に、3つの食品が同じ4000mgでぴたりと並ぶのです。牛乳由来のカゼイン、卵由来の乾燥卵白、魚由来のとびうお煮干し。由来がまるで違う3つが、示し合わせたように同じ数字を出しています。

トレオニンが多い食品 上位5(可食部100gあたり/(推定値)は日本食品標準成分表の推定値)
順位食品トレオニンこの食品で際立つもの
1位にしん かずのこ 乾5000mg(推定値)グルタミン酸11000mg(推定値)
2位(同値)カゼイン4000mgグルタミン酸19000mg
2位(同値)乾燥卵白4000mg(推定値)ビタミンB2 2.09mg/脂質0.4g
2位(同値)とびうお煮干し4000mgカルシウム1200mg
5位しろさけ サケ節 削り節3900mg(推定値)ビタミンD 33µg/セレン120µg

1位は、かずのこの乾物

にしん かずのこ 乾のトレオニンは5000mg(推定値)。2位の4000mgより頭ひとつ抜けています。アミノ酸の顔ぶれ全体が厚く、グルタミン酸11000mg(推定値)を筆頭に、トリプトファン1300mg(推定値)、チロシン3700mg(推定値)と並びます。水分が抜けているぶん成分が凝縮された食品なので、一度に食べるのは数g程度にとどまるものです。

同じ4000mg、中身は三者三様

ここからが本題です。まずカゼイン。牛乳のたんぱく質の大部分を占める成分で、際立つのはグルタミン酸19000mg。うま味成分としても知られるアミノ酸です。

次に乾燥卵白。持ち味はビタミンB2で、100gあたり2.09mgは女性30〜49歳の推奨量1.2mg/日の174%にあたります。ビタミンB2は多くの栄養素の代謝に関わり、皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です。加えて脂質が0.4gと非常に少なく、卵白ならではの軽さがそのまま数値に出ています。

そしてとびうお煮干し。主役はカルシウム1200mgで、女性30〜49歳の推奨量650mg/日の185%にあたります。カルシウムは骨や歯の主要な構成要素で、細胞の働きにも必須の栄養素です。リシン(リジン)7400mgも豊富で、骨ごと食べられる煮干しらしい顔ぶれです。

トレオニンという物差しでは同じ高さに並んでいても、選ぶ理由はまるで別のところにありました。うま味ならカゼイン、軽さなら乾燥卵白、カルシウムも一緒にならとびうお煮干し、という具合です。

5位が教えてくれること

5位のしろさけ サケ節 削り節は3900mg(推定値)で、2位の3つとほぼ肩を並べる位置にいます。けれどこの食品の個性は、トレオニンの数字には表れていません。ビタミンDは33µgで女性30〜49歳の目安量9µg/日を大きく上回り、セレンは120µgで推奨量25µg/日の480%に達します。ビタミンDはカルシウムの吸収を促し骨の形成に関わる栄養素、セレンは抗酸化に関わる酵素の成分とされる栄養素です。いずれも通常の一食量であれば過剰摂取の心配をするような数字ではありませんが、トレオニンの順位だけを追っていたら見落としていました。

まとめ

同じ4000mgの裏に、うま味・ビタミン・ミネラルという三者三様の得意分野が隠れていました。ひとつの成分で並べた表は、順位を教えてくれるだけです。数字が同じところに並んだときこそ、その先の「何が突出しているか」まで見に行くと、食品選びの解像度がぐっと上がります。

※本記事は特定の食品の効果・効能を示すものではありません。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準