この研究は、中国、アメリカの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Molecules
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
東アジアで長く使われてきた植物を総点検
スイカズラ(学名 Lonicera japonica、中国名「金銀花」)は、中国・日本・韓国などで何世紀にもわたって利用されてきた食用にもなる薬用植物です。伝統中国医学では上等な生薬とされ、乾燥したつぼみや咲き始めの花、茎が主に使われてきました。論文によると、炎症性の不調やかぜに伴う症状に用いられる中国の特許医薬品の7割以上にスイカズラの抽出物が含まれ、乾燥した花はハーブティーとしても広く飲まれ、機能性飲料などの食品にも使われるようになっています。
この論文は新しい実験の報告ではなく、これまでの研究を整理した総説です。著者らは、PubMedやGoogle Scholar、SciFinderなどのデータベースで2000年から2026年までの文献を検索しました。「Lonicera japonica」というキーワードだけで1万5000件を超える結果が得られ、そこから含まれる成分、生物学的な働き、食品や飲料への応用などに関する語で絞り込みました。そのうえで、分布や栽培、品質評価、品種の見分け方、有効成分、健康に関わる働きとその仕組みを幅広くまとめ、今後さらに調べるべき科学的な課題も示しています。
育つ場所や部位、時期で変わる成分
著者らがまとめた研究からは、スイカズラの成分が一定ではないことが見えてきます。栽培されたものは野生のものに比べて株が直立しやすく、花が多く、つぼみが長い一方、野生のものはうどんこ病に強いと報告されています。産地や光の条件は香りや有効成分の蓄積に大きく影響し、染色体の組が通常の2倍ある「四倍体」の株は、通常の株より成長量が多く、フェノール酸類やフラボノイドを多く含み、塩分にも強いとされます。
主な成分としては、クロロゲン酸をはじめとする有機酸、精油、フラボノイド、イリドイドなどのテルペン類、多糖類などが挙げられています。クロロゲン酸は中国薬局方で品質の公式な指標とされていますが、その含有量は緑色のつぼみの段階から白い花の段階へ進むにつれて減っていくと報告されています。花・葉・茎で成分の構成は大きく異なり、たとえば葉はつぼみや茎よりもヒドロキシケイ皮酸類やフラボノイドを多く含むとされます。こうした違いを見分けるため、さまざまな化学分析や機械学習などの手法が使われていることも紹介されています。遺伝子の面では、約8億4320万塩基対、9本の染色体にまとまった全ゲノム配列が整い、成分づくりや花の色の変化に関わる遺伝子の研究が進んでいるといいます。
報告されている多様な働き
これまでの研究では、スイカズラやその成分に、抗酸化、抗菌、抗ウイルス、免疫の調整、代謝の調整、細菌がつくる毒素(エンドトキシン)への作用など、幅広い働きがあると報告されています。スイカズラ、とくにつぼみは、人や動物のウイルス感染の予防・治療に伝統的に用いられてきました。論文では、インフルエンザウイルスやRSウイルスなどの呼吸器のウイルスを含む多くのウイルスが、報告された作用の対象として挙げられています。また、黄色ブドウ球菌や大腸菌などの細菌についても、抽出物や個々の成分によって増殖が抑えられるなどの影響が報告されています。ウイルスが細胞にくっついて入り込むのを妨げる、細菌の細胞膜を損なうといった、複数の仕組みもまとめられています。
老化に関しては、実験によく使われる小さな線虫を用いた研究が紹介されています。スイカズラの粗多糖類を与えた線虫では平均寿命が13.97%延び、運動性などの指標も改善したとされます。また、エタノール抽出物でも平均寿命が21.87%以上延びたと報告されています。マウスを使った研究では、多糖類が腸内のビフィズス菌や乳酸菌を増やしたという結果もあります。食品への応用例としては、抽出物を4%加えたクッキーが、測定試験で高い抗酸化活性を示したことが挙げられています。
研究の意味
ここで紹介した寿命や腸内細菌に関する結果は、線虫やマウスを使った研究で得られたものです。著者らは、これまでの知見を整理するとともに、さらに調べるべき科学的な課題も示しています。
伝統的に使われてきた一つの植物について、栽培や品質、遺伝子、成分、働きの研究を横断的にまとめたこの総説は、医薬品や栄養補助食品、機能性食品の分野でスイカズラを研究・活用していくための、最新の科学的な土台を示すものだと著者らは位置づけています。
著者:Shuzhen Wang(LiShizhen Culture and Industry Research Center of Traditional Chinese Medicine, Li Shizhen College of Traditional Chinese Medicine and College of Biology and Agricultural Resources, Huanggang Normal University, Huanggang 438000, China)、Fu Xiang(LiShizhen Culture and Industry Research Center of Traditional Chinese Medicine, Li Shizhen College of Traditional Chinese Medicine and College of Biology and Agricultural Resources, Huanggang Normal University, Huanggang 438000, China)、Wei Long(LiShizhen Culture and Industry Research Center of Traditional Chinese Medicine, Li Shizhen College of Traditional Chinese Medicine and College of Biology and Agricultural Resources, Huanggang Normal University, Huanggang 438000, China)、Lei Zhang(LiShizhen Culture and Industry Research Center of Traditional Chinese Medicine, Li Shizhen College of Traditional Chinese Medicine and College of Biology and Agricultural Resources, Huanggang Normal University, Huanggang 438000, China)、Wanju Zhang(LiShizhen Culture and Industry Research Center of Traditional Chinese Medicine, Li Shizhen College of Traditional Chinese Medicine and College of Biology and Agricultural Resources, Huanggang Normal University, Huanggang 438000, China)、Feng He(LiShizhen Culture and Industry Research Center of Traditional Chinese Medicine, Li Shizhen College of Traditional Chinese Medicine and College of Biology and Agricultural Resources, Huanggang Normal University, Huanggang 438000, China)、Chi‐Tang Ho(Department of Food Science, Rutgers University, New Brunswick, NJ 08901, USA)、Shiming Li(Department of Food Science, Rutgers University, New Brunswick, NJ 08901, USA)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Shuzhen Wang, Fu Xiang, Wei Long, et al. Insights into the Health-Promoting Properties and Nutraceutical and Food Applications of Lonicera japonica Thunb.. Molecules 2026-10-04. DOI: 10.3390/molecules31193540. 原著ライセンス:CC BY.