この研究は、ウクライナの研究機関の研究論文です。
掲載誌:The Scientific Issues of Ternopil Volodymyr Hnatiuk National Pedagogical University Series pedagogy
ライセンス: CC BY 確認元: OpenAlex
研究の目的と背景
ドライソーセージ(乾燥熟成させた非加熱のソーセージ)は消費者に人気の高い食肉加工品です。研究チームは、こうした製品の生物学的価値(タンパク質としての栄養的な質)を高めることが現在の課題だと述べています。
そこで著者らが目的に掲げたのは、ドライソーセージの配合にロックフォールチーズ、海塩、タキシフォリンを使うことの妥当性を検討することでした。ロックフォールチーズは青カビを使った軟質のチーズで、独特の風味を持ちます。タキシフォリンは天然由来の抗酸化物質(活性酸素などによる酸化を抑える成分)です。著者らは、海塩が従来の食塩に比べてナトリウム量が少なく、亜鉛やマグネシウム、セレン、カリウム、カルシウムなどを含むこと、ロックフォールチーズが必須アミノ酸を含みオメガ3・オメガ6系の多価不飽和脂肪酸を含むことを、先行研究を引きながら選定の理由として挙げています。
何をどう調べたか
著者らは、牛肉・豚肉を原料とする標準的な配合を対照区とし、半脂身豚肉の一部をロックフォールチーズに置き換え、食塩を海塩に替え、タキシフォリンを加えた試験区を3種類作りました。チーズの配合量は4.0%、6.0%、8.0%、海塩は2.2%、2.4%、2.6%と段階的に変えています。原料を細断して各材料とスターターカルチャー(発酵を担う微生物の種菌)を混ぜ、ケーシングに充填したのち、48時間の熟成、22℃での燻煙、相対湿度85%での乾燥という工程を経て製造しました。
評価は、専門家による5点法の官能評価(見た目や風味を人が採点する評価)に加え、タンパク質・脂質・食塩・亜硝酸ナトリウムの分析、高速液体クロマトグラフィーによるアミノ酸組成、ガスクロマトグラフィーによる脂肪酸組成、および大腸菌群やサルモネラなど食中毒に関わる細菌の検査で行われました。
報告された主な結果
官能評価では、ロックフォールチーズ6.0%、海塩2.4%、タキシフォリン0.02%の試験区(試作2号)が最も高い評点を得たと報告されています。著者らによれば、チーズが4.0%の試作では味と香りの表れ方が弱く、8.0%ではチーズの風味が強すぎたとのことです。
この試作2号を対照区と比べると、タンパク質が2.03%多く、脂質は1.6%少なく、食塩相当量は0.17%、亜硝酸ナトリウムは0.0001%少ない値が報告されました。著者らは、チーズが半脂身豚肉より高タンパク・低脂肪であることをこの差の説明として推測しています。なお、いずれの値も基準の範囲内でした。
必須アミノ酸については、対照区に対しイソロイシンが73%、メチオニン+シスチンが71%、バリンが45%、ロイシンが35%、フェニルアラニン+チロシンが28.5%、ヒスチジンが18.6%、リシンが17.5%、トレオニンが16.5%多いと報告されています。タンパク質の質を示すアミノ酸スコアも項目ごとに高い値を示しましたが、一方でアミノ酸スコアのばらつきを表す指標が対照区より2.65%大きくなり、その分だけ計算上の生物学的価値は対照区の66.28%に対し63.63%と低い値になったと著者らは記しています。
脂肪酸ではα-リノレン酸が0.159%、トランス-リノール酸が0.048%、ジホモ-γ-リノレン酸が0.004%、アラキドン酸が0.002%、対照区より多いと報告されました。微生物検査では、大腸菌群、サルモネラ、ウェルシュ菌、黄色ブドウ球菌、リステリア・モノサイトゲネスがいずれも検出されず、基準に適合したとされています。
この研究が示すこと
著者らは一連の検討から、ロックフォールチーズ、海塩、タキシフォリンをドライソーセージの配合に加えることで、独自性のある良質な製品の幅が広がると結論づけています。
この研究は、従来の原料の一部を別の食材に置き換えるという配合設計の工夫が、官能評価・成分組成・微生物学的な安全性のそれぞれにどう表れるかを、対照区との比較という形で具体的に示したものと言えます。同時に、アミノ酸の量が増えても計算上の生物学的価値がわずかに下がるように、一つの指標の改善が別の指標の改善と必ずしも一致しないことも、報告された数値から読み取れます。著者らは今後の課題として、保存中の酸化による劣化や微生物指標の変化を追うことを挙げています。
著者:Світлана Даниленко、Лариса Вацлавівна Баль-Прилипко(National University of Life and Environmental Sciences of Ukraine , 15 , Heroes of Defense , Kyiv , 03041 , Ukraine)、Ігор М. Устименко(National University of Life and Environmental Sciences of Ukraine , 15 , Heroes of Defense , Kyiv , 03041 , Ukraine)、Михайло І. Соломчук(National University of Life and Environmental Sciences of Ukraine , 15 , Heroes of Defense , Kyiv , 03041 , Ukraine)、Ірина Є. Іванова(Dmytro Motornyi Tavria State Agrotechnological University , Zhukovskyi str. , 66 , Zaporizhzhia , 69002 , Ukraine)、Максим В. Рябовол(National University of Life and Environmental Sciences of Ukraine , 15 , Heroes of Defense , Kyiv , 03041 , Ukraine)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Світлана Даниленко, Лариса Вацлавівна Баль-Прилипко, Ігор М. Устименко, et al. ОБҐРУНТУВАННЯ РЕЦЕПТУРИ ТА ОЦІНКА ЯКОСТІ І БЕЗПЕЧНОСТІ КОВБАСИ СИРОВ’ЯЛЕНОЇ З ВИКОРИСТАННЯМ СИРУ З ПЛІСНЯВОЮ, СОЛІ МОРСЬКОЇ І ТАКСИФОЛІНУ. The Scientific Issues of Ternopil Volodymyr Hnatiuk National Pedagogical University Series pedagogy 2026-09-18. DOI: 10.15421/jchemtech.v34i3.360657. 原著ライセンス:CC BY.