この研究は、トルコの研究機関の研究論文です。

掲載誌:British Journal Of Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

何を明らかにしようとした研究か

肝臓に脂肪が過剰にたまる状態のうち、明らかな飲酒が原因ではなく、肥満や糖代謝の異常といった心臓・代謝面の危険因子を少なくとも一つ伴うものを、研究チームは「代謝機能障害に関連した脂肪肝(MASLD)」と呼んでいます。論文によれば、世界で最も多い慢性の肝疾患であり、子どもの約10%、大人の約25%が該当すると推定されているものの、その成り立ちはまだ完全には解明されていません。

栄養は本人の努力で変えられる要因のひとつですが、これまでの研究は摂取エネルギーを減らすことに関心が集まりがちで、食習慣や食事に含まれる栄養素の中身がどう関わるのかはよく分かっていない、と著者らは指摘します。そこで本研究は、食事内容と食習慣がMASLDとどう関係しているかを調べることを目的としました。

どのように調べたか

著者らが用いたのは「症例対照研究」という方法です。すでに病気がある人(症例群)と、その病気がない人(対照群)を集めて、両者の特徴を比べる調べ方を指します。2021年3月から7月にかけて、トルコ・コンヤの州立病院の食事相談外来を訪れた18〜65歳の人のうち、最終的に111人(MASLDと診断された56人と、肝疾患のない対照群55人)が対象となりました。MASLDの判定は放射線科医による腹部超音波検査の結果と、心臓・代謝面の危険因子の有無に基づいています。

参加者には、過去1か月の食品群の摂取頻度を尋ねる質問票に答えてもらうとともに、平日2日と休日1日の合計3日分の食事記録をつけてもらいました。あわせて身長・体重・腹囲などの計測と体組成の分析、身体活動の記録、1か月以内に受けた血液検査の結果も集められました。

結果の分析では、年齢・性別・1日のエネルギー摂取量の影響を差し引いたモデルと、さらにBMI(体格指数)も差し引いたモデルの二つが作られています。著者らは、BMIが食事とMASLDをつなぐ経路の途中にある可能性があるため、BMIまで調整すると調整しすぎになりうると考え、後者は感度分析として扱ったと説明しています。

報告された主な結果

食習慣では、毎日朝食をとる人の割合がMASLD群で低く、調理法では揚げる・炒めるを好む人が多い一方、対照群ではゆでる・焼く・オーブン調理が多く、オリーブ油やコーヒーを使う人も多かったと報告されています。

食品群では、MASLD群はトルコの食事ガイドラインが勧める量に対して、乳製品・魚・豆類・果物の摂取が対照群より少なく、逆に穀類は推奨量を大きく上回っていました。栄養素でみると、MASLD群は総エネルギー摂取量と炭水化物、遊離糖の摂取が多く、体重1kgあたりのたんぱく質摂取量、エネルギーに占める脂質・一価不飽和脂肪酸・多価不飽和脂肪酸の割合、そしてカルシウム摂取量が少なく、n-6系とn-3系脂肪酸の比は高いという結果でした。

年齢・性別・エネルギー摂取量を調整した分析では、たんぱく質(体重1kgあたり1g未満)、魚(週1食未満)、豆類(週2食未満)、果物(1日2食分未満)の摂取が少ないことが、MASLDに該当する見込みの高さと結びついていました。さらにBMIを加えて調整すると、魚・豆類・果物との関係は残り、たんぱく質との関係は弱まりました。著者らは、この弱まり方は体脂肪の多さがこの関係を仲立ちしている可能性を示すと述べています。なお乳製品についてBMI調整後にみられた強い関係は、信頼区間が広く精度が限られるため慎重に解釈すべきだとされています。

この報告が示すこと

著者らは、MASLDと結びついていたのは単独の栄養素というより、全体として質の低い食事の傾向だったと結論づけています。同時に、この研究は一時点の断面的な設計であり、食事が脂肪肝を引き起こしたという因果関係は示せないと明記されています。食事は本人の申告に頼っており、両群ともエネルギー摂取量と基礎代謝量の比が低かったことから過少申告の可能性があること、乳製品や穀類を細かい種類に分けていないため解釈に限りがあることも、限界として挙げられています。

それでも本研究は、トルコの人々を対象に食習慣・栄養素摂取・食品群の摂取をまとめて調べた報告として、この分野の限られた知見に加わるものだと著者らは位置づけています。日々の食卓で何をどう食べているかという細かな違いが、脂肪肝という状態と並んで現れていた——その事実を丁寧に記録したところに、この研究の意味があります。

著者:Aziz Kılınç(Gazi University)、Yasemin Akdevelıoğlu(Gazi University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Aziz Kılınç, Yasemin Akdevelıoğlu. Dietary intake and eating habits in relation to metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease: a case–control study. British Journal Of Nutrition 2026-09-25. DOI: 10.1017/s0007114526108447. 原著ライセンス:CC BY.