著者の所属・活動拠点の国は、ポーランドです。
掲載誌:Aesthetic Cosmetology and Medicine
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
セルライトは、太ももやお尻などの皮膚表面に「オレンジの皮」のような凹凸が現れる状態で、医学的には女性型脂肪異栄養症とも呼ばれます。著者らによれば、思春期以降の女性の最大80〜90%に見られると推定され、年齢や体重を問わず広く起こる現象です。
その成り立ちは単純ではなく、遺伝的な素因、皮膚の下にある結合組織の構造変化、毛細血管やリンパ管による微小循環の不調、脂肪細胞の肥大や増加、そして弱いながら長く続く炎症(慢性低度炎症)など、複数の要因が重なっていると考えられています。
この論文は、こうした背景を踏まえ、食事に関わる要因がセルライトの発生とその軽減にどのような役割を果たすのかを、既存の研究をもとに整理した総説(レビュー)です。著者らは、エネルギー収支、三大栄養素とビタミン・ミネラル、水分と電解質のバランス、腸内細菌叢、そして一部の生理活性物質を検討対象としています。
セルライトができる仕組みとホルモンの関与
著者らはまず、セルライトの形成過程を説明しています。セルライトのある人では、脂肪の小さな塊を仕切る線維状の隔壁が厚く硬くなり、皮膚を下へ引き込むことで特徴的なくぼみが生じます。女性ではこの隔壁が垂直方向に、男性では水平方向に走っており、これが女性にくぼみが現れやすい一因とされています。さらに、コラーゲンの分解と産生のバランスが崩れて結合組織が弱まることや、血流・リンパの流れが滞って組織に水分がたまり、むくみや線維化が進むことも関わるとしています。
ホルモンの面では、女性ホルモンのエストロゲンが脂肪の蓄積場所や結合組織の状態に影響し、最も大きな役割を持つとされています。思春期、妊娠、閉経、ホルモン療法や経口避妊薬の使用など、ホルモンが変動する時期にセルライトが目立ちやすくなると報告されています。
インスリンについては、過剰なエネルギー摂取が続くとインスリン抵抗性が生じ、脂肪細胞の働きの乱れや慢性炎症につながる流れが紹介されています。ただし著者らは、インスリン抵抗性はセルライトの直接の原因とはみなされておらず、発生を後押しする要因になりうるという位置づけだとしています。ストレスホルモンであるカテコールアミンの関与についても、主に生理学的な仮説の段階であり、セルライトとの直接の因果関係は臨床研究で明確に確認されていないと述べています。
食事の要素ごとに見た報告
体重について著者らは、BMIが高い人ほど皮下脂肪が多く、既存のセルライトがより目立ちやすくなるとし、体重の大きな増減を避けて安定させることを勧めています。炭水化物では、精製された穀物や糖分の多い食品など血糖値を急上昇させやすい食品が、インスリンの過剰分泌を通じて炎症や血管機能の悪化につながりうるとして、血糖値が上がりにくい食品を選ぶことの重要性を挙げています。
脂質については、オメガ3脂肪酸の抗炎症作用に触れつつも、オメガ3のサプリメントがセルライトを減らすという直接の証拠は限られていると整理しています。水分と塩分の面では、ナトリウムのとり過ぎが体内に水分をため込み、むくみを招くこと、適切な水分補給やカリウムを含む野菜・豆類などの摂取が水分バランスの維持を助けうることが紹介されています。
食物繊維は腸内細菌の構成に影響し、腸内で発酵されてできる短鎖脂肪酸には炎症を抑え、糖や脂質の代謝によい影響を与える働きがあるとされます。著者らは、こうしたインスリン感受性の改善や慢性炎症の抑制が、間接的にセルライト悪化のリスクを下げうると述べています。
ビタミンA・C・Eや亜鉛、銅、セレンなどは、皮膚の構造維持や酸化ストレスからの保護に関わります。ただし著者らは、これらのビタミンの摂取を増やすことでセルライトが軽くなることを確かめた質の高い臨床研究はまだないと明記しています。緑茶の主要成分であるEGCGなどのポリフェノールも、前臨床研究では炎症やコラーゲン分解への作用が示されているものの、臨床での直接的な効果を示す研究は限られており、補助的な食品成分として捉えるべきだとしています。
食事療法としての位置づけと結論
補助的な手段の例として、著者らはコラーゲンペプチドに関する臨床試験を取り上げています。中等度のセルライトがある24〜50歳の女性105人を、生理活性コラーゲンペプチドを1日2.5g、6か月間摂取する群とプラセボ群に無作為に分けた研究で、標準体重の女性ではプラセボと比べてセルライトの程度や太ももの皮膚の凹凸が有意に減り、真皮の密度も高まったと報告されています。ただしその研究の著者自身も、これは単独の対処法ではなく補助的な要素と位置づけているとされます。
また、低カロリー食(初期はケトン食)、たんぱく質補給、運動、塗布用ジェルを組み合わせた別の研究では、参加した20人全員でセルライトの軽減や体重・周囲径の減少が見られたと紹介されています。一方で著者らは、この研究には対照群がなく複数の手段を同時に用いているため、食事だけの効果を切り分けることはできないと注意を促しています。
これらを踏まえ、著者らは食事療法として最も合理的な選択肢は地中海食だと結論づけています。全粒穀物、野菜、果物、ナッツ、オリーブオイルを日常的にとり、魚や鶏肉、卵、乳製品は適度に、赤肉や加工肉、甘いものは控えるという食事パターンで、炎症を抑える働きや代謝面での利点がその根拠とされています。ただし、地中海食がセルライトを直接減らすことを示す明確な臨床的証拠はまだないとも述べています。
総じてこの総説は、食事はセルライトを直接消す方法ではないものの、体重、血糖とインスリンの調節、炎症、微小循環といった、セルライトの発生と進行に関わる要因に間接的に影響しうることを示しています。著者らは、食事を土台としつつ、運動や物理的な施術なども組み合わせた多面的な取り組みが最も効果的だとまとめています。
原著論文の著者・所属:Jakub Domagalski(Wydział Nauk Stosowanych , Uniwersytet DSW Ideis , Strzegomska 55 , 53-611 Wrocław , Polska)、Joanna Mulik-Buczma(Wydział Nauk Stosowanych , Uniwersytet DSW Ideis , Strzegomska 55 , 53-611 Wrocław , Polska)、Julia Ibron(Wydział Nauk Stosowanych , Uniwersytet DSW Ideis , Strzegomska 55 , 53-611 Wrocław , Polska)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jakub Domagalski, Joanna Mulik-Buczma, Julia Ibron. The role of dietary factors in the pathogenesis and support of cellulite reduction. Aesthetic Cosmetology and Medicine 2026-08-01. DOI: 10.52336/acm.2026.026. 原著ライセンス:CC BY.