アミノ酸の一種「プロリン」について、日本食品標準成分表(八訂)のデータを上位から見ていくと、あることに気づきます。並んでいるのは日常の食卓に「そのまま」乗る食品ではなく、加工・抽出された産業的な素材が中心なのです。

プロリンとは、たんぱく質を構成するアミノ酸のひとつです。体内では別のアミノ酸であるグルタミン酸から合成されることが知られており、食品安全委員会の添加物評価書(L-グルタミン酸)にもその代謝経路が記されています。日本人の食事摂取基準には、プロリンに関する推奨量や目安量といった定量的な基準は設定されていません。

では、プロリンを多く含む食品とは何でしょうか。データを見ると、その顔ぶれには独特の傾向があります。

上位を占めるのは「素材」たち

堂々の第1位は、豚ゼラチンで、可食部100gあたりプロリン13000mgを含みます。ゼラチンは動物の皮や骨に含まれるコラーゲンから作られる素材で、ゼリーや洋菓子のとろみ付けに使われます。しかし実際に使う量は大さじ1杯(粉末ゼラチンの計量目安として一般に約9g)や小さじ1杯(約3g)程度。大さじ1杯換算では約1170mgとなり、100g基準の数字とは大きく開きます。そもそも単体でそのまま食べるものではなく、あくまで調理素材です。

第2位の粉末状の小麦たんぱくは100gあたり12000mgで、製パンや食品加工の現場で使われる業務用素材です。グルタミン酸も100gあたり29000mgと突出していますが、こちらも家庭の食卓で単品を意識して食べるものではありません。

第3位のカゼインは100gあたり10000mgです。カゼインとは牛乳に含まれるたんぱく質の一種で、牛乳のたんぱく質の約80%を占める成分です。ゆっくり消化・吸収される性質があり、その高いたんぱく質密度からプロテイン製品の原料としても利用されています。ただしこれも単体で食べる機会は一般家庭ではほぼありません。なお、カゼインは牛乳アレルギーの主要なアレルゲンです。プロテイン製品などにカゼインが含まれている場合がありますので、牛乳・乳製品アレルギーのある方は製品の原材料表示を必ずご確認ください。

チーズと大豆たんぱくは?

第4位には、上位3品(ゼラチン・小麦たんぱく・カゼイン)と比べると、やや馴染み深いパルメザンチーズが登場します。プロリンは推定値で(5300)mgと記されており、実測値ではなく計算・推定による値です。チーズは牛乳を濃縮して作るため、少量でもカルシウムを多く含む点が特徴で、100gあたり約1300mgを含み、女性30〜49歳の推奨量650mg/日の約2倍に相当します(この割合は推奨量に対するものです。通常の使用量であれば過剰になる心配は低いですが、サプリメント等との重複には注意が必要です)。ただしパルメザンチーズの実際の使い方は大さじ1杯(約6g)や小さじ1杯(約2g)程度でのふりかけが現実的であり、プロリン目的で食べる食品とは言いがたいです。また、パルメザンチーズを含むナチュラルチーズは非加熱・非殺菌のタイプがあり、リステリア菌による食中毒リスクが指摘されています。妊婦・高齢者・免疫機能が低下している方は摂取にご注意ください。

第5位は同率で、分離大豆たんぱく(塩分調整タイプ)分離大豆たんぱく(塩分無調整タイプ)の2種がともに(4700)mgとなっています(なお、成分表では塩分調整タイプが括弧付き推定値、塩分無調整タイプが括弧なし実測値として収載されていますが、本文ではいずれも推定値を含む値として統一表記しています)。分離大豆たんぱくとは、大豆からたんぱく質を高純度で取り出した粉末状の素材で、食肉加工品や植物性プロテイン製品に配合されています。大豆そのものは「畑の肉」と呼ばれるほど栄養豊富ですが、分離大豆たんぱくはその抽出物であり、やはり単独で食卓に並ぶ食品ではありません。

「意識して増やす」という発想が成り立ちにくい理由

上位5カテゴリ・6品(ゼラチン・粉末状の小麦たんぱく・カゼイン・パルメザンチーズ各1品に、分離大豆たんぱく2品を1カテゴリと数えた場合)を並べ直してみると、豚ゼラチン・粉末状の小麦たんぱく・カゼイン・分離大豆たんぱく2種・パルメザンチーズという顔ぶれです。いずれも「プロリンを摂ろう」と手を伸ばせる食品ではなく、加工食品や料理の材料として知らず知らずのうちに口にしている素材です。

そもそも、プロリンには日本人の食事摂取基準に定量的な目標値が設定されていません。「これだけ摂りましょう」という指標がないということは、食事全体でたんぱく質をバランスよく摂っていれば、プロリンも自然と補われる成分と考えられています。

データが正直に示しているのは、「プロリンを食事で意識して増やす」という発想がそもそも成り立ちにくい、という事実です。豆腐・納豆・肉・魚・乳製品といった普段のたんぱく源を偏らずに食べることが、結果的にプロリンを含む多様なアミノ酸を無理なく摂ることにつながります。

参考:日本食品標準成分表2020年版(八訂)/日本人の食事摂取基準/食品安全委員会 添加物評価書 L-グルタミン酸(プロリンの合成経路〔グルタミン酸からの変換〕に関する記述の参照元)

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。