著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Animals
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
家禽の生産では、成長を促す目的での抗生物質の使用が制限されています。そのため、飼料の工夫で鶏の腸の健康を保つ方法への関心が高まっています。その候補の一つがプロバイオティクス(健康に役立つとされる生きた微生物)です。最近は、微生物を培養した「発酵液」にも注目が集まっています。発酵液には生きた菌に加えて、発酵の過程でできる有機酸、小さなペプチド、酵素などの成分も含まれるためです。
研究チームによると、複数の菌種で作った発酵液を黄羽肉用鶏(中国で広く飼育される在来系統の肉用鶏)に与えた研究は、まだ限られていました。そこで本研究は、「815系統」の黄羽肉用鶏を対象に、この発酵液を飼料の4%加えたときの影響を調べました。調べた項目は、枝肉(食肉として処理した体)の特徴、肉質、栄養素の消化率、血液中の免疫関連指標、腸の形態、もも肉のアミノ酸と脂肪酸の組成、盲腸の細菌叢です。
どのように調べたか
発酵液は、乳酸菌の一種であるラクトバチルス・プランタルム、枯草菌、出芽酵母の3種を含む粉末製剤から作りました。この製剤と黒糖、乳清粉末を水に混ぜ、密閉容器で室温のまま48時間発酵させています。試験期間中は、毎日できたての発酵液を使えるよう、仕込みの時期をずらして繰り返し作りました。
試験では、体重がそろった生後4日齢の鶏400羽を雌雄同数で2群に分けました。一方には基本飼料だけを、もう一方には発酵液を4%混ぜた基本飼料を与えました。各群は20羽ずつの10グループで構成されています。飼育は56日齢まで続け、その後に各グループから1羽ずつ選んで枝肉や肉質を測定しました。あわせて糞を使って消化率を調べ、血液、小腸の組織、盲腸の内容物も分析しました。
主な結果
発酵液を与えた群では、43〜56日齢の1日あたり採食量が有意に増えました。枝肉では、もも肉の割合が高く、腹部の脂肪の割合が低くなりました。枝肉全体の割合にも高まる傾向が見られました。
飼料中の栄養素の見かけの消化率も、粗たんぱく質、カルシウム、粗繊維、リンのいずれで高くなりました。小腸では、十二指腸の絨毛(栄養を吸収する突起)が高くなり、陰窩(絨毛の根元のくぼみ)は浅くなりました。絨毛の高さと陰窩の深さの比は、十二指腸、空腸、回腸のすべてで大きくなっています。血液中の免疫関連物質では、IgM(抗体の一種)とインターロイキン2(免疫細胞の働きに関わる物質)の濃度が高くなりました。
もも肉の脂肪酸では、パルミチン酸(C16:0)とミリスチン酸(C14:0)、そして飽和脂肪酸の合計が減りました。一方、多価不飽和脂肪酸の一種であるC20:2は増えました。多価不飽和脂肪酸の合計にも増える傾向が見られました。
盲腸の細菌叢では、菌の多様さを示す指標に両群で差はありませんでした。群集全体の構成にも、分かれる傾向が見られた程度でした。属のレベルでは、発酵液の群でバクテロイデス属、ツリシバクター属、ルミノコッカス属に関連する一部のグループが増えました。逆に、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属などは減りました。増えた菌の一部は、たんぱく質やリンの消化率、十二指腸の絨毛の高さと正の相関を示しました。ただし、これは同時に変化していたという関係で、因果関係を示したものではありません。
研究が示すこと
著者らは、この試験の条件では、発酵液を4%加えることで栄養素の利用と枝肉の特徴が改善し、もも肉の脂肪酸組成も好ましい方向に変わったと結論づけています。これらの変化には、腸の形態の改善と盲腸細菌叢の変化が伴っていました。
一方で、肉の色の変化や脂肪酸組成が変わった仕組みは未解明だと、著者らは述べています。また、試した添加量は4%の1水準だけです。そのため、量による効果の違いや最適な添加量はまだ分かっていません。本研究は、生きた菌と発酵でできた成分をあわせて与える方法が、黄羽肉用鶏の消化や体の組成に関わりうることを示した報告といえます。
原著論文の著者・所属:Haiqing Gan(College of Animal Science and Technology, Hunan Agricultural University, Changsha 410128, China; Yuelushan Laboratory, Changsha 410128, China)、Youping Tan(Tangrenshen Group Co., Zhuzhou 412007, China)、Dan Zhong(College of Animal Science and Technology, Hunan Agricultural University, Changsha 410128, China)、Sirui Li(College of Animal Science and Technology, Hunan Agricultural University, Changsha 410128, China; Yuelushan Laboratory, Changsha 410128, China)、Huange Xie(College of Animal Science and Technology, Hunan Agricultural University, Changsha 410128, China; Yuelushan Laboratory, Changsha 410128, China)、Xingguo Huang(College of Animal Science and Technology, Hunan Agricultural University, Changsha 410128, China; Yuelushan Laboratory, Changsha 410128, China)、Dun Deng(Tangrenshen Group Co., Zhuzhou 412007, China)、Qianglin Liu(College of Animal Science and Technology, Hunan Agricultural University, Changsha 410128, China; Yuelushan Laboratory, Changsha 410128, China)、Qiyu Tian(College of Animal Science and Technology, Hunan Agricultural University, Changsha 410128, China; Yuelushan Laboratory, Changsha 410128, China)、Lingyuan Yang(College of Animal Science and Technology, Hunan Agricultural University, Changsha 410128, China; Yuelushan Laboratory, Changsha 410128, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Haiqing Gan, Youping Tan, Dan Zhong, et al. Dietary Supplementation with Multispecies Probiotic Fermented Broth Improves Nutrient Digestibility and Carcass Traits While Modulating the Cecal Microbiota and Thigh Muscle Fatty Acid Profile in Yellow-Feathered Broilers. Animals 2026-09-03. DOI: 10.3390/ani16172768. 原著ライセンス:CC BY.