著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:MEDICA (International Medical Scientific Journal)

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

妊娠中の貧血は、血液中で酸素を運ぶヘモグロビンの濃度が基準より低い状態です。母体や胎児への酸素供給が妨げられるおそれがあり、低出生体重や早産などの好ましくない結果と関連することが知られています。インドネシア東ジャワ州マディウン県のバレレジョ地域保健センターの管轄区域では、妊婦の貧血の割合が2021年の27.3%から2024年には41.7%に上がり、県内の地域保健センターの中で最も高い水準になっていました。

これまでの研究では、母親の年齢、鉄剤(鉄を補うための錠剤)をきちんと飲んでいるかどうか、慢性的なエネルギー不足、日頃の食事のパターンが、妊娠中の貧血に関わる要因として挙げられてきました。ただし結果は集団によって一致していません。そこで研究チームは、この地域の妊婦を対象にこれら4つの要因を同時に調べ、どれが貧血と最も強く結びついているかを明らかにしようとしました。

どのように調べたか

研究は2025年4月から6月にかけて、症例対照研究という方法で行われました。これは、ある状態にある人(症例群)とない人(対照群)を集め、両者で過去の習慣や特徴を比べて、どの要因がその状態と結びついているかを探る方法です。この研究では、ヘモグロビン濃度が11 g/dL未満の貧血のある妊婦54人を症例群、11 g/dL以上の貧血のない妊婦54人を対照群とし、合計108人を比べました。

年齢と慢性的なエネルギー不足の有無は、医療記録と母子手帳から把握しました。エネルギー不足の判定には、栄養状態の目安として使われる上腕の周囲の長さが用いられています。一方、鉄剤の服用状況と食事のパターンは、研究チームが作成し事前に妥当性と信頼性を確認した質問票と対面の聞き取りで調べました。まず要因ごとに貧血との関連を調べ、関連が認められた要因を、複数の要因を同時に考慮する統計解析にかけました。

主な結果

要因ごとの分析では、鉄剤をきちんと飲んでいるかどうかと食事のパターンが、貧血と統計的にはっきり関連していました。食事のパターンがよくない妊婦は、よい妊婦に比べて貧血である見込み(オッズ)が約3.6倍高いと報告されています。一方、母親の年齢と慢性的なエネルギー不足は、貧血との間に意味のある関連が見られませんでした。

複数の要因を同時に考慮した分析で貧血との関連が残ったのは、鉄剤の服用状況だけでした。鉄剤をきちんと飲んでいない妊婦は、飲んでいる妊婦に比べて貧血のオッズがおよそ30倍高いという結果で、調べた要因の中で最も強い関連を示しました。

ただし著者らは、この30倍という数字を慎重に受け止めるよう求めています。対象者が108人と比較的少ないため推定値が不安定になりやすく、95%信頼区間も約9倍から約98倍と幅が広くなっています。また、鉄剤の副作用や家族の支え、経済状況など、服用状況と貧血の両方に関わりうる要因は調べられていません。服用状況は本人の申告に基づくため、記憶違いや望ましい答えをしてしまう偏りも起こりえます。さらに、貧血と診断されたことで指導を受け、その後の服用状況が変わった可能性も否定できないとしています。年齢やエネルギー不足に関連が見られなかった点についても、該当者が少なかったことなどから、関係がないことの証拠とは解釈すべきでないと述べています。

研究が示すこと

この研究は、貧血の割合が県内で最も高い地域において、妊婦が鉄剤を指示どおりに飲めているかどうかが、調べた要因の中で貧血と最も強く結びついていたことを示しました。食事のパターンも要因ごとの分析では貧血と関連していましたが、複数の要因を同時に考慮した分析で関連が残ったのは鉄剤の服用状況だけでした。著者らはこれらの結果を因果関係ではなく関連として示したうえで、妊婦健診での鉄剤に関する説明や服用状況の見守り、家族による支え、バランスのよい食事の勧めが、地域で貧血対策を考える手がかりになるとしています。

原著論文の著者・所属:Mega Arianti Putri(Department of Nursing, Universitas Bhakti Hasta Mulia Madiun, Madiun, East Java, Indonesia)、Riska Ratnawati(Department of Public Health, Universitas Bhakti Hasta Mulia Madiun, Madiun, East Java, Indonesia)、Achmad Vindo Galaresa(Department of Nursing, Politeknik Negeri Subang, Subang, West Java, Indonesia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mega Arianti Putri, Riska Ratnawati, Achmad Vindo Galaresa Factors Associated with Anemia Among Pregnant Women: A Case-Control Study in Madiun Regency, Indonesia. MEDICA (International Medical Scientific Journal) 2026-08-31. DOI: 10.53770/medica.v8i8.936. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。