にんじんやかぼちゃの黄色い色素として知られるβ-カロテンは、体内でビタミンAに変わる成分(プロビタミンA)です。ほうれん草など色の濃い野菜にも多く含まれていますが、日本食品標準成分表でこの成分の値がある1073件の食品を見渡すと、上位に並ぶのは意外にも海藻の「のり」と、香辛料の「パセリ」でした。100gあたりの数値を見比べると、実際に食べる量まで踏み込んだときの違いが見えてきます。

上位に並ぶのは、のりとパセリ

可食部100gあたりのβ-カロテン量で見ると、第1位はあまのり ほしのりで38000µg。ウシケノリ科の海藻を漉いて乾燥させたもので、養殖のスサビノリなどが原料です。第2位はまつも 素干しの30000µg、第3位は調味液で仕上げたあまのり 味付けのりの29000µgと、3位まで海藻が続きます。

ところが第4位に割り込んでくるのが、野菜のパセリ 乾です。28000µgと、海藻の強豪たちにわずか1000〜2000µgの差まで迫っています。第5位タイには、高温で短時間焼き上げたあまのり 焼きのりと、外海の岩盤に天然でつくいわのり 素干しが、ともに25000µgで並びます。同じ数値なのでどちらが優れているというわけではなく、いわのりは養殖ではなく天然もの、焼きのりは干しのりを160〜180℃で30〜60秒焼いたものという、それぞれの成り立ちの違いが個性です。

パセリ乾は他にもビタミンC 820mg(可食部100gあたりで女性30〜49歳の推奨量100mg/日の820%)、ビタミンK 1300µg(同年代の目安量150µg/日)を含み、少量でも栄養が凝縮された食品であることがうかがえます。

一食で食べる量で見ると、使われ方が対照的

ここで見逃せないのが、これらの数値がすべて「可食部100gあたり」だという点です。100gものパセリやのりを一度に食べる人はまずいません。実際の使われ方に置き換えると、見え方は一変します。

パセリ乾の目安量は小さじ1杯で約2gです。28000µgという数値を2gに換算すると、実際に一食で口にするβ-カロテンはごくわずかな量にとどまります。香辛料として料理に散らす程度の使い方をする食品だからです。

一方でのり類は、そのまま一食分をまとまった量で食べられる食品です。あまのり ほしのりは1枚で約4g、味付けのりは1パックで約3g、いわのりに至っては1枚で約10gあります。目安量は食品ごとに単位も基準も異なるため、これらの重量を単純に比べて優劣をつけることはできませんが、パセリが小さじ1杯・約2gで料理に添える使い方をされるのに対し、のり類は1枚・数g〜十数gをまとめて食べられる食品だという使われ方の違いは、それぞれの食卓での役割をよく表しています。

数字の並びだけでは見えないもの

あまのり ほしのりにはヨウ素1400µg(甲状腺ホルモンを構成し、成長・発達やエネルギー代謝に関わるとされるミネラルで、可食部100gあたりでは女性30〜49歳の推奨量140µg/日の約10倍にあたります)や葉酸1200µg、まつもにはマグネシウム700mg・カルシウム920mgと、海藻はβ-カロテン以外の栄養も豊富です。ただしこれらも可食部100gあたりの値であり、実際の一食量はのり1〜2枚分とずっと控えめになる点は同じです。

成分表の「100gあたりランキング」は、食品どうしの濃さを公平に比べるためのものさしです。しかしパセリのように少量しか使わない香辛料と、のりのようにそのまま数g〜十数g食べられる食品とでは、同じ土俵の数字でも食卓での使われ方は大きく異なります。ランキングの順位に目を奪われるより、「その食品を実際どれだけ食べるか」まで考えてはじめて、日々の食事にどう活きるかが見えてくるのではないでしょうか。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準