著者の所属・活動拠点の国は、オランダ、デンマークです。

掲載誌:Food Hydrocolloids

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:脂肪を減らしたときの食感の変化をどう補うか

クリームチーズの脂肪を減らすと、なめらかでクリーミーな食感が失われ、ざらつきや粉っぽさを感じたり、塗り広げにくくなったりすることが知られています。こうした食感を補うため、増粘剤やゲル化剤として使われる多糖類を脂肪の代わりに加える方法があります。しかし著者らによると、低脂肪クリームチーズでのこれまでの研究は、硬さや粘りといった性質の測定が中心でした。口の中での「すべり」にあたる摩擦の性質と、人が感じる食感を合わせて調べた例は限られていました。

そこで研究チームは、構造の異なる5種類の多糖類を比べました。κ-カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム(LBG)、シトラスファイバー、カルボキシメチルセルロース(CMC)です。これらを脂肪を減らしたクリームチーズに加え、摩擦、流動のしかた、微細な構造、官能評価(人が実際に食べて食感を評価する試験)の関係を明らかにすることを目的としました。

どのように調べたか

研究では、脂肪をほとんど含まない無脂肪クワルク(酸で固めたフレッシュチーズ)を土台にして、実験用のモデルクリームチーズを作りました。バターから作った乳化液を加えることで、脂肪の量を調整できるようにしています。著者らは、このモデルが市販品のすべての食感を再現するためではなく、脂肪や多糖類の量を管理して比べるためのものだと説明しています。比較対象は、通常脂肪のサンプルと、脂肪を半分にして各多糖類を加えた5種類のサンプルです。

多糖類の添加量は、小さな力を加えたときの硬さ(弾性の強さ)が通常脂肪のサンプルと同程度になるように選びました。ただしシトラスファイバーはこの目標に届かず、著者らは比較の解釈に注意が必要だとしています。

測定は主に三つです。第一に、さまざまな強さで変形させたり流したりしたときの硬さや粘度。第二に、表面どうしをこすり合わせたときの摩擦(トライボロジーと呼ばれる測定)。第三に、クリーミーさ、口どけ、塗り広げやすさ、硬さ、ガム状の弾力、べたつき、口への付着感などの官能評価です。最後に、これらの数値がどう関連するかを統計的に分析しました。なお、比べたサンプルは6種類と少ないため、相関は傾向を示すものとして扱われ、因果関係の証拠とはみなされていません。

主な結果:多糖類ごとに異なる食感

5種類のうち、通常脂肪のクリームチーズに最も近い食感になったのはκ-カラギーナンでした。摩擦の測定値は、通常脂肪のサンプルと統計的に差がありませんでした。著者らは、この結果を低い摩擦と、力を加えると粘度が下がりやすい性質が通常脂肪のサンプルに近かったためだとしています。

一方、グアーガムとLBGは摩擦が最も高く、硬くて弾力が強く、クリーミーさが最も低いサンプルになりました。食感の受け入れられやすさも最も低い結果でした。著者らは、これらの多糖類が絡み合った変形しにくい構造を作り、粘度と摩擦が高く保たれたことが関係していると考えています。CMCを加えたサンプルは、大きく変形させても構造が残りやすく、べたつきと口への付着感が際立って強い結果でした。

物理的な性質と食感の関係も報告されています。クリーミーさと口どけは、粘度が低く摩擦が小さいほど強まる傾向がありました。特に口どけは、摩擦や粘度との関連がクリーミーさよりも強く見られました。逆に硬さとガム状の弾力は、粘度や摩擦が高いほど強まる傾向でした。塗り広げやすさは摩擦とはあまり関連せず、構造が崩れ始める時点の硬さが低いほど高まる傾向が強く見られました。べたつきと付着感は、大きく変形させたときに構造がどれだけ保たれるかと関連していました。

ただし、べたつきや付着感に関する関係は、主にCMCサンプルとの差に支えられていました。CMCを除くと向きが変わる関係もありました。著者らは、こうした関係を今回調べた配合を超えて一般化することはできないと述べています。

この研究が示すこと

著者らは、クリームチーズの食感には大きく二つの物理的な仕組みが関わっていると結論づけています。一つは摩擦と粘度で、主にクリーミーさ、口どけ、硬さ、弾力に関係します。もう一つは大きく変形したときの構造の崩れ方で、主にべたつき、付着感、塗り広げやすさに関係します。

このことから、低脂肪の乳製品で脂肪の代わりになる多糖類を選ぶときは、小さな力での硬さを合わせるだけでは足りないことがわかります。すべりやすさや、大きく変形したときのふるまいも合わせて考える必要がある、という見方が研究から示されています。

原著論文の著者・所属:Yifan Zhang(Physics and Physical Chemistry of Foods, Wageningen University & Research, Bornse Weilanden 9, 6708WG, Wageningen, the Netherlands)、Danique Moonen(Physics and Physical Chemistry of Foods, Wageningen University & Research, Bornse Weilanden 9, 6708WG, Wageningen, the Netherlands)、Lei Ji(Arla Innovation Center, Arla Foods amba, Argo Food Park 19, 8200 Aarhus N, Denmark)、Elke Scholten(Physics and Physical Chemistry of Foods, Wageningen University & Research, Bornse Weilanden 9, 6708WG, Wageningen, the Netherlands)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yifan Zhang, Danique Moonen, Lei Ji, et al. Structure–function relationships in reduced-fat cream cheese: The role of polysaccharide structure. Food Hydrocolloids 2026-10-30. DOI: 10.1016/j.foodhyd.2026.113554. 原著ライセンス:CC BY.