「もやしは工場で水だけを与えて育てる、旬もない野菜」というイメージがある。太陽の光も肥料も使わず人工的に栽培されるのは事実だが、だからといって栄養がないわけではない。日本食品標準成分表(八訂)で4種類のもやしを見比べると、同じ「もやし」という名前でくくれないほど数値に差があることがわかる。

4種のもやしを並べると見えてくる差

りょくとうもやしは、100gあたりエネルギー15kcal、食物繊維1.3g、たんぱく質1.8g。もやしの中でも最もよく出回っているブラックマッペもやし(けつるあずきを発芽させたもの)は100gあたり17kcal、食物繊維1.5g、たんぱく質2.2gと、りょくとうよりやや高い。

ところがだいずもやしになると数字が変わる。100gあたりエネルギー29kcal、食物繊維2.3g、たんぱく質3.6g、脂質1.4g。食物繊維はりょくとうもやしの1.3gに対して2.3gと、実数で1.0g多い。割合にすると約1.8倍にあたり、もやし類の中でも際立った値だ。さらに、だいずもやしは100gあたりモリブデンを57µg含む。モリブデンはプリン体の代謝や有害な亜硫酸を無毒化する酵素の材料になる必須微量ミネラルとされる。モリブデンの推奨量(成人30〜49歳)は男性30µg・女性25µg(日本人の食事摂取基準)。

一方、牧草の種子を発芽させたアルファルファもやしは、細い糸のようなやわらかさが特徴で、100gあたりエネルギー11kcal、食物繊維1.4gともやしの中では軽やかな数値に収まる。だいずもやしと比べると、同じ「もやし」でも由来になる豆や種によって組成がまったく違うことが浮かび上がる。

もやし同士だけでなく、葉野菜とも比べてみる

だいこんの葉は同じ100gあたりで食物繊維4g、β-カロテン3900µg、ビタミンC53mgを含む。β-カロテンは体内で必要に応じてビタミンAに変わるプロビタミンAとされ、ビタミンCはコラーゲンの生成に関わり皮膚や粘膜の健康維持を助ける水溶性ビタミンである。ビタミンAの推奨量(成人30〜49歳)は男性900µgRAE・女性700µgRAE、ビタミンCは男性100mg・女性100mg(日本人の食事摂取基準)。だいこんの葉と並べると、だいずもやしの食物繊維2.3gも決して低い数値ではないが、緑黄色野菜ならではの色素や水溶性ビタミンの厚みには及ばない。もやしともやし以外の野菜、それぞれに得意分野があるということだ。

毎日の食卓への取り入れ方

もやしは日本では生食を避け、加熱して食べるのが原則とされる。だいずもやしは他のもやしよりもたんぱく質や食物繊維の数値が高いので、汁物や炒め物の具に選ぶと、同じ「もやし炒め」でも中身が変わる。だいこんの葉は捨てずに、油炒めや味噌汁の具、菜飯などに使うと、β-カロテンやビタミンCを含む部分を食べる機会になる。ビタミンCは水に溶けやすく熱に弱いため、だいこんの葉を使うときは新鮮なうちに手早く調理するとよい。

まとめ

「もやしは栄養がない」というイメージは、4種類を並べた瞬間に崩れる。違いを生んでいるのは、もとになる豆や種そのものだ。同じ売り場に並ぶ「もやし」でも、選ぶ袋ひとつで中身は変わる。次にスーパーでもやしの棚を眺めるとき、袋の隅に書かれた「りょくとう」「だいず」の文字に、もう一度目を向けたくなる。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準