著者の所属・活動拠点の国は、トルコです。
掲載誌:PLoS ONE
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
工場などでは、日中だけ働く固定日勤のほかに、日勤・夕勤・夜勤を順番に担う交代勤務が広く取り入れられています。交代勤務では、働く時間と体内時計のリズムがずれやすくなります。こうしたずれは、食事の時間や内容の乱れ、睡眠の質の低下と関連することが知られています。
食事には、体内の慢性的な炎症を強めやすいものと、抑えやすいものがあるとされています。この傾向を数値で表す指標が「食事性炎症指数(DII)」です。食事に含まれる栄養素や食品をもとに計算し、値がプラスなら炎症を促しやすい食事、マイナスなら炎症を抑えやすい食事と解釈されます。
研究チームは、固定日勤者と交代勤務者でDIIに違いがあるかを主な問いとしました。あわせて、食事の摂取量、睡眠の質、体格や体組成、血圧、血液検査の値を比べ、DIIと睡眠の質の関連も調べました。ある一時点の状態を調べる横断研究であるため、著者らは因果関係ではなく関連を見る研究だと位置づけています。
どのように調べたか
対象は、トルコ・アンカラの防衛産業の工場で働く男性52人です。内訳は、毎日8時から16時まで働く固定日勤者26人と、日勤・夕勤・夜勤の3種類の8時間勤務を1週間ごとに交代する交代勤務者26人でした。いずれも現在の勤務形態で1年以上働いており、医師に診断された慢性疾患や食物アレルギーのある人は除かれています。
食事は、連続しない3日分について、前日24時間に食べたものを栄養士が面接で聞き取りました。3日には勤務日と休日の両方が含まれます。そこからエネルギーや栄養素の摂取量を計算し、33項目の食事要素をもとにDIIを求めました。
睡眠の質は「ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)」で評価しました。過去1か月の睡眠について、寝つき、睡眠時間、日中の眠気や支障など7つの側面を点数化するもので、合計点が高いほど睡眠の質が悪いことを示します。このほか、体重や腹囲などの体格、体脂肪率などの体組成、血圧、空腹時の血糖・コレステロール・炎症の目安となるCRPなどの血液検査値も測定しました。
主な結果
食事の量と内容には違いがみられました。交代勤務者の1日のエネルギー摂取量は平均約2428キロカロリーで、固定日勤者の約2163キロカロリーより有意に多くなっていました。脂質全体、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、コレステロール、果糖の摂取量も交代勤務者のほうが多く、エネルギーに占める脂質の割合も高めでした。一方、炭水化物とたんぱく質の摂取量には差がありませんでした。ビタミンA、葉酸、鉄、カルシウム、リンの摂取量も交代勤務者で多くなっていました。ただし著者らは、これは食べる量全体が多いことを反映している可能性があり、栄養面で好ましいとは必ずしも言えないと述べています。
一方、主な関心だったDIIには、両グループで有意な差がありませんでした(固定日勤者の平均0.2、交代勤務者の平均マイナス0.2)。著者らは、両グループが職場で同じように提供される食事をとっていたことが、差が出にくかった一因かもしれないと考察しています。
睡眠の質の点数も、交代勤務者でやや悪い傾向はあったものの、統計的に有意な差ではありませんでした。睡眠の質が悪いと判定された人の割合は、固定日勤者で30.8%、交代勤務者で38.5%でした。体格や体組成もほとんどの項目で差がなく、体内水分の割合だけが固定日勤者でやや高い結果でした。
DIIと睡眠の関係については、対象者全体で、DIIが高い人ほど睡眠の質の合計点が悪い方向にある、弱い正の相関がみられました。睡眠時間と日中の支障の項目でも同様の相関があり、交代勤務者に限るとこの2項目で相関が確認されました。しかし、年齢、BMI、喫煙、身体活動、勤務形態の影響を統計的に考慮すると、DIIと睡眠の質全体との関連は有意ではなくなりました。また、DIIと血液検査値や血圧との間にも有意な相関はみられませんでした。
この研究が示すこと
この研究では、交代勤務者はエネルギーや脂質を多くとっていた一方で、食事の炎症のしやすさを示すDIIには勤務形態による違いがみられませんでした。また、炎症を促しやすい食事と睡眠の質の低下には弱い関連がうかがえたものの、ほかの要因を考慮するとはっきりした関連とは言えませんでした。
著者らは、食習慣、炎症を促しやすい食事、睡眠の質の低さが、代謝面のリスクに関わる要因として同時に存在している可能性を指摘しています。対象者は限られた職場の男性52人で、一時点の調査であるため、結果は関連を示すものとして受け止める必要があります。
原著論文の著者・所属:Şeyma Sünbül(Ankara University; Food Technology Program, Ankara University)、Perim Fatma Türker(Acibadem Mehmet Ali Aydinlar University, Istanbul, Türkiye; Graduate School of Health Sciences, Acibadem Mehmet Ali Aydinlar University, Istanbul, Türkiye)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Şeyma Sünbül, Perim Fatma Türker. Association among Dietary Inflammatory Index, sleep quality and nutritional status in fixed daytime and rotating shift workers. PLoS ONE 2026-10-22. DOI: 10.1371/journal.pone.0360075. 原著ライセンス:CC BY.