著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Journal of World s Poultry Research

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的

肉や卵の需要が世界的に高まるなか、家禽の生産性をどう高めるかは重要な課題です。その方法の一つが、飼料に添加物を加えて消化管での栄養の吸収に働きかけることです。腸内の微生物のバランスに働きかけるとされる生きた微生物、いわゆるプロバイオティクスの利用もこの考え方に含まれます。

インドネシアの研究チームが注目したのは、西ジャワ州タシクマラヤ原産の在来アヒル「チハテウプ種」です。この品種は卵用のインディアンランナー系の子孫とされますが、論文によれば、卵用としての生産性はまだ十分に引き出されていません。著者らは、プロバイオティクスとして使われる酵母「サッカロマイセス・ブラウディ」を飼料に加えると、産卵成績、卵の品質、排せつ物中の細菌の数、排せつ物中のアンモニア量がどう変わるかを調べました。

どのように調べたか

実験には、71週齢のチハテウプ種の雌アヒル60羽を使いました。アヒルは無作為に4つのグループに分けられ、各グループは3つの反復区で構成されました。基本の飼料だけを与える対照区と、飼料1キログラムあたり酵母を0.5グラム、1.0グラム、1.5グラム加えた3つの区を比べています。使われた酵母製剤は、1グラムあたり10の8乗個の生菌を含むものでした。給与期間は8週間です。飼料は1羽1日120グラムと決められており、どの区でも毎回すべて食べられていました。

研究チームは、産卵の割合や卵の数、卵の総重量、飼料要求率を記録しました。飼料要求率とは、卵を一定量生産するのに必要な飼料の量のことで、値が小さいほど効率がよいことを示します。あわせて、卵白や卵黄の形状、卵の鮮度の指標であるハウユニット、殻の厚さ、卵黄の色を調べ、卵黄については脂肪、コレステロール、脂肪酸の組成も分析しました。さらに、排せつ物に含まれる乳酸菌、大腸菌、サルモネラ菌の数と、アンモニアの量を測定しました。

主な結果

最もはっきりした差が出たのは、酵母を最も多く加えた区(飼料1キログラムあたり1.5グラム)でした。この区では、産卵の割合が対照区より16.5%、卵の総重量が19.5%高く、重量ベースの飼料要求率は17.45%低くなりました。一方、卵1個あたりの平均重量には差がありませんでした。対照区、0.5グラム区、1.0グラム区の間には、全体として有意な差は見られませんでした。実験期間中、病気や死亡は確認されなかったと報告されています。

卵の外観や内部の品質には、酵母を加えたことによる有意な変化はありませんでした。卵黄や卵白の形状を示す指数、ハウユニット、殻の厚さ、卵黄の色、卵の各部分の重量の割合は、いずれの区もほぼ同じでした。

卵黄では、脂肪の総量に有意な差はなかったものの、コレステロールは0.5グラム区と1.5グラム区で対照区より低くなりました。卵黄100グラムあたりの量は、対照区の約1,459ミリグラムに対し、それぞれ約1,324ミリグラムと約1,241ミリグラムでした。脂肪酸では、1.0グラム区と1.5グラム区で、一価不飽和脂肪酸のオレイン酸の割合が対照区より高くなりました。また同じ2つの区では、多価不飽和脂肪酸のリノール酸とアラキドン酸の割合も対照区より高くなりました。著者らは、リノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸というオメガ6系脂肪酸が、特に1.0グラム区と1.5グラム区で増えたとまとめています。

排せつ物中の乳酸菌、大腸菌、サルモネラ菌の数には、区による有意な差はありませんでした。乳酸菌と病原性細菌の比率は酵母を加えた区で高い傾向がありましたが、統計的に意味のある差ではありませんでした。これに対し、排せつ物中のアンモニア量は酵母の量が多いほど減りました。対照区と比べた減少率は、0.5グラム区で3.5%、1.0グラム区で7.6%、1.5グラム区で16.8%でした。

研究が示すこと

著者らは、この実験の条件では飼料1キログラムあたり1.5グラムが最適な添加量だったと結論づけています。論文の結論は、サッカロマイセス・ブラウディがチハテウプ種のプロバイオティクスとして可能性を持つというものです。具体的には、産卵成績を高め、卵黄の成分を変化させ、排せつ物中のアンモニアを減らす可能性が示されたとしています。

ただし、著者らも認めているとおり、プロバイオティクスが腸内細菌の構成や脂質の代謝にどのように作用したのかという仕組みは、この研究では直接調べられていません。今回の成果は、在来の卵用アヒルに酵母を与えたときの変化を具体的な数値で示した、一つの実験結果として位置づけられます。

原著論文の著者・所属:Gilang Ayuningtyas(Livestock Management and Technology Study Program , College of Vocational Studies , IPB University , Pajajan Street , Bogor 16128 , Indonesia)、Tera Fit Rayani(Livestock Management and Technology Study Program , College of Vocational Studies , IPB University , Pajajan Street , Bogor 16128 , Indonesia)、Dadik Pantaya(Animal Production Study Program , Department of Animal Science , Politeknik Negeri Jember , Mastrip Street , Jember 68121 , Indonesia)、Gayuh Syaikhullah(Animal Production Study Program , Department of Animal Science , Politeknik Negeri Jember , Mastrip Street , Jember 68121 , Indonesia)、Hariadi Subagja(Animal Production Study Program , Department of Animal Science , Politeknik Negeri Jember , Mastrip Street , Jember 68121 , Indonesia)、Anis Usfah Prastujati(Applied Bachelor of Animal Product Processing Technology Study Program , Department of Agriculture , Politeknik Negeri Banyuwangi , Jember Street KM 13 , Banyuwangi 68461 , Indonesia)、Dwi Ahmad Priyadi(Applied Bachelor of Animal Product Processing Technology Study Program , Department of Agriculture , Politeknik Negeri Banyuwangi , Jember Street KM 13 , Banyuwangi 68461 , Indonesia)、Fitriani Eka Puji Lestari(Livestock Management and Technology Study Program, College of Vocational Studies, IPB University, Pajajan Street, Bogor 16128, Indonesia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Gilang Ayuningtyas, Tera Fit Rayani, Dadik Pantaya, et al. Effects of Saccharomyces boulardii on Productivity, Egg Quality, Excreta Microbiology, and Ammonia Emissions in Indonesian Local Ducks. Journal of World s Poultry Research 2026-09-25. DOI: 10.36380/jwpr.2026.23. 原著ライセンス:CC BY.