ビタミンEの一種であるγ-トコフェロールが多い食品を上から並べると、5品ともほとんどが油脂類でした。ここで並べているのはγ-トコフェロールの順位で、食事摂取基準がビタミンEとして基準値を定めているα-トコフェロールの順位とは顔ぶれが異なります。

ビタミンEは、体内で脂質が酸化して劣化するのを防ぎ、細胞の壁や膜の働きを保つのに関わる栄養素です。γ-トコフェロールはその仲間の一つで、日本人の食事摂取基準に推奨量は定められていません。

では、上位に並ぶ油ならどれを選んでも似たようなものが摂れるのか。脂肪酸の中身まで追いかけると、この5品は途中できれいに二つに割れます。

4品は「リノール酸の油」だった

1位は大豆油で、γ-トコフェロールは100gあたり81mg、エネルギーは885kcalです。この油に多いのはリノール酸の50000mgで、α‐リノレン酸の6100mgを大きく上回ります。リノール酸は体内で合成できないn-6系の必須脂肪酸です。

2位のとうもろこし油(70mg・884kcal)はさらに偏っていて、リノール酸51000mgに対しα‐リノレン酸はわずか760mg。4位の調合油(56mg・886kcal)もリノール酸34000mgがα‐リノレン酸6800mgを上回ります。5位のラー油(48mg・887kcal)はごま油にとうがらしなどを加えた調味料ですが、リノール酸43000mg(推定値)対α‐リノレン酸400mg(推定値)と、やはり同じ側に立っています。

4品を貫いているのは、n-6系のリノール酸を主役に持つという一点です。

えごま油だけが、逆を向いている

その並びが崩れるのが3位でした。えごま油(59mg・897kcal)はα‐リノレン酸が58000mg、リノール酸は12000mg。主役の脂肪酸が、他の4品とそっくり入れ替わっています。α‐リノレン酸は体内で合成できないn-3系の必須脂肪酸で、えごま油・亜麻仁油・魚油などがこの系統の多価不飽和脂肪酸を含む油として知られています。

γ-トコフェロールの量だけを見れば、5品は48mgから81mgの幅に収まる横並びの「上位グループ」です。ところが運んでいる脂肪酸は、n-6系が4品にn-3系が1品でした。同じ棚に並ぶ数字の裏で、性格は正反対に分かれていたことになります。

同じ数字でも、運んでいるものが違う

この分かれ目は、油の選び方にそのまま効いてきます。揚げ物や炒め物には大豆油やとうもろこし油、調合油といったリノール酸系を使い、ドレッシングなど火を通さない場面ではえごま油を少量足します。そうすれば、n-6系とn-3系の両方の必須脂肪酸に触れる機会が生まれます。ラー油のように小さじ1杯(約4g)で使う調味料は、油そのものを飲むように摂ることはまずないので、風味づけと考えておけば十分です。

棚のラベルを眺めるとき、「γ-トコフェロールが多い油」というひとくくりの奥に、正反対の二派が隠れています。それを知っているだけで、次に手に取る一本の選び方は変わってきます。

※特定の食品の効果を示すものではありません。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準文部科学省 食品成分データベース