著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Nusantara Sehat Jurnal Kesehatan Indonesia
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
超加工食品とは、家庭の台所ではあまり使われない添加物などを加えて工業的に作られる食品です。手軽で日持ちがすることから世界的に消費が増えており、多く食べることと肥満、高血圧、2型糖尿病、心血管疾患との関連が報告されてきました。しかし、なぜそうした関連が生じるのかという生物学的な仕組みは、まだ十分に分かっていません。
インドネシアの研究チームは、超加工食品に含まれる人工甘味料、乳化剤、保存料の3種類の添加物に注目しました。これらが「酸化ストレス」と「血管内皮機能障害」にどう関わりうるのかについて、既存の研究を整理することを目的としています。酸化ストレスとは、体内で生じる反応性の高い酸素(活性酸素)が、それを処理する抗酸化の防御力を上回り、細胞が傷つきやすくなる状態です。血管内皮は血管の内側を覆う細胞の層で、一酸化窒素という物質を出して血管を広げたり炎症を抑えたりしています。この働きが損なわれた状態が血管内皮機能障害で、動脈硬化の初期段階に関わるとされています。
どのように調べたか
著者らは、文献の選び方を透明にするための国際的な手順(PRISMA)に沿って、PubMedやScopusなど5つのデータベースや出版社のサイトを検索しました。対象は2019年から2026年に英語で発表され、添加物と酸化ストレス、炎症、血管内皮機能、心血管の健康との関係を扱った研究です。
検索で見つかった146件から重複や無関係なものを除き、最終的に13件の研究を分析しました。内訳は、培養細胞を使った研究3件、動物研究3件、その他の実験研究2件、人々を長期間追跡した前向きコホート研究3件、総説2件です。数値をまとめて統計的に統合するのではなく、内容をテーマごとに整理して読み解く方法(叙述的テーマ統合)がとられました。
主な結果
論文によると、多くの研究で添加物への曝露と酸化ストレスの指標との関連が報告されていました。実験研究では、活性酸素の増加、細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアの機能低下、脂質の酸化、抗酸化の防御力の低下などが示されていました。
添加物の種類ごとに見ると、人工甘味料では、アスパルテームが培養細胞で活性酸素を増やしミトコンドリアの働きを乱したという報告がありました。論文が人工甘味料として扱うエリスリトールについては、脳の細かい血管の内皮細胞で酸化ストレスを高め、一酸化窒素の利用度を下げて内皮の働きを損なったと報告されており、著者らはこれを添加物と内皮機能障害を最も直接的に結びつける証拠と位置づけています。
乳化剤では、カルボキシメチルセルロースやポリソルベート80が腸内細菌の構成を変え、腸のバリア機能を弱めて炎症を促すことが報告されていました。ポリソルベート80については活性酸素を直接増やすという報告もありました。保存料では、安息香酸ナトリウムが脂質の酸化を進め、抗酸化物質や抗酸化酵素を減らし、炎症を強めたとする細胞・動物研究がありました。
人を対象とした前向きコホート研究では、人工甘味料の摂取が多いこと、カルボキシメチルセルロースへの曝露、保存料への曝露が、それぞれ心血管疾患や高血圧のリスクの高さと関連していました。ただし著者らは、こうした観察研究だけでは因果関係は確定できないと明記しています。
これらを踏まえ、著者らは、添加物が細胞に直接働きかける経路と、腸内環境の乱れや慢性的な炎症を通じて間接的に働く経路の両方を経て酸化ストレスを生み、最終的に血管内皮の働きを損なうという枠組みを示しました。腸の状態が血管の健康につながるというこの考え方を、論文は「腸–血管軸」と呼んでいます。
この研究が示すこと
このレビューは、化学的な性質も用途も異なる人工甘味料、乳化剤、保存料が、酸化ストレスという共通の仕組みを通じて血管の働きに影響しうることを、細胞・動物・人の研究を横断して整理したものです。著者らはまた、超加工食品には複数の添加物が同時に含まれることから、個々の添加物だけでなく、累積した曝露を考える重要性も指摘しています。
一方で、仕組みに関する知見の多くは細胞や動物の研究に基づいており、添加物が人の血管内皮機能障害を引き起こすことを直接示した証拠はまだ限られている、と著者らは述べています。この論文は、添加物と心血管の健康を結ぶ可能性のある道筋を示しつつ、人での因果関係は未解明であることを明らかにした整理といえます。
原著論文の著者・所属:Dwi Widyawati(Faculty of Medicine and Health Sciences, Sultan Ageng Tirtayasa University, Banten, Indonesia)、Ghea Farmaning Thias Putri(Universitas Sultan Agung Tirtayasa)、Zaenudin(Nursing Study Program, Al-Ikhlas Nursing Academy, Jawa Barat, Indonesia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Dwi Widyawati, Ghea Farmaning Thias Putri, Zaenudin Food Additives in Ultra-Processed Foods: Mechanisms of Oxidative Stress and Endothelial Dysfunction. Nusantara Sehat Jurnal Kesehatan Indonesia 2026-07-31. DOI: 10.65307/ns.v1i6.222. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。