日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。
掲載誌:Scientific Reports
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
葉に直接養分を吹きかける「葉面散布」は、作物の生育や収量を高める方法として広く使われています。根から吸わせる肥料は流れ出たり、根の周りで動きにくかったりして十分に届かないことがあるため、葉から素早く吸収させる手段として注目されてきました。ただし、スイカでは葉面散布が植物の働きにどう作用するのか、また果実が割れる「裂果」のような不都合を伴わないのかは、よく分かっていませんでした。
裂果は果物や果菜類で品質や収量を損なう問題として知られています。著者らは、日本の温室で養液栽培したスイカを使い、葉面散布が茎葉の生育、光合成の働き、果実の発育、裂果の発生、収量にどう影響するかを総合的に調べました。
何を比べたか
実験には品種「ひとりじめ7」を用い、2025年8月から10月にかけて温室で栽培しました。根には標準的な養液を点滴で与えたうえで、葉面散布の条件を4通りに分けました。散布しない対照区(T0)、カルシウム・亜鉛・ホウ素を散布する区(T1)、カルシウムに鉄やマンガンなどの微量要素一式を加えて散布する区(T2)、カルシウムを含まず微量要素だけを散布する区(T3)です。微量要素とは、植物が少量だけ必要とする亜鉛、ホウ素、鉄、マンガン、モリブデン、銅などの養分を指します。
各区6株を育て、植え付け後20日目から10日おきに計4回散布しました。草丈や葉面積、株の重さ、葉の緑の濃さを示す葉緑素量の指標、光合成の効率、果実の直径の推移、裂果の数、収量、糖度や酸度などを測定しました。さらに、割れた果実と割れていない果実で、果肉と果皮に含まれるミネラルの濃度を比べました。
主な結果
葉面散布は株の生育や生理に影響を与え、特に微量要素だけを散布したT3で効果がはっきり表れました。対照区と比べてT3では、葉面積が4.7%、茎の太さが4%、草丈が12%、株の重さが29%、葉緑素量が16.3%増えました。また、光のエネルギーを化学エネルギーに変える仕組みの一つである「光化学系II」の効率も、生育初期の葉で17.4%高まったと報告されています。
一方でT3では、果実が発育初期に急速に大きくなり、まだ熟していない段階での裂果が増えました。収穫時点の裂果の割合は、対照区の13.6%に対し、T3では45.4%に達しました。果実の生長の速さと裂果の発生には、相関係数0.70というはっきりした正の関係が見られました。
割れた果実と割れていない果実の間で、果肉や果皮のミネラル濃度に有意な差はなかったとされています。この結果から著者らは、裂果の主な原因は養分の偏りというより、果実の生長の速さにあると解釈しています。
収量では、カルシウムと微量要素を組み合わせたT2が最も高く、総収量は対照区より36.7%増えました。これに対し、T1とT3では総収量が対照区より減少しました。糖度、酸度、果汁のpHといった果実の品質には、どの処理でも有意な違いは見られませんでした。
研究が示すこと
この研究は、葉面散布がスイカの生育や光合成を高め、収量を伸ばす可能性を持つ一方で、果実の初期の生長を促しすぎると割れやすさが増すという両面を示しました。著者らは、生育を促す効果と果実の割れにくさのバランスを考えた養分管理が必要だと結論づけています。
原著論文の著者・所属:Md Mukhtar Hossain(Department of Crop Science and Technology, Faculty of Agriculture, Rajshahi University, Rajshahi, 6205, Bangladesh)、Teshima Ayane(Faculty of Agriculture, Saga University, 1 Honjo-machi, 840-8502, Saga, Japan)、Yuki Shibasaki(Faculty of Agriculture, Saga University, 1 Honjo-machi, 840-8502, Saga, Japan)、Fumiyuki Goto(Faculty of Agriculture, Saga University, 1 Honjo-machi, 840-8502, Saga, Japan)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Md Mukhtar Hossain, Teshima Ayane, Yuki Shibasaki, et al. Rapid fruit growth induced by foliar mineral nutrition increases cracking risk in greenhouse grown watermelon (Citrullus lanatus). Scientific Reports 2026-09-02. DOI: 10.1038/s41598-026-69283-y. 原著ライセンス:CC BY.