著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

捨てられがちなキノコの「柄」を生かすために

アミガサタケ(モリーユ)の一種であるMorchella sextelataは、経済的に重要な食用キノコです。乾燥品は見た目で等級が決まり、特に柄の長さが重視されます。そのため高級品では柄の一部または全部が切り落とされ、大量の柄が副産物として生じます。こうした柄は捨てられるか安く売られることが多く、資源の無駄になっていると著者らは指摘しています。

研究チームはこの柄を食品素材として活用するため、粉末化の方法に注目しました。比較したのは、細かく砕く「超微粉砕」と、その前処理としての「蒸気爆砕」です。蒸気爆砕とは、高温高圧の水蒸気に素材をさらした後、一気に圧力を抜く処理です。素材の内部の水分が急激に膨張し、組織がほぐれます。柄は緻密な構造をもつため、機械的に砕くだけでは細かくなりにくい可能性があります。そこで著者らは、蒸気爆砕で組織を緩めておけば、その後の超微粉砕がより効果的になるのではないかと考えました。

4種類の粉末を作って比べる

研究チームはまず、同じキノコの柄とかさ(傘)の成分を比べました。乾燥重量あたりで見ると、かさはたんぱく質(31.88%)と脂質(8.59%)が柄より多く含まれていました。一方、柄は粗繊維が6.85%で、かさより多いという結果でした。著者らは、柄が繊維に富む素材として利用できる可能性を示すものと位置づけています。

続いて、乾燥させた柄から4種類の粉末を作りました。通常の粉砕だけの粉末、超微粉砕した粉末、蒸気爆砕の後に通常粉砕した粉末、蒸気爆砕の後に超微粉砕した粉末の4つです。蒸気爆砕は0.8メガパスカルで90秒間行いました。この条件はこのキノコ向けに最適化したものではなく、実用的な処理条件として採用したと論文は説明しています。

4種類の粉末について、粒の大きさ、電子顕微鏡で見た表面の形、色、水への溶けやすさを調べました。さらに分子構造、抗酸化能、香りのもとになる揮発性成分も比較しました。

組み合わせ処理で粒が最も細かくなった

粒の大きさの中央値は、通常粉砕では88.88マイクロメートルでした。超微粉砕だけでは44.39マイクロメートル、蒸気爆砕だけでは33.87マイクロメートルに小さくなりました。蒸気爆砕の後に超微粉砕すると10.46マイクロメートルまで小さくなり、4種類の中で最小でした。蒸気爆砕だけの粉末は粒の大きさのばらつきが大きくなりましたが、超微粉砕を組み合わせるとばらつきが抑えられました。粉末の比表面積(体積あたりの表面積)は、通常粉砕の約4.85倍に増えたと報告されています。電子顕微鏡では、蒸気爆砕だけの粉末は網目状で穴の多い構造でした。超微粉砕を加えると、その構造がさらに細かく砕かれていました。

水に溶け出す成分の割合を示す水溶性指数も変わりました。通常粉砕の31.20%に対し、組み合わせ処理では36.55%で、4種類の中で最も高い値でした。一方、粉末が水や油を抱え込む能力は、処理によってむしろ低下しました。著者らは、すべての水和特性が改善したわけではないと述べています。色については、蒸気爆砕だけでは粉末が暗く変色しました。その後に超微粉砕すると、変色の程度が一部やわらぎました。分子構造の分析では、主要な化学結合(官能基)には大きな変化はみられませんでした。ただし結晶性には変化が生じていました。

抗酸化能は、DPPHとABTSという2種類のラジカルを消去する力で評価しました。どちらも組み合わせ処理の粉末が最も高い値を示しました。別の指標である総抗酸化能は、蒸気爆砕だけの粉末と組み合わせ処理の粉末がともに高く、両者に有意な差はありませんでした。これらは粉末から水で抽出した液を用いた試験管内での測定結果です。

香りの成分は熱を伴う処理で大きく変化

揮発性成分の構成は処理ごとに異なりました。蒸気爆砕を含む処理では、フラン類やピラジン類と呼ばれる成分の一部の相対量が多くなりました。論文によれば、この分析は処理に伴う成分構成の変化を捉えることが目的で、においの良し悪しを判断するものではありません。官能評価(人による試食・試嗅)は行われていません。

研究チームは、蒸気爆砕の前処理がその後の超微粉砕を助けたと結論づけています。この組み合わせにより、粒の細かさ、水への溶けやすさ、抗酸化能の一部が向上しました。同時に香気成分の構成は大きく変わりました。これまで低く評価されてきたキノコの柄を、加工によって付加価値のある食品素材へ変えられる可能性を示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Jiaqi Jin(College of Food Science & Nutritional Engineering, China Agricultural University, Beijing 100083, China; Shandong Key Laboratory of Applied Technology for Protein and Peptide Drugs, School of Pharmaceutical Science and Food Engineering, Liaocheng University, Liaocheng 252000, China)、Fei Lao(College of Food Science & Nutritional Engineering, China Agricultural University, Beijing 100083, China)、Feng Kong(Shandong Key Laboratory of Applied Technology for Protein and Peptide Drugs, School of Pharmaceutical Science and Food Engineering, Liaocheng University, Liaocheng 252000, China)、Lele Cao(Shandong Key Laboratory of Applied Technology for Protein and Peptide Drugs, School of Pharmaceutical Science and Food Engineering, Liaocheng University, Liaocheng 252000, China)、Linhui Feng(Shandong Key Laboratory of Applied Technology for Protein and Peptide Drugs, School of Pharmaceutical Science and Food Engineering, Liaocheng University, Liaocheng 252000, China)、Jia Chen(Shandong Key Laboratory of Applied Technology for Protein and Peptide Drugs, School of Pharmaceutical Science and Food Engineering, Liaocheng University, Liaocheng 252000, China)、Jihong Wu(College of Food Science & Nutritional Engineering, China Agricultural University, Beijing 100083, China)、Xingfeng Guo(College of Food Science & Nutritional Engineering, China Agricultural University, Beijing 100083, China; Shandong Key Laboratory of Applied Technology for Protein and Peptide Drugs, School of Pharmaceutical Science and Food Engineering, Liaocheng University, Liaocheng 252000, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jiaqi Jin, Fei Lao, Feng Kong, et al. Effects of Steam Explosion Combined with Ultrafine Grinding on the Physicochemical Properties, Antioxidant Capacity, and Volatile Profiles of Morchella sextelata Stipe Powders. Foods 2026-10-21. DOI: 10.3390/foods15203748. 原著ライセンス:CC BY.