著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
牛の心臓や腎臓などの食用臓器は、一般的な牛肉の部位に比べて鉄、セレン、亜鉛、ビタミンA、ビタミンB群などを多く含む食材として知られています。一方で、風味や食感、見た目、なじみの薄さから、食品として十分に活用されていません。著者らは、日常的に食べられているひき肉製品に臓器を混ぜることで、家畜1頭をより無駄なく利用でき、製品の栄養価も高められる可能性に着目しました。
ひき肉は挽くことで組織の違いが目立ちにくくなるため、臓器を取り入れやすい製品です。ただし、臓器の種類や配合量によっては、焼いたときの縮み、硬さ、色、味に影響が出るおそれがあります。最近発表された別の研究では、心臓・肝臓・腎臓を15%配合して比較し、心臓と腎臓を今後の配合検討の有力候補としていました。しかし、品質と消費者の受け入れやすさを保てる最適な配合量は分かっていませんでした。そこで本研究では、牛の心臓と腎臓をそれぞれ6%と12%の2段階で配合したパティを比べ、品質と消費者の受け入れやすさを保ちながら栄養価を高められる配合を探ることを目的としました。
何を調べたか
研究チームは、赤身80%・脂肪20%の市販の牛ひき肉用原料をもとに、臓器を加えないパティ(対照)と、心臓6%、心臓12%、腎臓6%、腎臓12%の計5種類のパティを作りました。塩や香辛料、保存料、つなぎなどは一切加えていません。
これらのパティについて、水分やたんぱく質、脂質、コレステロール、ミネラルなどの栄養成分を調べました。また、オーブンで焼いたときの重量の減り方(加熱損失)と加熱時間、焼く前と焼いた後の色、機械で測った硬さや弾力などの食感も測定しました。さらに、ひき肉を月に2〜3回以上食べる81人の消費者に試食してもらいました。色の違いが分からないよう赤い照明の下で、好ましさ、風味、食感、購入意向、支払ってもよい価格などを評価してもらいました。あわせて、原料価格をもとに配合ごとの原料費も試算しました。
主な結果
栄養成分では、臓器を加えたパティはいずれも対照より水分が多く、カロリー密度が低くなりました。たんぱく質、脂質、鉄の含有量には配合による差が見られませんでした。一方、臓器を加えるとコレステロールが増え、腎臓12%のパティが最も高い値を示しました。カリウムとナトリウムも腎臓12%のパティで最も多くなりました。
加熱では、腎臓12%のパティは焼いたときの重量の減りが最も少なく、心臓12%のパティは数値上最も多くなりました。加熱時間には差がありませんでした。色については、腎臓を加えたパティで生の状態の赤みが強まり、焼いた後も腎臓12%のパティが最も赤みを保っていました。心臓を加えたパティの焼いた後の色は対照に近いものでした。なお、色全体の総合的な違いを示す指標には、統計的な差が出ませんでした。食感では、腎臓12%のパティが最も柔らかく、心臓6%のパティが最も硬いという結果でした。
消費者評価では、心臓を加えたパティ(6%・12%)と腎臓6%のパティが、全体的な好ましさ、風味、食感で対照と同程度の評価を得ました。これに対し腎臓12%のパティは、他のすべてより評価が低くなりました。また、「レバーのよう」「金属的」と表現される頻度も最も高くなりました。購入意向と支払ってもよい価格でも、心臓入りは対照と同程度で、腎臓12%は最も低い評価でした。
原料費の試算では、臓器の配合が増えるほど費用が下がりました。対照と比べた削減率は、腎臓12%で7.48%、心臓12%で4.53%、腎臓6%で3.73%、心臓6%で2.19%でした。ただし、これは原料の置き換えのみに基づく試算で、加工や包装、流通などの費用は含まれていません。
研究が示すこと
著者らは、評価した中では牛の心臓を加える配合が最もバランスがよいと結論づけています。消費者の受け入れやすさを保ちながら臓器の利用を広げ、原料費も下げられるためです。腎臓は12%まで増やすと費用は最も下がるものの、独特の風味によって評価が下がりました。また論文は、ナトリウムやコレステロールの変化も栄養面の判断で考慮すべきだとしています。保存中の酸化のしやすさは今回調べていないことも明記されています。臓器の種類と配合量の選び方次第で、なじみのあるひき肉製品の中に臓器を無理なく取り入れられる可能性を示した研究といえます。
原著論文の著者・所属:Savannah L. Douglas(Department of Animal Sciences, Auburn University, Auburn, AL 36849, USA)、Xenia M. Murillo-Contreras(Department of Poultry Sciences, Auburn University, Auburn, AL 36849, USA)、Rilee A. Bennett(Department of Animal Sciences, Auburn University, Auburn, AL 36849, USA)、Autumn L. Armaly(Department of Animal Sciences, Auburn University, Auburn, AL 36849, USA)、Sungeun Cho(Department of Poultry Sciences, Auburn University, Auburn, AL 36849, USA)、Don R. Mulvaney(Department of Animal Sciences, Auburn University, Auburn, AL 36849, USA)、Soren P. Rodning(Department of Animal Sciences, Auburn University, Auburn, AL 36849, USA)、Jase J. Ball(Department of Animal Sciences, Auburn University, Auburn, AL 36849, USA)、Jason T. Sawyer(Department of Animal Sciences, Auburn University, Auburn, AL 36849, USA)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Savannah L. Douglas, Xenia M. Murillo-Contreras, Rilee A. Bennett, et al. Quality and Consumer Acceptability of Organ-Enhanced Ground Beef Patties. Foods 2026-08-29. DOI: 10.3390/foods15173058. 原著ライセンス:CC BY.