著者の所属・活動拠点の国は、アラブ首長国連邦、セルビアです。

掲載誌:Antioxidants

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

研究チームは、果実の種を焙煎していれるコーヒー代替飲料について、加工による成分の変化、抗酸化能、消化中の成分の変化、風味、安全性に関する研究を整理しました。背景には、カフェインを含まない飲料への需要と、果実加工で残る種を活用しようとする動きがあります。

これまでの研究は、焙煎や抽出の条件、測定方法、数値の表し方が大きく異なっていました。著者らは、そうした違いを踏まえながら、飲料として何が分かっているのかをまとめることを目指しました。

何を、どのように調べたか

対象は、ナツメヤシ、アサイー、バオバブ、アボカド、タマリンド、ドリアン、スネークフルーツ、パパイヤ、アンパラヤ、タリサイの10種類の果実の種です。新たな実験ではなく、既存の研究を読み解いて整理するナラティブレビューで、研究結果を統計的に統合するメタ解析ではありません。

著者らは文献の選定手順として、データベース間の重複を確認し、題名と要旨で関連性を調べ、候補となる文献の本文を確認する流れを示しています。種の組成、前処理や焙煎、飲料の風味、化学試験での抗酸化能、消化を模した試験、細胞や生体での作用、安全性のいずれかを扱う研究を対象としました。生の種、分離した油、溶媒抽出物などの研究は、飲料そのものの証拠と区別し、背景情報として扱っています。

主な報告結果

レビューによると、果実の種にはフェノール酸やフラボノイドなど多様な成分が含まれますが、その組成は種の種類、品種、成熟度、種のどの部分を使うか、加工履歴によって異なります。焙煎条件は、成分だけでなく、粉砕のしやすさ、抽出、色や風味にも影響していました。

抗酸化能は、強く焙煎すれば増え続けるわけではありませんでした。バオバブの種を200℃で焙煎した研究では、飲料の鉄イオンを還元する能力を測るFRAP試験の値は55分で最大となり、105分では低下しました。一方、総フェノール量の測定値が最大になったのは80分でした。著者らは、成分の放出や加熱で生じる物質の形成と、成分の分解が競合する可能性を挙げています。

消化を模した試験でも、結果は一様ではありませんでした。ナツメヤシの種を調べた研究では、総フェノール量と抗酸化能の測定値が消化中に増え、腸での消化を模した段階で最大となりました。対照的に、アサイーの種の飲料を調べたある研究では、総フェノール量の測定値は消化の進行とともに低下し、腸での消化後には消化前の約24%になりました。別のアサイー研究では、タンニン類やフラボノイド類の測定値が増える一方、抗酸化能は低下していました。

風味の面では、好ましい特徴を持つ飲料を作れることが複数の研究で報告されていました。ただし、安全性は成分量や抗酸化能とは別に評価する必要があります。例えば、焙煎したアボカドの種の飲料では、培養したヒト細胞の生存率が濃度に応じて低下した報告も紹介されています。これは細胞試験の結果であり、飲用時の健康影響を直接示すものではありません。

この報告が示すこと

著者らは、一部の果実の種にはコーヒー代替飲料の原料としての可能性がある一方、焙煎条件は風味、成分の保持、安全性を合わせて考える必要があると結論づけています。ナツメヤシ、バオバブ、アサイーでは飲料を直接調べた研究が比較的多いものの、包括的な安全性や商業化の準備が整ったことを示す証拠にはなっていません。

また、試験管内で測る抗酸化能は、そのまま体内での健康効果を意味しません。消化中に成分が取り出されやすくなることも、腸からの吸収や全身での利用とは別です。測定法や抽出条件も研究ごとに異なるため、報告値だけで種の優劣を決めることはできない、というのがこのレビューの重要な読みどころです。

原著論文の著者・所属:Nataša Nastić(Department of Chemical and Petroleum Engineering, Khalifa University of Science and Technology, Abu Dhabi P.O. Box 127788, United Arab Emirates; Faculty of Technology Novi Sad, University of Novi Sad, 21000 Novi Sad, Serbia; Food Security and Technology Center, Khalifa University of Science and Technology, Abu Dhabi P.O. Box 127788, United Arab Emirates)、Kristian Pastor(Faculty of Technology Novi Sad, University of Novi Sad, 21000 Novi Sad, Serbia)、Fawzi Banat(Department of Chemical and Petroleum Engineering, Khalifa University of Science and Technology, Abu Dhabi P.O. Box 127788, United Arab Emirates; Food Security and Technology Center, Khalifa University of Science and Technology, Abu Dhabi P.O. Box 127788, United Arab Emirates)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Nataša Nastić, Kristian Pastor, Fawzi Banat. Roasted Fruit-Seed Coffee Alternatives: Processing-Induced Phytochemical Changes, Antioxidant Potential, Bioaccessibility, and Safety. Antioxidants(出版社:Multidisciplinary Digital Publishing Institute) 2026-11-06. DOI: 10.3390/antiox15111442. 原著ライセンス:CC BY.