この研究は、ノルウェー、アイスランド、デンマークの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Future Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

植物性の食材へ関心が移るなかで、海藻のコンブ類は栄養と風味の供給源として注目される食品素材です。この研究で著者らが取り上げたのは、アラリア・エスクレンタ(Alaria esculenta)とサトウコンブ(Saccharina latissima)という2種のコンブ類です。

研究チームは、実際の食品製造で用いられそうな加工工程を経たときに、これらのコンブ類の風味の感じ方(官能プロファイル)と、風味に関わる成分の濃度がどう変化するのかを調べました。とくに関心の中心に置かれたのは、コンブ類の主要な風味と考えられるうま味です。

何をどう調べたか

試された加工には、まずヨウ素(ヨード)の量を下げることを狙った前処理が含まれます。ひとつはパルス電界処理(PEF)で、食品に短い電気パルスをかける方法です。もうひとつは50℃という低めの温度の温海水にさらす処理(W-SW)です。さらに、手間やエネルギーの少ない保存・安定化の方法として、6日間の発酵も試されました。この発酵では72時間以内にpHが4.0未満まで下がっています。

風味の評価は、訓練を受けた7〜8名のパネル(評価者)による官能プロファイリングで行われました。あわせて、風味に関わる成分として、遊離アミノ酸(タンパク質に結びついていない状態のアミノ酸)、ミネラル、マンニトール(海藻に含まれる糖アルコールの一種)、そして香りのもとになる揮発性成分が測定されました。感じられた風味と成分の関係は、部分最小二乗回帰という統計手法で解析されています。

主な報告結果

官能評価では、それぞれのコンブ種について、処理グループ間の違いは比較的小さいものであったと報告されています。違いは主に塩味とうま味の強さのばらつきに現れました。

うま味に注目した解析では、感じられたうま味と遊離グルタミン酸の量との相関は弱いという結果が示されました。一方で、アラニン、トリプトファン、アルギニン、グリシンといった他の遊離アミノ酸が、うま味に寄与しうる成分として挙げられています。揮発性成分では、2,3-ブタンジオン、3,5-オクタジエン-2-オン、1-ペンテン-3-オール、2-ヘキセナール、2,4-ヘプタジエナールなどが強い相関を示し、香りによってうま味の感じ方が強まる現象に関わる可能性のある香気成分として特定されました。

試された組み合わせのなかでは、温海水処理をしたアラリア・エスクレンタが、ヨウ素を安全な水準に保ちながら最もうま味の強い素材となったと著者らは述べています。

この研究が示すもの

この報告は、コンブ類のうま味を遊離グルタミン酸だけで説明するのは十分でなく、他のアミノ酸や香気成分も関わっている可能性を示しています。また、ヨウ素を下げるための前処理や発酵といった工程が、風味を大きく損なうことなく行えたことも示されました。海藻を食品素材として扱ううえで、風味をどの成分から捉えるべきかを考える手がかりとなる研究です。

著者:Pierrick Stévant(Møreforsking AS, PO Box 5075, 6021 Ålesund, Norway)、Dagbjørn Skipnes(Department of Processing technology, Seafood Division, NOFIMA AS, 4021 Stavanger, Norway)、Sophie Jensen(Matís ohf, Vínlandsleið 12, 113 Reykjavík, Iceland)、Aðalheiður Ólafsdóttir(Matís ohf, Vínlandsleið 12, 113 Reykjavík, Iceland)、Rósa Jónsdóttir(Matís ohf, Vínlandsleið 12, 113 Reykjavík, Iceland)、Randi Sund(Department of Processing technology, Seafood Division, NOFIMA AS, 4021 Stavanger, Norway)、Daniel Clayton-Cuch(National Food Institute, Technical University of Denmark, 2800 Kgs. Lyngby, Denmark)、Hanne Aarslev Jensen(National Food Institute, Technical University of Denmark, 2800 Kgs. Lyngby, Denmark)、Valentina Natalia Figueroa Hurtado(National Food Institute, Technical University of Denmark, 2800 Kgs. Lyngby, Denmark)、Wenche Emblem Larssen(Møreforsking AS, PO Box 5075, 6021 Ålesund, Norway)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Pierrick Stévant, Dagbjørn Skipnes, Sophie Jensen, et al. Processing and fermentation effects on kelp flavour: sensory profiles and flavour-active compounds. Future Foods 2026-09-01. DOI: 10.1016/j.fufo.2026.101192. 原著ライセンス:CC BY.