とんかつを豚のどの部位で作るかより、そもそも油に何を使うかで、含まれる脂肪酸の桁が変わります。同じ「揚げ物の脂」でも、油そのものと肉の脂身とでは中身がまったく別物なのです。脂質の多い順に6品を並べて、中身の内訳まで見てみます。

脂質の多い順に並べた6品(可食部100gあたり)。n-6系=オメガ6、n-3系=オメガ3。(推定値)は日本食品標準成分表の推定値です。
食品脂質リノール酸n-6系n-3系
調合油100g34000mg34.13g6.81g
発酵バター(有塩)80g1700mg1.87g0.29g
アーモンド(いり・無塩)54.1g13000mg(推定値)12.64g(推定値)0.01g(推定値)
和牛ばら肉(脂身つき・生)50g1000mg1.07g0.05g
まいわし(生)9.2g92mg0.28g2.1g
豚もも肉(皮下脂肪なし・生)6g560mg0.65g0.03g

脂質の列は、上から順にきれいに減っていきます。リノール酸とn-6系(オメガ6)の列も、だいたい同じ順です。ところがいちばん右のn-3系(オメガ3)だけ、並びが崩れているのに気づきます。この記事で見たいのは、その崩れかたです。

リノール酸の桁が違う

体内で合成できず食事から摂る必要があるn-6系脂肪酸の一つがリノール酸です。調合油の34000mgに対して、まいわしは92mg。実に370倍、和牛ばらと比べても34倍の開きがあります。リノール酸は植物油や種実に多いとされ、表の並びもそのとおりになりました。分かれ道は脂の量ではなく、「油か、肉か」という中身の由来のほうにあります。n-6系脂肪酸の目安量(成人30〜49歳)は男性11g・女性9gです。

油の中でも性格が違う

油脂類どうしでも中身は一様ではありません。調合油はα‐リノレン酸も6800mgと多く、n-3系・n-6系のどちらでも多価不飽和脂肪酸が豊富です。一方の発酵バターは、脂肪酸の内訳を見ると酪酸2900mgが最も多くなります。同じ油脂類という括りでも、植物由来と乳由来では顔ぶれが違うわけです。なお発酵バターはレチノール(ビタミンA)を760µg含みます。ビタミンAの推奨量(成人30〜49歳)は男性900µgRAE・女性700µgRAEです。

ここでまいわしが割り込んでくる

崩れていたのは、まいわしの行でした。脂質は9.2gと6品で5番目、リノール酸に至っては最下位に近いのに、n-3系多価不飽和脂肪酸だけは2.1gで、調合油に次ぐ2番手に上がってきます。ほかの4品が0.01gから0.29gの範囲に固まっているなかで、まいわしだけが桁を一つ上げてくる格好です。

内訳を見るとドコサヘキサエン酸(DHA)870mg、イコサペンタエン酸(EPA)780mgが中心で、これらがn-3系としてまとめて計上されています。脂質の量で食品を並べているかぎり、この行は下のほうに沈んだままです。なおまいわしには廃棄率60%が示されており、1尾あたりの購入形態の目安は約120gですが、これは頭や骨などを含む重さです。可食部としての栄養は、100gあたりの数値で捉えるのが実際的です。

毎日の食卓での使い分け

n-6系を控えたいなら、調合油をアーモンドのような種実に置き換えても事情は変わりません。6品のなかでリノール酸が少ないのは、むしろ肉と魚のほうでした。逆にn-3系は、調合油とまいわしの二枚看板です。つまり揚げ物の油を何にするかは、n-6系とn-3系の両方を動かす選択になります。調合油は小さじ1で約4.5g、大さじ1で約13.5gが目安量です。そこに主菜としてまいわしを一皿足せば、n-3系の側だけがさらに伸びます。

まとめ

揚げ物の脂は「量」ではなく「油か、肉か」という種類で桁が変わります。脂質の多い順に並べた表で、n-3系の列だけが順番を守らなかった——それがこの6品から読み取れたことでした。とんかつの隣にいわしの一皿を置く献立には、味の好み以上の理由があるのかもしれません。次に脂質のデータを見るときは、量の欄だけでなく、その中身がどの脂肪酸で占められているかにも目を向けてみてください。

※特定の食品の効果を示すものではありません。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準e-ヘルスネット「脂肪 / 脂質」(厚生労働省)e-ヘルスネット「脂質異常症の食事」(厚生労働省)e-ヘルスネット「脂質異常症」(厚生労働省)