この研究は、パキスタンの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Food biomacromolecules.
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
二つの種を並べて比べるという狙い
基本的な栄養を補うだけでなく、体の働きに役立つことが期待される食品は「機能性食品」と呼ばれます。植物の種はその素材として盛んに研究されており、なかでもカボチャの種とチアシードは、たんぱく質や脂質、食物繊維、抗酸化成分などを豊富に含むことから注目されています。
著者らによると、これまで二つの種はそれぞれ個別に論じられることが多く、同じ枠組みで比較されることはほとんどありませんでした。そこで研究チームは、両者の栄養組成、生理活性成分、機能的な性質を並べて比べること、食品の配合で似た役割を果たすのか、補い合うのか、置き換えられるのかを整理すること、そして研究ごとに食い違う成分データの扱いを示すことを目的に、この総説をまとめました。食品開発者や研究者が、二つの種を「似たような種素材」としてひとまとめに扱うのではなく、根拠に基づいて選んだり組み合わせたりするための土台を示すことを目指しています。
どのように文献を集めたか
著者らは、Scopus、Web of Science、PubMed、Google Scholarの各データベースで、カボチャの種、チアシード、機能性食品、生理活性成分、抗酸化活性、食品への応用などを組み合わせて検索しました。対象は2011年から2023年に英語で発表された査読付きの原著論文と総説です。とくに成分を実際に測定した研究や、食品への配合を比べて食感や成分を数値で評価した研究を優先し、最終的に37件の文献をまとめています。
成分値は、品種、産地、加工、分析方法によって大きく変わります。そのため著者らは、同じ栄養素について文献間で値が異なる場合、どちらか一方にまとめず両方の値を示し、違いが生じた理由を本文で論じる方針をとりました。たとえばカボチャの種の脂質量は、ある文献では100グラムあたり約41.6グラム、別の文献では47.9グラムと報告されています。論文は、これを矛盾ではなく研究間の実際のばらつきを示す例として扱っています。
成分と性質の違い
論文によると、カボチャの種は比較的たんぱく質が多く、亜鉛やマグネシウム、植物ステロール、スクアレンを多く含みます。脂質の中心はリノール酸とオレイン酸です。一方、チアシードは脂質量がカボチャの種と同程度かそれ以上で、その脂肪の約6割をオメガ3脂肪酸のα-リノレン酸が占めます。オメガ3とオメガ6の比は重量でおよそ3対1と紹介されています。食物繊維も非常に多く、引用された成分表では100グラムあたり34.4グラムです。主な抗酸化成分も異なり、カボチャの種ではトコフェロール(ビタミンEの仲間)やカロテノイド、チアシードではロスマリン酸、カフェ酸、クロロゲン酸などが挙げられています。
抗酸化、抗糖尿病、抗炎症、抗菌、抗がんといった作用についても、これまでの報告が整理されています。ただし著者らは、これらの根拠の多くが培養細胞を使った実験や動物実験から得られたものだと繰り返し強調しています。人での臨床的な効果はまだ確立されておらず、ヒトでの証拠は予備的な段階にとどまるとしています。
食品の中での働きについては、成分の構造から説明しています。チアシードの表面には「ムシレージ」と呼ばれる粘りのある多糖類があり、自重の23〜27倍の水を保持してゲル状になります。この性質により、増粘剤や安定剤として、グアーガムやゼラチンと同じような役割を果たしうるとされます。カボチャの種のたんぱく質は、酸性では溶けにくく中性以上でよく溶けます。また、変性する温度が90℃をやや上回るほど熱に強いため、焼成などの加熱を経ても乳化や泡立ち、ゲル化といった性質を保ちやすいと説明されています。
食品への応用で見えた使い分け
集められた研究では、カボチャの種の粉は主に焼き菓子や肉製品のたんぱく質やミネラルを増やす目的で使われ、チアシードは水や脂を抱え込む性質、食物繊維やオメガ3を加える目的で、パン・菓子類、乳製品の代替品、肉製品に使われる傾向がありました。たとえば、カボチャの種の粉を15%配合したクッキーでは、たんぱく質や灰分などが増え、食感や色、官能評価も向上したと報告されています。チアシードの粉を加えた鶏肉ソーセージでは加熱による目減りが少なくなりましたが、最も好まれたのは配合率5%のものでした。
一方で、栄養面で最もよい配合と、味や食感で最も好まれる配合が一致しない例も目立ちます。チアシード入りのマフィンでは、栄養面では20%配合が最もよく、官能評価では15%が最も受け入れられました。カボチャの種とチアシードを組み合わせたバーでも、成分面では85対15、官能評価では95対5の比率が最もよい結果でした。著者らはまた、多くの研究が小規模な試作にとどまり、保存性や量産化のデータが乏しいこと、官能評価の参加者が少なく方法も統一されていないため研究どうしを比べにくいことを限界として挙げています。
この総説が伝えているのは、カボチャの種とチアシードは同じような「健康によい種」ではなく、成分も食品の中での働きも異なる素材だということです。たんぱく質やミネラルを補うカボチャの種、保水性やオメガ3が特徴のチアシードという違いを踏まえ、目的に応じて選んだり組み合わせたりする視点を示しています。同時に、健康への効果については人での確かな証拠がまだ限られていることも明確にしています。
著者:Fatima Urooj(National Institute of Food Science and Technology University of Agriculture Faisalabad Pakistan)、Fatima Javed(National Institute of Food Science and Technology University of Agriculture Faisalabad Pakistan)、Abdul Mueez Ahmad(National Institute of Food Science and Technology University of Agriculture Faisalabad Pakistan)、Laiba Younas(National Institute of Food Science and Technology University of Agriculture Faisalabad Pakistan)、Sadia Ansar(Post Harvest Research Centre Ayub Agricultural Research Institute Faislabad Pakistan)、Sumbal Raana(National Institute of Food Science and Technology University of Agriculture Faisalabad Pakistan)、Muhammad Abdullah(National Institute of Food Science and Technology University of Agriculture Faisalabad Pakistan)、Rimsha Amjad(National Institute of Food Science and Technology University of Agriculture Faisalabad Pakistan)、Kashaf Basharat(National Institute of Food Science and Technology University of Agriculture Faisalabad Pakistan)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Fatima Urooj, Fatima Javed, Abdul Mueez Ahmad, et al. Pumpkin and chia seeds as functional foods and their application in different food products: A review. Food biomacromolecules. 2026-09-27. DOI: 10.1002/fob2.70098. 原著ライセンス:CC BY.