著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Indonesian Food Science and Technology Journal
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
麺は多くのアジアの国で主食となっていますが、原料の小麦粉はインドネシアでは輸入に頼っています。そこで、小麦粉の一部を地元産のアロールート(クズウコンの一種で、根茎から澱粉がとれる作物)の澱粉に置き換えた生麺が、これまでの研究で検討されてきました。小麦粉と加工アロールート澱粉を70対30で混ぜれば、小麦粉の使用量を3割減らせます。ただし、論文が紹介する先行研究では、置き換えるとタンパク質が減り、食べたときの評価も低くなりやすいという課題が示されていました。
そこで著者らが注目したのが黒ニンニクです。黒ニンニクは生のニンニクを温度と湿度を管理しながら加熱・熟成させたもので、生のニンニクより抗酸化成分が多く、独特の風味をもつとされます。この研究では、黒ニンニクの抽出物を混合生麺に加えると、栄養成分、抗酸化に関わる性質、ゆでたときの性質、食べたときの評価がどう変わるかを調べました。
どのように調べたか
アロールートの根茎から澱粉を取り出し、高圧加熱と冷却を3回繰り返して加工しました。この処理は、消化されにくい「レジスタントスターチ」を増やすことを狙ったものです。黒ニンニクは乾燥・粉砕したあと、70%エタノールに浸して成分を抽出し、濃縮して使いました。
小麦粉と加工アロールート澱粉を70対30で混ぜた粉に、塩、重曹、卵、水を加えて生地を作りました。黒ニンニク抽出物は0%、2%、4%、6%、8%、10%の6段階で加え、それぞれ2回ずつ試作しています。できた麺について、水分、灰分(ミネラル分の目安)、タンパク質、総フェノール量、総フラボノイド量、抗酸化活性、色、弾力、ゆでたときの吸水量と溶け出す量(調理損失)を測定しました。あわせて、パネリストが色・香り・味の特徴の強さを採点し、色・香り・食感・味・全体の好ましさも評価しました。
主な結果
もっともはっきりした変化はタンパク質でした。抽出物なしでは6.12%でしたが、加える量を増やすほど高くなり、10%では9.95%に達しました。8〜10%ではインドネシアの生麺の国家規格が定める最低9%を満たし、10%の値は、著者らが比較に用いた小麦粉100%の生麺の値(9.23%)を上回りました。論文は、この増加はおもに黒ニンニク抽出物そのものに含まれるタンパク質やアミノ酸によるものと説明しています。
抗酸化に関わる値も、抽出物の量とともに上がりました。総フェノール量は0.05から0.15 mg GAE/gへ、総フラボノイド量は0.015から0.04 mg QE/gへ増え、抗酸化活性は10.54%から30.53%に高まりました。
見た目は大きく変わりました。抽出物を増やすほど麺は暗くなり、白っぽい色から濃い茶色へと変化しました。論文は、黒ニンニクを作る過程の加熱反応(メイラード反応)で生じる茶色の色素によると説明しています。一方、麺の弾力は抽出物を増やすにつれて低下しました。吸水量と調理損失、水分には、抽出物の量による有意な差は見られませんでした。
食べたときの評価では、加える量が増えるほど、色・香り・味が黒ニンニクらしいと判定されました。食感の好ましさは抽出物の量で変わらず、どの麺も好意的に受け止められました。全体の好ましさは8%がもっとも高く、4%、6%、10%との間に有意な差はありませんでした。
研究チームは、規格を満たすタンパク質量、高い抗酸化活性、好まれた官能評価を総合して、10%添加を最良の配合としました。この麺は100gあたり脂質2.4g、炭水化物50.75g、エネルギー264.40 kcal、食物繊維2.66g、レジスタントスターチ1.81gでした。脂質は、インドネシアの表示基準で「低脂肪」とされる3%未満に収まっています。ただし、食物繊維は「食物繊維源」と表示できる3%にわずかに届かず、水分は36%台で、生麺の国家規格の上限35%を超えていたことも報告されています。
この研究が示すこと
小麦粉の一部を地元の作物の澱粉に置き換えると、麺のタンパク質が減ってしまいます。この研究は、黒ニンニク抽出物を加えることでその不足を補い、抗酸化に関わる値も高められることを示しました。色や風味は大きく変わったものの、食べた人からは好意的に評価されています。その一方で、弾力の低下に加え、水分が規格の上限を上回ったことや、食物繊維が表示の目安にわずかに届かなかったことも報告されました。著者らは、この麺を健康志向の食品開発につながる候補として位置づけています。
原著論文の著者・所属:Gusti Kadek Diah Puspawati(Department of Food Technology, Faculty of Agricultural Technology, Udayana University)、Agnes Monika Gandhes Sekarjati Sekarjati(Alumni of The Department of Food Technology, Faculty of Agricultural Technology, Udayana University, Jl. Raya Kampus UNUD, Bukit Jimbaran, South Kuta District, Badung Regency, Bali, Indonesia 80331)、Anak Agung Istri Sri Wiadnyani(Department of Food Technology, Faculty of Agricultural Technology, Udayana University)、Luh Dian Rna Fajarini(Department of Food Technology, Faculty of Agricultural Technology, Udayana University)、Rafi Renaldy Tamalea(Department of Food Technology, Faculty of Agricultural Technology, Udayana University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Gusti Kadek Diah Puspawati, Agnes Monika Gandhes Sekarjati Sekarjati, Anak Agung Istri Sri Wiadnyani, et al. Improving Protein, Antioxidant, and Sensory Acceptance of Modified Arrowroot Composite Noodles with Black Garlic Extract for Healthy Food Innovation. Indonesian Food Science and Technology Journal 2026-07-31. DOI: 10.22437/ifstj.v9i2.47879. 原著ライセンス:CC BY.