「発酵バターは風味が違うから」「有塩か食塩不使用かで料理の使い分けを」——バター選びにはそんな基準があります。ところが、酪酸という成分の量に注目すると、この選び方はほとんど意味を持ちません。
酪酸は、乳脂肪にもともと含まれている短鎖脂肪酸の一つで、なかでもバター類に多く含まれています。同じ酪酸は体内でも作られ、食物繊維が腸内細菌に利用されると酢酸・酪酸・プロピオン酸などの短鎖脂肪酸や乳酸が産生され、大腸内を酸性に保つことで善玉菌の増殖に適した環境をつくるとともに、悪玉菌の増殖を抑えるとされています。ただしこれは腸内で作られる分のはたらきで、食品から摂る酪酸の量とは分けて考えるものです。
バター3種、わずかな差でひしめく上位
100gあたりの酪酸量を見ると、上位5食品のうち3つまでがバター類で占められています。1位は発酵バター(有塩バター)で2900mg。2位タイに無発酵バター(食塩不使用バター)と無発酵バター(有塩バター)が並び、どちらも2700mgで一致します。
1位と2位の差はわずか200mg、2位タイ同士の差は0mgです。バター類は、原料クリームを乳酸菌で発酵させた発酵バターと、発酵させない無発酵バターに大別されます。さらに食塩を添加したものを有塩バター、添加しないものを食塩不使用バターと呼びます。発酵バターには独特の風味があり、食塩不使用バターはおもに調理や製菓・製パンに使われます。製法も塩分も違う3種類ですが、酪酸の量だけを見ればほぼ横並びです。風味や塩味の好みでバターを選んでも、酪酸の摂取量はほとんど変わりません。
発酵バターの目安量は大さじ1杯で約12gです。この量では酪酸は約348mg含まれています。同じく大さじ1杯を使う無発酵バター(食塩不使用・有塩とも)では、酪酸は約324mgです。バターは脂質もエネルギーも高く、一度に多くを使う食品ではありません。
クリーム・ホイップクリームでは半分以下に
4位はクリーム(乳脂肪)で1400mgです。2位タイの2700mgから1300mg下がり、バター3種とは一段違う水準になります。5位のホイップクリーム(乳脂肪)は1300mg(推定値)で、クリームからさらに100mg下がります。1位の発酵バターと比べると、その差は1600mgに達します。
クリームは、生乳または牛乳から乳脂肪以外の成分を除去した製品です。ホイップクリームは、このクリームにグラニュー糖を添加して十分に泡立てたものです。クリームの目安量は小さじ1杯で約5.3g、この量では酪酸は約74.2mgです。ホイップクリームは大さじ1杯で約15gで、酪酸は約195mg摂れる計算になります。
| 食品 | 酪酸 |
|---|---|
| 発酵バター(有塩バター) | 2900mg |
| 無発酵バター(食塩不使用バター) | 2700mg |
| 無発酵バター(有塩バター) | 2700mg |
| クリーム(乳脂肪) | 1400mg |
| ホイップクリーム(乳脂肪) | 1300mg(推定値) |
この並びを貫く共通項は「発酵か無発酵か」でも「有塩か食塩不使用か」でもなく、バターかクリームかという乳脂肪の濃さそのものです。製法や塩分は酪酸量をほとんど左右せず、乳脂肪をどれだけ凝縮させたかという一点が量を分けています。
ふだんの選び方に落とし込む
ここまでの数字が示すのは、バターを選ぶときに酪酸を気にする必要はない、ということです。発酵バターか無発酵バターか、有塩か食塩不使用かは、パンに塗るなら風味と塩味で、お菓子作りなら食塩不使用を、というように料理の用途と好みで決めて構いません。どれを選んでも大さじ1杯あたりの酪酸は約348mgと約324mgで、ほとんど変わらないからです。
違いが出るのは、バターを使うかクリームを使うかという場面です。100gあたりで見れば、バター3種はクリーム・ホイップクリームのおよそ2倍の酪酸を含みます。ただしバターもクリームも脂質とエネルギーの高い食品ですから、量を増やして酪酸を狙うのではなく、いつもの料理やお菓子で使う分に自然と含まれている成分として捉えるのがよいでしょう。
※本記事は特定の食品の効果・効能を示すものではありません。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。
栄養素のはたらきの記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 e-ヘルスネット