著者の所属・活動拠点の国は、イタリアです。
掲載誌:Animals
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
食品として流通しなかった食品を鶏の飼料に
家禽の飼料にはトウモロコシや大豆が多く使われており、その生産は土地や水、エネルギーに大きな負担をかけています。そこで、本来捨てられてしまう資源を活用する循環型経済の考え方に沿った代替飼料への関心が高まっています。
研究チームが注目したのは「元食品(FFPs)」と呼ばれる素材です。人が食べるために食品の基準に沿って製造されたものの、形や色、表示・包装の不備、製造の過剰、物流上の問題などで食品市場に出せなくなった製品を指します。主な例は、パン、パスタ、ビスケット、朝食用シリアル、ケーキ、スナック菓子など、製パン・製菓分野で生じるものです。消化しやすい炭水化物を多く含み、エネルギー価の高い飼料原料として位置づけられています。
著者らによると、豚や肉用鶏ではすでに研究が進んでいる一方、卵を産む採卵鶏での知見は限られており、特に卵の品質や味・食感への影響については結果が一致していませんでした。そこで本研究は、元食品を段階的に多く含む飼料を与えた鶏の卵について、物理的な性質、成分、官能特性(人が見て、食べて感じる特徴)を調べることを目的としました。
3種類の飼料で鶏を飼育し、卵を多角的に比較
試験には褐色卵を産む品種ローマン・ブラウンの雌鶏180羽が使われました。鶏は60羽ずつ3群に分けられ、1群あたり12羽ずつ5つのケージで飼育されました。21〜35週齢の期間、通常の採卵鶏用飼料(対照群)、その飼料に元食品を20%含めたもの、40%含めたものの3種類が与えられました。
使われた元食品は市販品で、パン類の副産物、乾燥パスタ、チョコレート、パフ状のシリアルで構成されていました。3種類の飼料はいずれもエネルギーとたんぱく質の量がそろうよう設計されています。論文の考察では、元食品がトウモロコシの一部を置き換える形で配合されたと説明されています。
31〜33週齢の時期に3週連続で卵を集め、大きさ、重さ、殻の厚さ、卵黄と卵白の重さ、殻と卵黄の色などを測定しました。色は測色計で「明るさ」「赤み」「黄色み」を数値化したほか、色見本を使った目視でも評価しました。さらに、可食部の水分を除いた固形分、たんぱく質、脂質、灰分(ミネラル分)、コレステロール量を分析しました。
官能評価では、訓練を受けた10人の評価者がゆで卵を試食し、卵黄の色や硬さ、香り、甘みや塩味、風味、口の中での食感など14項目の強さを0から10の尺度で採点しました。
違いが出たのは卵黄の色と卵白の硬さ
卵の長さや直径、形、重さ、殻の厚さや重さ、卵黄や卵白の重さとその比率には、飼料による有意な差は見られませんでした。殻の色にも違いはありませんでした。
違いが報告されたのは卵黄の色です。測色計による測定では、元食品を与えた2つの群の卵黄は対照群に比べて赤みが強く、黄色みが弱くなりました。一方、色見本を使った目視評価では群の間に有意な差はありませんでした。
成分分析では、固形分、たんぱく質、脂質、灰分、コレステロールのいずれにも群間の差は見られず、殻の灰分も同様でした。
官能評価では、香り、味、風味を含むほとんどの項目が群の間で同程度でした。差が出たのは卵黄の色と卵白の硬さの2項目です。評価者は元食品40%群のゆで卵の卵黄の色を他の群より薄いと感じ、卵白の硬さは対照群の卵が元食品を与えた2つの群より高く評価されました。
色の違いは飼料の色素量を反映、品質低下ではないと著者らは説明
著者らは、卵黄の黄色みが弱まった理由として、黄色の色素であるキサントフィルを多く含むトウモロコシを元食品で一部置き換えたことで、飼料から摂る色素が減った可能性を挙げています。飼料メーカーの計算値でも、飼料中のキサントフィル量は元食品の割合が増えるほど低くなっていました。そのうえで論文は、卵黄の色は卵の栄養価とは関係がなく、この結果を品質の低下と解釈すべきではないと述べています。卵白の硬さの違いについては、卵白たんぱく質の構造などが関わる可能性に触れつつも、本研究では関連する要因を調べておらず、今後の検討課題としています。
研究チームは、元食品を飼料に加えても卵の品質の変化は限られ、卵黄の色と卵白の硬さに一部の違いが見られたにとどまったとまとめています。そして、この結果を、品質に悪影響を与えずに元食品を採卵鶏の代替飼料として使える可能性を示す予備的な証拠と位置づけています。産卵期全体や商業的な生産条件での影響は、まだ検証が必要だとしています。
原著論文の著者・所属:Luisa Zaniboni(Department of Veterinary Medicine and Animal Science, Università Degli Studi di Milano, Via Dell’Università 6, 26900 Lodi, Italy)、Niko Gioacchino Zeni(Department of Veterinary Medicine and Animal Science, Università Degli Studi di Milano, Via Dell’Università 6, 26900 Lodi, Italy)、Cristina Tognoli(Department of Veterinary Medicine and Animal Science, Università Degli Studi di Milano, Via Dell’Università 6, 26900 Lodi, Italy)、Sabrina Ratti(Independent Researcher, 20100 Milano, Italy)、Edda Mainardi(Department of Veterinary Medicine and Animal Science, Università Degli Studi di Milano, Via Dell’Università 6, 26900 Lodi, Italy)、Raffaella Rossi(Department of Veterinary Medicine and Animal Science, Università Degli Studi di Milano, Via Dell’Università 6, 26900 Lodi, Italy)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Luisa Zaniboni, Niko Gioacchino Zeni, Cristina Tognoli, et al. Former Foodstuff-Based Diets on the Quality and Sensory Properties of Eggs from Laying Hens. Animals 2026-10-13. DOI: 10.3390/ani16203220. 原著ライセンス:CC BY.