亜鉛が多い食品を100gあたりで並べると、上位6食品のうち4つをかき くん製油漬缶詰かき 養殖 水煮かき 養殖 生かき 養殖 フライが占めます。「亜鉛といえばかき」というイメージ通りの結果ですが、面白いのはここからです。同じかきなのに、亜鉛量は25mgから12mgまで倍以上の開きがあります。加工の仕方でここまで数字が変わる食品も珍しく、その中身を見ていくと、亜鉛だけでなく一緒に含まれる脂肪酸の顔ぶれまで別物になっていることが分かります。

そもそも亜鉛とは、体内で多くの酵素の材料になっているミネラルです。味覚を正常に保つために必要な栄養素であり、たんぱく質や核酸の代謝にも関わることで健康の維持に役立つとされています。食事摂取基準2025では、30〜49歳女性の推奨量は8mg/日です。※本記事の推奨量・耐容上限量の比較は、特記なき場合すべて30〜49歳女性の値(食事摂取基準)を基準としています。

上位6食品を読み解く

1位はくん製油漬、亜鉛は推奨量の3倍以上

かき くん製油漬缶詰は亜鉛25mg、推奨量8mgの312%という突出した数字で1位に立ちます。缶詰をまるごと大量に食べる想定でなければ、通常の一食量で心配する数値ではないでしょう。ここで見逃せないのが脂肪酸の中身です。個別脂肪酸を多い順に並べるとリノール酸9500mgが断トツで、EPA(イコサペンタエン酸)540mgを大きく上回ります。油漬けという加工が、かき本来の脂肪酸バランスを塗り替えているのです。

2位の水煮は、脂肪酸の主役が逆転

かき 養殖 水煮は亜鉛18mg(225%)。ここでは脂肪酸の顔ぶれが一変し、EPA440mgが個別脂肪酸のトップに立ち、DHA(ドコサヘキサエン酸)350mgが続きます。くん製油漬で主役だったリノール酸はわずか38mgしかなく、順位は完全に入れ替わっています。同じ「かき」という食材でも、油に漬けるか水煮にするかで、一緒に含まれる脂肪酸の主役がまるごと入れ替わる、分かりやすい例です。

3位は貝ではなく小麦の胚芽

ここで一度、かきの流れが途切れます。3位は小麦はいがで、亜鉛16mg(200%)。小麦の胚芽部分だけを集めたもので、ビタミンB1が1.82mgと推奨量0.9mgの202%、葉酸も390µgと推奨量240µgの163%と、糖質代謝やエネルギー産生を助けるビタミンB群も豊富です。かき以外で亜鉛の上位に食い込む数少ない植物性食品といえます。

4位は生のかき、100gの数字だけで測らない

かき 養殖 生は亜鉛14mg(175%)。ただしこれは100gあたりの数値です。生のかきはむき身1個の重さがごく軽く、1個あたりで実際に摂れる亜鉛は100gの数字よりずっと少なくなります。「かき1個で推奨量を超える」と考えるのは早計で、100gあたりの値はあくまで食品どうしを同じ土俵で比べるための基準として押さえておきたいところです。

5位タイはフライとかつおの塩辛

5位タイのかき 養殖 フライは亜鉛12mg(150%)。脂肪酸は揚げ油由来のオレイン酸4900mgが最も多く、リノール酸1700mg、α-リノレン酸800mgが続きます。くん製油漬(リノール酸主役)とも水煮(EPA主役)とも違う組み合わせで、揚げ油の脂肪酸が加わることで、かきはここでも三たび違う顔を見せます。同じく5位タイの加工品 塩辛も亜鉛12mgですが、こちらはナトリウム5000mg・食塩相当量12.7gと塩分が非常に高く、少量を味わう食品と言えるでしょう。

形態で選ぶ、という視点

上位6食品を並べてみると、亜鉛の多さで知られるかきが、くん製油漬(25mg)、水煮(18mg)、生(14mg)、フライ(12mg)と、加工の段階が進むごとに数字を落としていく様子が浮かび上がります。同時に、一緒に摂れる脂肪酸の主役もリノール酸・EPA・オレイン酸の間を行き来し、同じ「かき」という一語ではくくれないほど中身が変わっています。これはあくまで100gあたりで比較した場合の傾向であり、くん製油漬をその分量まるごと食べる想定ではない点に注意しつつ、一緒に摂れる脂肪酸の違いも踏まえて、目的に応じてどの形態のかきを選ぶかを考える材料にはなりそうです。

※特定の食品の効果・効能を示すものではありません。

【摂取量の目安】加工品 塩辛は、ビタミンDが100gで耐容上限量100μgの約1.2倍、大さじ1杯(約18g)で約0.2倍にあたります。 ビタミンA・Dは脂溶性で体に蓄積しやすいため、多量・連日の摂取やサプリメント併用、妊娠中は過剰摂取に注意が必要とされます(通常の食事で時折とる分には問題になりにくいとされます)。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準