葉酸は、ビタミンB群の一種です。細胞の設計図であるDNAをつくるときに補酵素として働き、細胞が新しく生まれるのを支えます。赤血球の形成を助ける栄養素でもあり、この働きにはビタミンB12との連携が必要とされています。とくに胎児の正常な発育に関わるとされることから、妊娠を考える方や妊娠初期の方は意識的にとることが推奨されています(厚生労働省 e-ヘルスネット「葉酸とサプリメント」)。水に溶ける性質を持つため、体にためておくことが難しく、毎日の食事からコツコツ補うことが基本になります。さらに、妊娠を考える方・妊娠初期の方については、食事からの摂取に加えてサプリメントで400µg/日の付加摂取が厚生労働省により推奨されており、食事だけで必要量を満たすことは難しいとされています(e-ヘルスネット「葉酸とサプリメント ‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果」)。

女性(30〜49歳)の1日の推奨量は、日本人の食事摂取基準に基づき240µgとされています。それを念頭に、葉酸を多く含む食品のデータを見てみると、顔ぶれが少し意外かもしれません。

1位は乾燥パン酵母──小さじ1杯に凝縮された密度

可食部100gあたりの葉酸は3800µgと、ランキング内で突出しているのが乾燥パン酵母です。ただし、乾燥酵母を100g使う場面は料理ではまずありません。目安量は小さじ1杯・約2gで、その場合に得られる葉酸はおよそ76µgです。推奨量240µgへの貢献としては控えめですが、それでも「葉酸の密度(100gあたりの含有量)」という点でこの食品が1位である事実は際立っています。

さらに注目したいのは、葉酸だけでなくビタミンB1・B2も同時に高い水準で含まれている点です。B1・B2はどちらもビタミンB群の仲間で、エネルギーを体内で使えるかたちに変えるときに関わります。葉酸・B1・B2が一つの食品にそろっているのは、このランキングに一貫して見られる特徴のもっとも分かりやすい例です。

なお、葉酸の耐容上限量(過剰摂取の目安となる上限)は、サプリメントや食品への添加といった合成型の葉酸だけに適用されるもので、食品に天然に含まれる葉酸には適用されません。一方、後述するのり類に豊富なヨウ素については、食品由来であっても耐容上限量(成人3000µg/日)が設定されており、合成・天然を問わず過剰摂取への注意が必要です。同じ「耐容上限量」という言葉でも、葉酸は合成型のみに適用・食品由来は対象外、ヨウ素は由来を問わず適用という違いがあります。

2位タイ:圧搾パン酵母と焼きのり──まったく異なる食品が同じ数値

圧搾パン酵母焼きのりは、いずれも100gあたり葉酸1900µgで並んでいます。乾燥と圧搾という形状の違いで密度が異なるだけで、酵母としての素性は同じです。圧搾タイプは水分を多く含む固形物で、少量でも風味と栄養が凝縮されており、パンづくりや発酵料理で広く使われます。

一方、焼きのりは日常のテーブルに登場頻度が高い食材です。100gあたりの葉酸密度(1900µg)は乾燥酵母(3800µg)に次ぐ水準ですが、これはあくまで100gあたりの比較です。実際に食べる量の目安となる1枚・約3gで得られる葉酸は約57µgにとどまります。のりはビタミンB2も含んでおり、ここでもB群が複数そろっているという同じ構造が見えます。

焼きのりにはビタミンB12が100gあたり56.7µg含まれています。ただし、のり類に含まれるビタミンB12の大部分はコバラミン類似体(いわゆる偽B12)であり、体内で真のB12としては機能しないことが研究で示されています。そのため、のりをビタミンB12の補給源として期待することは難しいとされています。なお数値上、100gあたりの含有量(56.7µg)は成人の推奨量(2.4µg/日)を大きく上回りますが、実際に食べる1枚・約3gあたりでは約1.7µgにとどまり推奨量にも届かないうえ、前述のとおり体内で利用できない類似体が主体であるため、参考値にすぎません。

4位・5位ものり類──「海藻」というカテゴリの実力

2位タイが2品あるため順位は4位へ進みます。味付けのりは100gあたり1600µgで4位、いわのり(素干し)は1500µgで5位に入ります。いわのりは食物繊維・ミネラルも豊富な乾物で、ふりかけのように使ったり汁物に加えたりと、日常の食事に取り入れやすい食材です。上位5品のうち3品がのり類というのは、海藻という食材カテゴリ全体が葉酸を高密度に含む傾向を示しています。

ただし、のり類にはヨウ素も多く含まれます。日本人の食事摂取基準2025では成人のヨウ素耐容上限量が3000µg/日と設定されており、のり類を一度に大量にとる習慣がある場合は量の偏りに注意が必要です。焼きのりは1枚・約3gという通常の食べ方の範囲では過剰摂取を心配する必要はありませんが、大量に食べ続ける習慣がある場合は摂取量に気をつけましょう。また、妊婦・授乳婦・甲状腺疾患がある方はヨウ素の目安量・上限量が一般成人と異なる場合があるため、医師や管理栄養士にご相談ください。

葉酸を狙うと、B群チームが一緒についてくる

ここまでのデータに共通する特徴が一つあります。葉酸が豊富な食品には、B1・B2といった他のビタミンB群が同時に含まれているという点です。これには理由があります。酵母はB群を補酵素として自身の代謝に使う微生物であり、海藻もB群を生育に必要とするため、これらの食品にはB群が構造的に集中しやすいとされています。B群全体は互いに補い合いながら体内で働くとされており(日本人の食事摂取基準)、特定の一種だけを意識して摂取するよりも、葉酸が多い食品を日常的に選ぶことで、B群のチームが自然とそろうというのが、このランキングが教えてくれる実用的な視点です。

ただし、酵母やのりはあくまで葉酸密度の高い補助的な食材です。葉酸を食事全体で確保するには、豆類・緑黄色野菜・レバーなど日常的に量を摂りやすい食品を主軸に組み合わせることが大切です。乾燥酵母はパンづくりや発酵料理の材料として、焼きのりはごはんや汁物の彩りとして、いわのりはふりかけのように。それぞれの食品が持つ「日常への入り方」は違っていても、葉酸という共通軸で選ぶと、食卓に自然なB群の補給ルートができあがります。

参考:日本食品標準成分表(八訂)/日本人の食事摂取基準(厚生労働省)

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準e-ヘルスネット「葉酸とサプリメント ‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果」(厚生労働省)

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。