この研究は、韓国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Frontiers in Microbiology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

何を明らかにしようとした研究か

農作物の栽培で、微生物を含む資材を土に施す方法が持続的な生産の手段として関心を集めています。しかしブルーベリー栽培では、そうした処理を行ったときに、果実の性質、根のまわりの土壌(根圏)の化学的な状態、そしてそこに住む細菌の集まりが同時にどう変わるのかが、よく分かっていませんでした。

そこで研究チームは、乳酸菌のラクトバチルス・カゼイとラクトバチルス・プランタルム、そしてパン酵母として知られるサッカロミセス・セレビシエの培養液を点滴かん水で与えた区と、与えなかった区を比べ、果実の性質・根圏土壌の化学性・細菌群集の特徴に同時に違いが見られるかを調べたと報告しています。

どのように調べたか

調査は2025年2月15日から6月25日まで、韓国・江原道横城郡にある商業ブルーベリー農園の無加温ビニールハウスで行われました。品種はノーザンハイブッシュブルーベリーの「デューク」で、微生物を与えない対照区(NT)と微生物培養液を与えた処理区(BT)が設けられました。培養液は点滴かん水で複数回に分けて施され、処理期間全体の施用量はカゼイ菌と酵母の混合培養液が514リットル、別に用意したプランタルム菌の培養液が156リットルと記録されています。

調べた項目は、最初に果実がつくのが見えた日と果汁の可溶性固形分(ほぼ糖度に相当し、°Brixという単位で表します)で、これは各区9株を1株ずつ独立に測定しました。さらに収穫時に、果実測定とは別の3株から根にしっかり付いた土を採り、pHや電気伝導度、窒素やリンなどの化学成分を分析しました。同じ土から細菌のDNAを取り出し、16SリボソームRNA遺伝子という細菌の種類を見分ける目印となる領域の全長を読み取って、細菌群集の構成を調べています。加えて、その遺伝子情報からどんな代謝の働きが備わっていそうかを推定する解析も、探索的な位置づけで行われました。

報告された主な結果

果実では、処理区で最初に果実がつくのが対照区より約10.89日早く、可溶性固形分は対照区の11.33±1.00°Brixに対して処理区は15.00±0.71°Brixと高い値が報告されました。一方、株の大きさなど他の生育に関する形質では、目立った違いは見られなかったとしています。

収穫時の根圏土壌では、処理区のほうが電気伝導度、陽イオン交換容量、全窒素、アンモニア態窒素、交換性のカリウム・カルシウム・マグネシウム、有機物のいずれも低い値でした。反対に、有効態リン酸は処理区で高くなっていました。土壌のpH、交換性ナトリウム、塩分、硝酸態窒素には統計的に意味のある差は認められていません。

細菌群集については、Bray–Curtisという指標を使った解析では処理ごとにまとまる傾向がうかがえたものの、PERMANOVAという検定では群集全体の構成に統計的に意味のある差は検出されませんでした(pseudo-F=1.464、R²=0.268、p=0.100)。ただし、処理に反応した細菌配列の一部に絞ると、処理区のほうが種類の数や多様性が高く、分類群や推定された代謝経路にも処理と結びついたパターンが見いだされたと報告されています。

この報告が示していること

研究チームは、微生物培養液の施用が、果実の性質、根圏の養分状態、細菌群集の特徴という三つの側面での違いと同時に見られたと述べています。ただし論文自身が、この設計では各項目のあいだの因果関係は示せないと明記しています。土壌と細菌の調査は収穫時の一時点で行われたため、関係はあくまで「同時に見られた対応」として解釈されました。また、培養液は培地ごと施用され、無菌の培地だけを与える対照区が置かれていないため、生きた微生物による働きと培地に含まれる成分による働きを区別できないという限界も挙げられています。

つまりこの研究は、微生物培養液を与えた栽培で果実・土壌・細菌に同時に違いが現れることを実際の農園で示した一方、その違いを生んだ仕組みは未解明のまま残したという報告になっています。

著者:Tran Yen Linh Le(Department of Agricultural Convergence, Sangji University)、Junkyung Lee(Department of Applied Plant Science, Sangji University)、Haneul Kim(Department of Agricultural Convergence, Sangji University)、Hyun-Sik Choi(Department of Scientific Farming Support Team Leader, Hoengseong Agricultural Technology Extension Center)、Sun-Goo Hwang(Department of Smart Life Science, Sangji University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Tran Yen Linh Le, Junkyung Lee, Haneul Kim, et al. Effects of a microbial treatment of Lactobacillus casei, Saccharomyces cerevisiae, and Lactobacillus plantarum on blueberry fruit quality, rhizosphere soil properties, and bacterial communities. Frontiers in Microbiology 2026-09-25. DOI: 10.3389/fmicb.2026.1945124. 原著ライセンス:CC BY.