この研究は、ブラジルの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

自閉スペクトラム症(ASD)のある人では、食事に関する困難、とくに食べられるものが限られる「食の選択性(偏食)」がよく報告されています。そのため、食事から摂れる栄養素、とりわけビタミンやミネラルといった微量栄養素の摂取が影響を受けているのではないか、という見方があります。

著者らは、この分野の多くの研究には方法上の課題があると指摘しています。人の食事内容は日によって大きく変わるため(個人内変動)、その揺らぎを適切に調整しないと、その人が「ふだんどれくらい摂っているか」という習慣的摂取量を正しく表せない可能性があるというものです。そこでこの研究は、習慣的摂取量の推定にもとづいて、食の選択性がある場合とない場合とで、ASDのある子どもと青少年の微量栄養素の充足状況を比較することを目的としています。

調べ方

研究は横断研究、つまりある時点での状況を切り取って調べるかたちで行われました。データは2021年7月から2025年4月にかけて集められ、ブラジル南部にあるペロタス連邦大学の公立神経小児科外来を受診した2歳から18歳までの303人が対象です。

食事の内容は、連続しない3日分の「24時間思い出し法」(前日に食べたものを聞き取る方法)で把握されました。食の選択性については、食品群ごとの摂取状況と、食事中の行動を評価する質問票(Brief Autism Mealtime Behavior Inventory)の第10項目をもとに判定しています。

習慣的摂取量の分布は Multiple Source Method(バージョン1.0.1)という統計手法で推定され、得られた値が食事摂取基準(dietary reference intakes)と比べられました。

主な報告結果

著者らの報告によると、食の選択性がみられたのは参加者の77%でした。

食の選択性がある群とない群を比べたところ、どちらの群でも銅、カリウム、カルシウム、レチノール(ビタミンAの一種)について、摂取が足りていない人の割合が高いという結果が示されました。一方、ナトリウムの摂取は過剰でした。

習慣的摂取の充足状況について両群のあいだで統計的に意味のある差がみられたのは、ビタミンCとリンだけだったと報告されています。

この結果が示すこと

著者らはこの集団において、食の選択性があるかどうかで微量栄養素の充足状況が大きく分かれるわけではなく、どちらの群にも無視できない不足がみられたと結論づけています。

ここから導かれるのは、偏食が目立つ子どもだけを気にかけるのでは足りないという視点です。著者らは、食の選択性の有無にかかわらずASDのあるすべての人に対して日常的な栄養スクリーニングを行うことが、摂取量を正確に評価し、栄養面の働きかけをより適切に組み立てるために必要だと述べています。

著者:Eduarda de Souza Silva(Postdoctoral researcher in the Postgraduate Program in Nutrition and Food, Federal University of Pelotas, Pelotas, Brazil. Electronic address: [email protected])、Laura Vargas Hoffmann(PhD student in the Postgraduate Program in Nutrition and Food, Federal University of Pelotas, Pelotas, Brazil. Electronic address: [email protected])、Kamila Castro Grokoski(Postdoctoral researcher in the Postgraduate Program in Nutrition and Food, Federal University of Pelotas, Pelotas, Brazil. Electronic address: [email protected])、Sandra Costa Valle(Professor at the Faculty of Nutrition, Department of Nutrition, Federal University of Pelotas, Pelotas, Brazil. Electronic address: [email protected])、Juliana dos Santos Vaz(Professor at the Faculty of Nutrition, Department of Nutrition, Federal University of Pelotas, Pelotas, Brazil. Electronic address: [email protected])

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Eduarda de Souza Silva, Laura Vargas Hoffmann, Kamila Castro Grokoski, et al. Usual micronutrient intake and food selectivity among Brazilian children and adolescents with autism spectrum disorder: a cross-sectional study. Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics 2026-09-01. DOI: 10.1016/j.jand.2026.156876. 原著ライセンス:CC BY.