この研究は、アメリカの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Frontiers in Food Science and Technology
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: Crossref
何を目的とした研究か
ワインの酸は、味わいの均衡や品質に影響します。研究チームは、とくにアルコール度数の低いワインでは酸が過剰に感じられ、バランスや品質を損なうことがあると述べています。酸を下げる方法自体は数多く知られていますが、製品や製造方法をまたいで各手法の効果だけを切り出して比べることは難しい、というのが著者らの問題意識です。
そこで本研究は、アルコール度数11%未満の低アルコールワインを対象に、発酵中および発酵後に酸を減らす三つの方法を同じ条件下で評価しました。取り上げられたのは、低温での発酵、酸の生成が少ない酵母株の使用、そして仕上がったワインのアルカリ化(アルカリ剤で酸を中和する化学的な調整)です。
どのように調べたか
原料にはカベルネ・ソーヴィニヨンの果汁(マスト)が用いられました。著者らの記載によれば、その糖度は21.3±0.5°Brix、酸度は酒石酸換算で3.20±0.1 g/L、pHは3.69±0.01でした。°Brixは果汁に含まれる糖などの濃度を示す単位で、発酵後のアルコール度数の目安になります。この同一のマストを、上記の各条件で発酵させました。
発酵の進み具合は、密度(比重)、液中に浮遊している酵母細胞、アルコール分を測定して追跡しました。できあがったワインについては、pH、滴定酸度(ワイン中の酸の総量を示す指標)、色の濃さ、アルコール分が分析されました。さらに、対照区(通常の条件で造ったワイン)を含むこれらの低アルコールワインを、95人の消費者パネルが評価しました。
報告された主な結果
著者らの報告では、三つの脱酸方法はいずれも有意に酸を減らしました。減少幅が最も大きかったのは低温発酵で、対照区と比べて20.5%の低下でした。次いで低酸生成酵母が16.4%、アルカリ化が8.9%で最も小さい減少にとどまりました。
95人の消費者パネルによる評価では、香りの好ましさを含むいくつかの項目で有意な差は認められませんでした。一方、外観の好ましさ、感じられたアルコール感、感じられた酸っぱさについては有意な差が見られたと報告されています。順位付けの合計値が最も高かったのは低酸生成酵母で造ったワインであり、著者らは、本研究で用いた条件のもとではこの方法による酸の低減が最も好まれたと述べています。
この報告が示すこと
著者らは、これらの結果から、商業的に実行可能な酸のマネジメント手法を低アルコールワインの製造に組み込むことで、消費者の受容性を損なわずにワインのバランスを改善できることが示された、と結論づけています。方法によって酸の減り方も消費者の受け取り方も異なるという今回の報告は、造り手が酸味と感覚的な特徴を調整するうえで、選択肢を比べるための手がかりを与えるものです。
著者:Patricia C. Patricio-Morillo(Food Science and Human Nutrition Department, University of Florida, Gainesville, FL, United States)、Madelyn M. Rippo(Food Science and Human Nutrition Department, University of Florida, Gainesville, FL, United States)、Alexandra A. Escalera(Food Science and Human Nutrition Department, University of Florida, Gainesville, FL, United States)、Charles Sims(Food Science and Human Nutrition Department, University of Florida, Gainesville, FL, United States)、Katherine A. Thompson-Witrick(Food Science and Human Nutrition Department, University of Florida, Gainesville, FL, United States)、Amarat Simonne(Family, Youth and Community Sciences Department, University of Florida, Gainesville, FL, United States)、Andrew J. MacIntosh(Food Science and Human Nutrition Department, University of Florida, Gainesville, FL, United States)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Patricia C. Patricio-Morillo, Madelyn M. Rippo, Alexandra A. Escalera, et al. Balancing acidity in low alcohol wines: effects of fermentation conditions, chemical modification, and yeast selection on consumer perception. Frontiers in Food Science and Technology 2026-09-01. DOI: 10.3389/frfst.2026.1926825. 原著ライセンス:CC BY.