この研究は、ドイツ、ノルウェーの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Scientific Reports

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

肉や魚、卵、乳製品など動物性の食品を一切とらないヴィーガン食は、ドイツでも実践する人が増えています。これまでの研究からは、2型糖尿病や心臓病などに対して好ましい可能性が示される一方、骨密度が低めになりやすいことや、ビタミンB12、ビタミンD、ビタミンB2(リボフラビン)、ヨウ素、カルシウム、鉄、亜鉛、セレン、たんぱく質、魚に多い長鎖のオメガ3脂肪酸などが不足しやすいことが懸念されてきました。

しかし、ヴィーガンと雑食の人を詳しく比べた研究の多くは小規模で、ある一時点だけを調べたものでした。食事の健康への影響は中長期で見ることが重要です。そこで研究チームは、2017年に実施したRBVD研究(ヴィーガン食のリスクと利点を調べる研究)の参加者を2021年に再び招き、同じ人たちについて2つの時点で栄養摂取や栄養状態、血液・尿の検査値、骨の健康を比べました。

誰を、どのように調べたか

2017年の調査には、30〜60歳で、少なくとも1年以上ヴィーガン食または雑食を続けている人が、性別と年齢をそろえる形で36人ずつ参加しました。雑食の人は、週に一定量以上の肉や肉加工品を食べていることが条件でした。肥満の人や、がん・心筋梗塞・脳卒中・糖尿病などの重い病気がある人、妊娠中・授乳中の人などは対象外です。2021年の追跡調査には、このうちヴィーガン24人と雑食26人の計50人が参加しました。追跡時点でヴィーガンの人たちは、6年から約23年にわたってヴィーガン食を続けていました。

どちらの調査でも、同じ手順で、3日間の食事を量って記録してもらい、栄養素の摂取量を計算しました。サプリメントについては、実際の製品パッケージを持参してもらい、含まれる栄養素の量と飲み方を聞き取りました。さらに空腹時の採血と24時間分の採尿を行い、ビタミンやミネラルの血中濃度、コレステロール、血糖などを測定しました。骨の健康は、かかとの骨に超音波を当てて調べる方法で評価しました。分析では、各時点ごとにヴィーガンと雑食のグループを比べています。

主な結果:栄養の摂取と体内の状態

食物繊維の摂取量は両時点ともヴィーガンの方が多く、2021年にはたんぱく質と脂肪の摂取量がヴィーガンで少なくなっていました。必須アミノ酸の合計、飽和脂肪酸、そして魚に多いオメガ3脂肪酸であるEPAとDHAの摂取量は、両時点ともヴィーガンで少なめでした。ヨウ素の摂取量もヴィーガンで少なく、マグネシウムや鉄、銅の摂取量はヴィーガンの方が多い結果でした。

特に注目されてきたビタミンB12は、食事からの摂取量がヴィーガンで明らかに少なかったものの、ヴィーガンの約9割(2021年は87.5%)がサプリメントなどで補っていました。血中のB12に関連する複数の指標には両グループで差がなく、それらを組み合わせた指標では、どちらの時点でもB12欠乏と判定された人はいませんでした。論文は、高い補給率が食事からの不足を補っていたことを示唆するとしています。

ビタミンB2の血中濃度は2017年にはヴィーガンで低めでしたが、2021年には差が見られなくなりました。著者らは、追跡時にB2を含むサプリメントを使うヴィーガンが増えたことが関係している可能性を挙げています。ビタミンDは食事からの摂取量がヴィーガンで少ない一方、血中濃度は両時点ともヴィーガンの方が高い結果でした。ただし2回の調査では採血した季節が異なり、日光による体内でのビタミンD合成の影響を受けるため、著者らは2つの時点同士を比べることは控えるよう述べています。

ミネラルでは、血中の亜鉛濃度が両時点ともヴィーガンで低く、セレン濃度も特に2021年にヴィーガンで低めでした。カルシウムは2021年にヴィーガンの摂取量が少なく、尿中に出るカルシウムの量もヴィーガンで少ない傾向でした。鉄の貯蔵量を示すフェリチンやヘモグロビンには、両グループで差は見られませんでした。

主な結果:健康状態と、この研究が示すこと

血圧には両グループで差がありませんでした。総コレステロールとLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)は両時点ともヴィーガンで低めでしたが、その差は2021年にはやや小さくなっていました。血糖値と、過去1〜2か月の血糖の状態を示すHbA1cは、どちらのグループも病的な範囲には入っていないものの、特に2021年にヴィーガンで低めでした。かかとの骨の超音波による評価では、両時点とも統計的に意味のある差は見られませんでした。

なお、2021年にごくまれな例外を認めていたヴィーガン2人を除いて再分析すると、血糖値やコレステロールなど一部の項目では差が統計的に明確とはいえなくなりました。参加者は50人と少なく、結果は限られた集団での比較です。

それでも、同じ人たちを4年の間隔で2回詳しく調べたことで、ヴィーガン食の人では食事だけでは不足しやすい栄養素がある一方、サプリメントなどによる補給が体内の栄養状態に反映されている様子が示されました。また、亜鉛やセレン、ヨウ素など、ヴィーガン食で引き続き注意が必要とされる栄養素も浮かび上がっています。

著者:Katharina J. Penczynski(Department Food and Feed Safety in the Food Chain, German Federal Institute for Risk Assessment, Berlin, Germany)、Juliane Menzel(Department Food and Feed Safety in the Food Chain, German Federal Institute for Risk Assessment, Berlin, Germany)、Bastian Kochlik(Department Food and Feed Safety in the Food Chain, German Federal Institute for Risk Assessment, Berlin, Germany)、Adrian McCann(BEVITAL AS, Bergen, Norway)、Rima Obeid(Department of Clinical Chemistry and Laboratory Medicine, Saarland University Hospital, Homburg, Germany)、Hajo Haase(Department of Food Chemistry and Toxicology, Technische Universität Berlin, Berlin, Germany)、Maria Maares(Department of Food Chemistry and Toxicology, Technische Universität Berlin, Berlin, Germany)、Tom Heinze(Department of Food Chemistry, Institute of Nutritional Science, University of Potsdam, Potsdam, Germany)、Iris Trefflich(Department Food and Feed Safety in the Food Chain, German Federal Institute for Risk Assessment, Berlin, Germany)、Tanja Schwerdtle(Department of Food Chemistry, Institute of Nutritional Science, University of Potsdam, Potsdam, Germany)、Klaus Abraham(Department Food and Feed Safety in the Food Chain, German Federal Institute for Risk Assessment, Berlin, Germany)、Cornelia Weikert(Department Food and Feed Safety in the Food Chain, German Federal Institute for Risk Assessment, Berlin, Germany)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Katharina J. Penczynski, Juliane Menzel, Bastian Kochlik, et al. Nutrition and health status in the follow-up of the risks and benefits of a vegan diet (RBVD) study. Scientific Reports 2026-10-06. DOI: 10.1038/s41598-026-72290-8. 原著ライセンス:CC BY.