著者の所属・活動拠点の国は、サウジアラビア、ウズベキスタン、インドです。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文掲載ページ

研究の目的

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、生殖年齢の女性に最も多い内分泌・代謝の病気とされます。排卵の乱れ、男性ホルモンが多い状態、超音波で見える卵巣の特徴などで診断され、生殖や代謝、心理面にも影響することがあります。生活習慣がこの病気に関わることから、食事は変えることのできる要因として注目されてきました。

著者らによると、これまでの研究は炎症に関わる指標など、特定の側面に絞った食事指標が中心でした。食事全体の質を総合的に評価する指標とPCOSとの関係は、まだ十分に分かっていませんでした。そこで研究チームは、総合的な食事の質の指標を使い、食事の質とPCOSである可能性(オッズ)との関連を調べました。

どのように調べたか

研究には、サウジアラビアのウンム・アル=クラー大学病院の外来に通う20〜35歳の女性300人が参加しました。内訳は、PCOSと診断された女性150人と、PCOSではない健康な女性150人です。研究チームは、病気の人と病気でない人の過去の食習慣を比べる「症例対照研究」という方法を用いました。PCOSの女性は、診断を受けてから3か月以内の人に限りました。診断後に食事を変えた影響をできるだけ減らすためです。また、重い慢性疾患がある人や、代謝・生殖に影響する薬や特別な食事療法を最近使っていた人は除外しました。

食事は、サウジアラビアの人向けに作られ妥当性が確かめられた食物摂取頻度調査票で調べました。152品目について、過去1年間にどのくらいの頻度と量を食べたかを、訓練を受けた調査員が対面で聞き取りました。

食事の質は「国際食事質指数(DQI-I)」で評価しました。この指数は0〜100点で、点数が高いほど質の良い食事を表します。4つの要素から成り、食品群やたんぱく源の「多様性」、たんぱく質・果物・野菜・食物繊維・カルシウムなどの「充足度」、飽和脂肪・コレステロール・ナトリウム・栄養に乏しい高エネルギー食品を控える「節度」、栄養素の比率の「バランス」を点数化します。

研究チームは参加者全体をDQI-Iの点数で3つのグループに分けました。そのうえで、年齢、体格指数(BMI)、喫煙、食物繊維の摂取量、身体活動量、総エネルギー摂取量の影響を統計的に調整し、各グループのPCOSのオッズを比べました。

主な結果

PCOSの女性は、比較対象の女性に比べてBMIが高く(中央値29.1対27.0)、DQI-Iの総得点は低くなっていました(中央値68.0対70.0)。4つの要素のうち、差が見られたのは「充足度」と「節度」で、PCOSの女性の方が低い点数でした。「多様性」と「バランス」には差がありませんでした。

食品別に見ると、PCOSの女性は果物、野菜、低脂肪乳製品の摂取量が少なくなっていました。一方で、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸がエネルギーに占める割合は、PCOSの女性の方が高いという結果でした。著者らはこれを一見意外な結果だと述べています。その理由として、摂取した脂肪の量だけでは、脂肪の種類や供給源といった質までは反映されない可能性を挙げました。ただし、これは今回直接測定していない仮説であるとしています。

各種の要因を調整した解析では、DQI-Iが最も高いグループは最も低いグループに比べ、PCOSである可能性(オッズ)が約70%低いという結果でした(オッズ比0.30)。中間のグループでは、明確な差は認められませんでした。点数が高いグループほどオッズが低くなる傾向も統計的に確認されました。また、BMIを調整してもこの関連はほぼ変わりませんでした。

研究が示すこと

この研究では、特定の栄養素ではなく食事全体の質が低いことが、PCOSである可能性の高さと関連していました。特に、必要な食品や栄養素が足りているか、控えるべきものを控えているかという側面で、PCOSの女性とそうでない女性の間に違いが見られました。

一方で著者らは、この研究方法では因果関係を判断できないと明記しています。食事の質の低さがPCOSを引き起こすのか、PCOSの影響で食習慣が変わるのかは区別できません。また、食事の情報は本人の申告に基づいており、参加者は1つの病院から集めています。今回の結果は、食事の質とPCOSとの関連を示した観察結果として受け止める必要があります。

原著論文の著者・所属:Pushpamala Ramaiah(Faculty of Nursing, Umm Al-Qura University, Mecca, Saudi Arabia)、Ibtesam Nomani(Faculty of Nursing, Umm Al-Qura University, Mecca, Saudi Arabia)、Hayam Ibrahim Asfour(Faculty of Nursing, Umm Al-Qura University, Mecca, Saudi Arabia)、Gayrat Kodirov(Jizzakh State Pedagogical University, Jizzakh, Uzbekistan)、Balakrishnan Rajalingam(Veltech Rangarajan Dr. Sagunthala R&D Institute of Science and Technology, Chennai, India)、Gulnora Yusupaliyeva(Tashkent State Medical University, Tashkent, Uzbekistan)、Shelly Agarwal(Department of Obstetrics and Gynecology, Sharda University, Knowledge Park III, Greater Noida, India)、Safia Obaidur Rab(Department of Clinical Laboratory Sciences, College of Applied Medical Sciences, King Khalid University, Abha, Saudi Arabia)、Bhawna Thukaral(Department of Nutrition and Dietetics, Chandigarh University, Mohali, Punjab, India)、Hamad AlMohamadi(Islamic University of Madinah, Madinah, Saudi Arabia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Pushpamala Ramaiah, Ibtesam Nomani, Hayam Ibrahim Asfour, et al. Association between Diet Quality Index-International and the odds of polycystic ovary syndrome: a case–control study. Frontiers in Nutrition 2026-10-01. DOI: 10.3389/fnut.2026.1986758. 原著ライセンス:CC BY.