著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:The Journal of Animal and Plant Sciences
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究のねらい
アミガサタケ(モリーユ)の一種であるMorchella sextelataは、蜂の巣のような網目模様のかさを持つ高価な食用きのこで、中国では栽培面積が広がっています。栽培では羊ふん、木くず、きのこの廃培地などを土に混ぜて使いますが、栄養の供給が安定しない、土の養分のバランスが崩れる、病原菌を持ち込むおそれがあるといった課題が残っていると論文は指摘しています。
一方、中国では穀物から酢を造る際に出る「酢かす」が年間300万トン以上発生し、その多くは埋め立てや焼却で処理されています。酢かすは米ぬか、ふすま、コーリャンの殻などに由来し、たんぱく質や繊維を多く含むため、ほかのきのこの栽培材料として使われた例があります。しかし、アミガサタケの栽培に使った研究は少なく、羊ふんと組み合わせたときにアルカリ性の土やきのこの品質がどう変わるかは、ほとんど調べられていませんでした。
そこで研究チームは、酢かすと羊ふんの産地でもある山西省で、両者を適切な割合で混ぜた栽培用の土づくりが、土の性質を改善し、アミガサタケの収量と栄養成分を高めるかどうかを確かめました。
どのように調べたか
試験は山西省農業科学院の太陽光を利用する温室で、2023年10月から2024年4月まで行われました。試験地の土はもともとpH8.5前後のアルカリ性の土壌です。研究チームは、何も加えない表土(対照)、十分に堆肥化した羊ふんだけを加えた区、酢かすだけを加えた区、羊ふんと酢かすを半量ずつ組み合わせた区の4通りを用意し、それぞれ3回ずつ繰り返して、区の配置による偏りが出ないように並べました。
2024年3月下旬から4月下旬にかけて、出荷に適した状態まで育ったきのこを毎日収穫して重さを量りました。あわせて、栽培終了時の土に含まれる養分と、きのこに含まれるアミノ酸、カルシウム、マグネシウム、粗たんぱく質、粗多糖、粗脂肪を分析しました。「アルカリ加水分解性窒素」と呼ばれる、作物やきのこが比較的利用しやすい形の窒素の量も測定し、土の養分ときのこの収量・成分との関係も統計的に調べています。
主な結果
羊ふんと酢かすを組み合わせた区では、土の利用しやすい窒素が対照より47.59%多くなり、4区の中で最も高い値でした。羊ふんだけの区では27.44%、酢かすだけの区では41.55%の増加でした。一方、利用しやすいリンとカリウムは羊ふんだけの区で最も多くなりました。酸性の酢かすを加えても土のpHは8.28〜8.49の範囲にとどまり、区による有意な差はありませんでした。
収量は、組み合わせた区が1平方メートルあたり332.56グラムで最も多く、対照より65.94%、羊ふんだけの区より26.37%、酢かすだけの区より16.11%多かったと報告されています。
成分面でも、組み合わせた区は対照に比べて粗たんぱく質が21.80%、粗多糖が9.64%、カルシウムが26.66%、マグネシウムが34.89%多く、粗脂肪は19.49%少なくなりました。人が食事からとる必要がある必須アミノ酸の合計は9.79%多く、うま味に関わるアミノ酸(アスパラギン酸とグルタミン酸)は8.53%、甘味に関わるアミノ酸は15.07%多くなったとされています。
さらに、土の利用しやすい窒素の量が多いほど、きのこの収量、粗たんぱく質、アミノ酸の総量、マグネシウムが多く、粗脂肪が少ないという関連が見られました。研究チームは、組み合わせた区で窒素の供給が保たれたことが収量と品質の向上につながった可能性があると考察しています。ただし、これは相関として示された関係であり、土の微生物が関わっているという見方も、今回は微生物を調べていないため確かめられていないと論文は述べています。
この研究が示すこと
この研究は、地域で大量に出る酢かすと羊ふんという二つの農業副産物を組み合わせることで、アルカリ性の土でもアミガサタケの収量と栄養成分が高まりうることを、温室での栽培試験から示しました。土の養分は栽培の終わりにしか測っておらず、最適な配合は土の種類や気候によって変わりうるといった限界も著者らは挙げていますが、廃棄されがちな資源をきのこ栽培に生かす方法として、具体的なデータを示した点に意義があります。
原著論文の著者・所属:Qing Li(Shanxi Agricultural University, Taiyuan 030031, Shanxi, China)、Yuhao Bai(Shanxi Agricultural University, Taiyuan 030031, Shanxi, China)、Xiaoyu Zhang(Shanxi Agricultural University, Taiyuan 030031, Shanxi, China)、Yong Zhang(Shanxi Agricultural University, Taiyuan 030031, Shanxi, China)、Haishun Li(Shanxi Fuzhiyuan Edible Fungi Co., Ltd., Lueliang 033000, Shanxi, China)、Fengjun Ma(Shanxi Rongxingda Agricultural Science and Technology Co., Ltd., Datong 037000, Shanxi, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Qing Li, Yuhao Bai, Xiaoyu Zhang, et al. COMBINED SHEEP MANURE AND VINEGAR RESIDUE IMPROVES SOIL PROPERTIES, YIELD AND NUTRITIONAL QUALITY OF MORCHELLA SEXTELATA. The Journal of Animal and Plant Sciences 2026-07-31. DOI: 10.36899/japs.2026.6.0148. 原著ライセンス:CC BY.