「海藻はヨウ素が豊富」というのは間違いではない。ただし、その数字を並べてみると、豊富さの中身がまるで違うことに気づく。まこんぶ(素干し)は100gあたりヨウ素200,000µg、ひじき(ほしひじき ステンレス釜 乾)は45,000µg。どちらも乾物として突出した値だが、他の海藻に目を移すと様子が変わる。あまのり(ほしのり)は1,400µg、わかめ(めかぶわかめ 生)は390µg、てんぐさ(ところてん)は240µgと、こんぶ・ひじきとは3桁前後の開きがある。
ヨウ素は甲状腺ホルモンの構成成分で、エネルギー代謝や成長・発達に関わるとされる。1日の推奨量(成人30〜49歳)は男女ともに140µg。食品の100gあたりの値と1日の推奨量はまったく別の数字で、まこんぶの200,000µgという値は「乾物100g全体に含まれる量」であって「一食での摂取量」ではない。まこんぶの目安量は5cm角で約2g、素干し10cm角1枚でも約10g。実際に一度に口にする量はごく少量で、200,000µgをそのまま摂取するわけではない。ヨウ素には耐容上限量(成人30〜49歳:3,000µg)が定められており、こんぶ入りの出汁や佃煮を毎日大量に食べ続けるような極端な摂り方でなければ、通常の一食量で心配する数値ではない。一方、ひじきの目安量は1人分約10g、大さじ1杯で約3g。乾物としての密度は高いが、料理に使う量そのものは控えめだ。
ここで見えてくるのは、「海藻の種類が違うからヨウ素量が違う」のではなく、「乾物として濃縮された状態でどれだけ食べるか」が摂取量を左右しているという構図だ。あまのり・わかめ・ところてんは生や小片で食べる量が少なく、こんぶ・ひじきは乾物のまま出汁や煮物の主役として使われる。同じ「海藻」という括りでも、乾物を主菜級に食べる食品とそうでない食品とでは、ヨウ素の実際の摂取量への影響がまったく違ってくる。
ではあまのりは脇役かというと、そう単純でもない。あまのりは100gあたりたんぱく質39.4g、葉酸1,200µg、ビタミンB12は39.6µgと、こんぶ・ひじきにはない顔ぶれの数値を持つ。ただし目安量は1枚約4gと軽く、板のり数枚を食卓に添える程度では、これらの数値をそのまま摂取量に換算はできない。数字の大きさだけでなく、実際に食べる量とセットで見て初めて意味を持つという点は、こんぶやひじきと共通している。
ひじきについては、もう一つ知っておきたい注意点がある。乾燥ひじきにはヒ素が比較的高い濃度で含まれ、乾物中の総ヒ素の約7割が無機ヒ素とされる。ただし無機ヒ素は水溶性で、水で戻すと約5割、ゆで戻しでは約8割、水戻し後にさらにゆでこぼすと約9割まで減らせるとされる。食品安全委員会も、通常の摂取の範囲でひじきを食べて健康に悪影響が出たという報告はないとしたうえで、極端に多く摂取せずバランスのよい食生活を心がけるよう呼びかけている。水で戻してから調理するといういつもの手順が、そのままヒ素を減らす一手にもなっているわけだ。
毎日の食卓での付き合い方
実践的な取り入れ方としては、こんぶやひじきは「乾物のまま大量に」ではなく、出汁や煮物に少量を効かせる使い方が合っている。まこんぶなら5cm角1枚程度を出汁取りに、ひじきなら大さじ1杯程度を煮物に加える程度で十分に持ち味が出る。一方、わかめやところてん、もずくは汁物や酢の物でかさを取って食べられる食品なので、こちらは量を気にせず日々の副菜に組み込みやすい。ヨウ素の摂り方を意識するよりも、カリウムを汁ごと無駄なく摂れる点や、食物繊維の目標量(成人30〜49歳:男性22g以上・女性18g以上)を踏まえた食物繊維の摂り方の一部として海藻を位置づける方が、毎日続けやすい発想だろう。
まとめ
「海藻はヨウ素が豊富」という括りの内側には、200,000µgのこんぶから240µgのところてんまで、約3桁の幅がある。摂取量を左右するのは海藻という分類そのものではなく、乾物として濃縮された食品をどれだけ食べるかという食べ方の差だ。こんぶやひじきを出汁や煮物にひとさじ効かせるいつもの調理は、実は摂取量を無理なく調整する型でもある。海藻の粘りやぬめりの正体は食物繊維によるものだが、その裏側にあるミネラルの数字もまた、量りようで表情を変える。次にどの海藻の数値を並べても、この「乾物か生か」という物差しを当ててみると、また新しい発見がありそうだ。
※特定の食品の効果を示すものではありません。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準・e-ヘルスネット「カリウム」(厚生労働省)・e-ヘルスネット「葉酸とサプリメント ‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果」(厚生労働省)