著者の所属・活動拠点の国は、フィリピン、インドです。

掲載誌:Food Research

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

伝統菓子に地元のコーヒーを組み合わせる

フィリピンには「カイカイ(Caycay)」と呼ばれる手頃な価格の人気クッキーがあります。丸いビスケット状の甘くサクサクした菓子で、ココナッツクリームを煮詰めたシロップ(ラティック)をまとわせ、炒って砕いたピーナッツをまぶして仕上げます。著者らによると、カイカイは味や見た目、香り、食感を改良する食品開発の対象にほとんどなっておらず、コーヒーを加えたカイカイの先行研究も見つからなかったといいます。

そこで研究チームは、セブ州トゥブラン町で育てられたコーヒー(Coffea canephora、いわゆるロブスタ種)の粉末を、カイカイの標準的なレシピに加えた試作品を作りました。目的は、どの配合が最も好まれるかを官能評価で調べ、あわせて微生物検査で安全性を確かめることです。論文は、地元ではあまり需要の高くない農産物を活かし、地域のコーヒーを広める手段にもなりうると位置づけています。

試食パネルによる評価と検査の方法

試作品は、コーヒー粉末を加えないもの(T0)と、35グラム(T1)、28グラム(T2)、21グラム(T3)、14グラム(T4)など添加量を変えたもので、それぞれ標準レシピをもとに作られました。

試食したのは2つのグループです。一つは食品関連科目を教える教員や調理の資格を持つ人など、食品の加工や製造について訓練を受けた「専門家」25人。もう一つは、無作為に選ばれたホスピタリティ・マネジメント専攻の学生40人で、訓練を受けていない「非専門家」とされました。

官能評価とは、人が実際に見て、嗅いで、食べて品質を判定する方法です。今回は色、香り、サクサク感、味を5段階で、総合的な受け入れやすさを9段階で採点し、点数を重み付き平均にまとめて比較しました。さらに、好評だった配合について認定検査機関で水分量や細菌、カビ・酵母の量を調べています。

28〜35グラムの配合が高評価

総合的な受け入れやすさで最も高い点を得たのは、両グループともコーヒー28グラムのT2でした。専門家の平均は9点満点中8.25、非専門家は8.76で、いずれも最上位の「極めて受け入れられる」に当たります。2位は35グラムのT1(専門家8.17、非専門家8.36)でした。著者らはこの結果から、コーヒーを28〜35グラム加えるとカイカイがより受け入れられやすくなると述べています。

ただし、項目ごとに見ると評価は一様ではありませんでした。香りについて、専門家はT1とT2をともに5段階の最上位区分である「優れている」と評価し、著者らはコーヒーが香りを高める優れた材料だとみています。一方、非専門家はT2を最も高く評価したものの、最も多い35グラムのT1は最も低く評価しました。著者らは、コーヒーが多すぎると、特にコーヒー好きでない人には好まれない可能性があると考察しています。色についても、専門家はT1を最も高く評価した一方、非専門家ではT1が最も低く、評価が逆転しました。

味は、どの配合も「とても良い」から最上位の「極めて風味豊か」の範囲に収まりました。そのため著者らは、コーヒーはカイカイの味を大きく左右しなかったと解釈しています。サクサク感はどの配合も中程度以上でしたが、全配合が同じ基本レシピであることから、コーヒーの影響とは言えず、食べる人の主観による部分が大きいとしています。

安全性の確認と研究の意味

微生物検査では、最も好まれた配合の水分量は8.20%で、著者らは米国食品医薬品局(FDA)の基準内にあると判断しました。一般生菌数(空気のある環境で育つ細菌の目安)、大腸菌群数(衛生状態の指標)、カビ・酵母数のいずれも基準値を下回り、すべて合格とされています。

論文は、コーヒーを加えたカイカイが受け入れられるには、ほどよい黄みがかった茶色、適量のコーヒーによる良い香り、鮮度を示すサクサク感がそろい、検査で安全が確認されていることが重要だと結論づけています。昔ながらの菓子に地域の農産物を組み合わせ、多くの人に好まれる配合と安全性を示した点に、この研究の意味があると言えるでしょう。

原著論文の著者・所属:E. Lucmayon(Cebu Technological University , Tuburan , Cebu , Philippines)、J.C. Paez、J.J. Bardoquillo、J. Minoza(Cebu Technological University , Consolacion , Cebu , Philippines /; Naveen Jindal Young Global Research Fellow , O.P. Jindal Global University , Sonipat , India)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):E. Lucmayon, J.C. Paez, J.J. Bardoquillo, et al. Sensory characterization and microbiological evaluation of coffee (Coffea canephora) fortified Caycay cookies: techno guide. Food Research 2026-07-31. DOI: 10.26656/fr.2017.10(4).058. 原著ライセンス:CC BY.