グルタミン酸と聞いて、多くの人が思い浮かべるのはだしや昆布のうま味でしょう。実はこの成分、体の中では酸性の性質を持つアミノ酸の一種で、エネルギーを取り出す仕組み(クエン酸回路)に入って活動のもとになったり、体内で生じるアンモニアを取り込んで固定したり、グルタチオンという物質の材料になったりすることが知られています。さらに脳の神経伝達物質としても働くとされ、体づくりだけでなく体調を支える裏方でもあります。この成分がとりわけ多い食品トップ5を見ると、小麦・牛乳・大豆という馴染み深い名前の裏に、意外な素顔が隠れています。

トップ5に並ぶのは「精製たんぱく」ばかり

100gあたりのグルタミン酸量で見ると、第1位は小麦たんぱく 粉末状で29000mg。小麦粉ではなく、小麦のたんぱく質だけを取り出して粉末にした加工素材です。第3位のカゼイン(19000mg)は牛乳のたんぱく質を、第4位タイの分離大豆たんぱく 塩分調整タイプ塩分無調整タイプ(ともに17000mg・塩分調整タイプは推定値)は大豆のたんぱく質を、それぞれ純度高く分離した素材です。つまり上位のほとんどは「食品」というより「たんぱく質の抽出物」であり、たんぱく質を凝縮すればするほどグルタミン酸も濃くなる、という構図が透けて見えます。

唯一の異端児、顆粒和風だし

その中で第2位の顆粒和風だし(25000mg・推定値)だけが毛色が違います。精製たんぱく素材ではなく、私たちが毎日の味噌汁やおかずに実際にひとさじ加える完成品だからです。脂質はほぼゼロで、ナトリウムも16000mgと多く含み、まさに「うま味と塩気を運ぶための食品」という顔つきをしています。トップ5の中で唯一、ひとさじ単位で日々の料理に加える完成品なのもこの食品だけで、数値上の主役は精製たんぱく素材でも、食卓で実際に使われる主役はだしだと分かります。

2位以下の顔ぶれに素材ごとの個性が出る

グルタミン酸に次いで多いアミノ酸を見比べると、精製たんぱく素材ならではの濃縮の中身が見えてきます。小麦たんぱく粉末とカゼインは、どちらも2位がプロリンです。プロリンは体内でコラーゲンを合成するのに必要とされるアミノ酸で、小麦たんぱく粉末では12000mg、カゼインでは10000mgと、いずれもグルタミン酸に次ぐ量を占めています。一方、分離大豆たんぱくの2位はアスパラギン酸(10000mg・推定値)で、アルギニンも6900mg(推定値)と多く含みます。アルギニンは尿素サイクルに関わるアミノ酸で、成長ホルモンの分泌を促すとされることでも知られています。同じ「グルタミン酸が多い」という共通点を持ちながら、2番手以降の顔ぶれは由来する原料ごとに分かれているのが興味深いところです。顆粒和風だしだけは2位がグリシン(720mg・推定値)と、量そのものが他の4品よりひと桁小さく、うま味の主役がグルタミン酸に極端に偏った構成であることが分かります。

数値の主役と食卓の主役は違う

グルタミン酸の含有量ランキングを追いかけると、上位は小麦・牛乳・大豆から作られた「たんぱく質の精製素材」で占められ、私たちが普段の食事でそのまま口にする完成品は顆粒和風だしただ一つでした。精製たんぱく素材は主に加工食品の原料として使われるもので、日常の食卓でグルタミン酸のうま味を直接味わう機会は、実はこのだしのひとさじに集約されているのかもしれません。数字の上での「多さ」と、実際に食卓で「使う量」は別物でした。今日の味噌汁に落とすそのひとさじが、成分表では小麦たんぱくやカゼインと肩を並べている。そう思うと、いつもの一杯の見え方が少し変わります。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらきの記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省