著者の所属・活動拠点の国は、サウジアラビアです。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的:「発酵食品」と「プロバイオティクス」の認識を探る

発酵は、微生物の働きによって食品の酸や香りの成分、ビタミンなどを生み出したり変化させたりする工程です。ヨーグルトやチーズ、パンなど、発酵を利用した食品は世界中で親しまれています。一方、プロバイオティクスとは「適切な量をとったときに、とった人の健康に役立つ生きた微生物」を指す言葉です。著者らは、発酵食品の中には食べる時点で生きた微生物が残っていないものもあるため、「発酵食品」と「プロバイオティクスを含む食品」は同じ意味ではないと説明しています。

この研究チームは、サウジアラビアに住む成人が発酵食品をどの程度知っていて、実際に食べているかを調べることを主な目的としました。あわせて、プロバイオティクスを知っているか、サプリメントとして使っているか、発酵食品とプロバイオティクスを区別できているかといった点も記述的に調べています。さらに、発酵食品を食べる理由・食べない理由、情報源、栄養表示の利用、そして「発酵食品を知っている」という回答に関係する年齢・性別・学歴などの特徴も分析しました。

調べ方:689人へのオンライン質問票

調査は2022年4月から9月にかけて、アラビア語の質問票をオンラインで配布する形で行われました。リンクはSNSやメッセージアプリ、所属機関のネットワークを通じて広がり、受け取った人がさらに転送することもできました。こうした集め方は、無作為に選ぶのではなく協力しやすい人から回答を集める「便宜的サンプリング」と呼ばれます。回答者はサウジアラビアの5つの地域に住む18歳以上の成人689人でした。

回答者の62.3%が女性で、64.2%が学士号を持っていました。中部地域からの参加者が46.2%を占めていました。著者らは、この集団は女性と高学歴の人に偏っており、サウジアラビアの成人全体を代表するものではないと明記しています。

質問票では、伝統的な乳製品(ラバンと呼ばれる発酵乳やヨーグルト、チーズ)、ギリシャヨーグルト、乾燥発酵乳のジャミード、自然発酵させた平たいパンのハミール、軽く発酵させた大麦飲料のソビアといった地元の食品から、キムチ、ザワークラウト、ケフィア、コンブチャ、味噌、テンペまで、13種類の発酵食品を取り上げました。それぞれについて「食べたことがある」「知っているが食べていない」「知らない」のどれに当たるかを尋ねています。「発酵食品を知っているか」は一つの自己申告の質問で尋ねたもので、客観的な知識テストではありません。

主な結果:発酵食品は約半数、プロバイオティクスは4人に1人未満

「発酵食品とは何かを知っている」と答えたのは52.4%でした。これに対し、「プロバイオティクスとは何かを知っている」と答えたのは23.2%にとどまりました。どちらの割合も学歴が高い層ほど高く、プロバイオティクスでは、ディプロマ以下の学歴の人で15.0%、学士で24.0%、大学院修了者で43.3%でした。プロバイオティクスのサプリメントを現在使っている人は1.9%、ときどき使う人は9.6%で、利用は少数でした。

13種類の食品のうち、ラバンやヨーグルト、ギリシャヨーグルト、市販のプロバイオティクス乳製品といった発酵乳製品が最もよく知られ、よく食べられていました。反対に、テンペ、味噌、ケフィアは最もなじみの薄い食品でした。

「すべての発酵食品にプロバイオティクスが含まれているわけではない」と正しく答えたのは9.7%で、86.2%は「分からない」を選びました。著者らは、この集団では明確な誤解よりも「分からない」という不確かさが目立ったと述べています。

発酵食品を食べる理由として最も多かったのは健康によいと思うこと(32.1%)で、伝統的な食文化(27.7%)、味(25.8%)、日持ちのよさ(14.4%)が続きました。食べない理由としては「効能を知らない」が55.6%で最多でしたが、この質問には実際に発酵食品を食べている人も含めた全員が答えているため、発酵食品を完全に避ける理由と受け取るべきではないと著者らは注意を促しています。情報源としてはインターネットが最も多く挙げられました。

性別・年齢・学歴を同時に考慮した分析では、女性と高学歴が「発酵食品を知っている」という回答と独立して関連していました。女性は男性に比べ、そう答えるオッズ(起こりやすさを表す指標)が2.44倍でした。学歴がディプロマ以下の人と比べたオッズは、学士で1.60倍、大学院修了者で2.20倍でした。一方、年齢層との関連は見られませんでした。

この研究が示すこと

この研究から、調査に参加した人々の間では、文化的になじみのある発酵食品を「知っている」という感覚と、プロバイオティクスについての理解とのあいだに隔たりがあることがうかがえます。著者らは、インターネットなどを通じた栄養教育や、生きた微生物を含むかどうかを分かりやすく示す表示が検討に値する可能性を挙げています。ただし、それらが知識や食行動を変えるかどうかは確かめられていないとしています。

また著者らは、今回の参加者は女性や高学歴の人に偏ったオンライン上の便宜的な集団であり、結果を国全体に当てはめることはできず、発酵食品をよく知っている人の割合は実際より高く出ている可能性が高いと述べています。さらに、一時点の調査であるため、学歴や性別と認識の関係から因果関係までは言えないことも示しています。こうした前提のもとで本研究は、身近な発酵食品であっても「発酵」と「プロバイオティクス」の違いが十分に伝わっていない現状を描き出した報告といえます。

原著論文の著者・所属:Hathami Alsuhebani(Department of Food Science and Human Nutrition, College of Agriculture and Food, Qassim University, Buraydah 51452, Saudi Arabia)、Hend F. Alharbi(Department of Clinical Nutrition, Medical City, Qassim University, Buraydah 52571, Saudi Arabia; Department of Food Science and Human Nutrition, College of Agriculture and Food, Qassim University, Buraydah 51452, Saudi Arabia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Hathami Alsuhebani, Hend F. Alharbi. Self-Reported Familiarity with and Consumption of Fermented Foods and Awareness of Probiotics: An Online Convenience Sample of Adults in Saudi Arabia. Foods 2026-10-30. DOI: 10.3390/foods15213886. 原著ライセンス:CC BY.