著者の所属・活動拠点の国は、ロシアです。
掲載誌:Fisheries
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
魚は、オメガ3系の多価不飽和脂肪酸であるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)、良質なたんぱく質の供給源として知られています。一方で、スケトウダラやタラのように脂肪の少ない魚は、それだけでは脂肪酸のバランスが偏りやすく、独特の風味が好まれないこともあります。
研究チームは、魚と植物性の素材を組み合わせたミンチ(ひき肉状)製品のレシピを数理的にモデル化し、完成品の脂肪酸組成をあらかじめ予測することを目指しました。目標は、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸(オメガ3系とオメガ6系を含む)の割合を、人の生理的な必要量に見合うよう整えることです。
何を調べたか
実験には、オホーツク海で秋に漁獲された冷凍のスケトウダラ、タラ、メルルーサが主原料として使われました。機能性を補う素材としては、卵、米粉、タマネギ、粉末タイムが用いられています。レシピのモデル化にあたっては、ニンジン、キビ、レンズ豆、キヌア、コリアンダー、バジルなども含め、各素材の脂肪酸組成が整理されました。著者らによると、原料の魚のうちオメガ6系脂肪酸が最も多かったのはスケトウダラ、オメガ3系が最も多かったのはメルルーサでした。
設計の基準には、ロシアの栄養所要量に関する指針が用いられました。1日の脂肪摂取量、総エネルギーに占める各脂肪酸の割合、オメガ6系とオメガ3系の比率などが目安として組み込まれています。
研究チームは専用のコンピュータープログラムを開発し、材料の配合を少しずつ変えながら計算を繰り返し、総合的な評価指標が最もよくなる配合を選び出しました。その結果として得られたのが魚のスフレのレシピです。調理では、スチームコンベクションオーブンの蒸気と熱風の中で、175〜180℃で12〜15分という短時間の加熱が採用されました。
主な結果
実験と試食評価によって、たんぱく質と脂肪の割合が適切になる魚と植物素材の配合比が定められ、試食の平均評点は4.7〜4.9でした。著者らは、短時間の加熱によって重量や栄養成分の損失が抑えられ、香りが豊かで、たんぱく質やオメガ3系脂肪酸などを含む製品が得られたと報告しています。また、先行する報告を引用して、調理によってオメガ3系やオメガ6系脂肪酸の量は減らず、場合によっては増えることもあると述べています。
スケトウダラを使ったスフレについては、魚の配合が最小の場合と最適の場合のそれぞれで、脂肪酸と「理想的な脂肪」との比を表す多項式が示されています。式の当てはまりの良さを示す決定係数は、最小の場合が0.7632、最適の場合が0.9185で、最適の場合の方が良好でした。モデル化の結果、オメガ6系とオメガ3系の比は1.2対0.9となりました。完成したスフレ100グラムあたりの含有量は、オメガ3系が0.365グラム、オメガ6系が0.464グラムで、両者はほぼ同じ割合だったと報告されています。
一方で著者らは、不飽和脂肪酸に含まれる二重結合が加熱や長期保存で酸化を招きうることにも触れています。そのため、このスフレは傷みやすい食品であり、保存できる期間は包装や事前の加熱処理に左右されるとしています。
研究が示すこと
この研究は、脂肪の少ない魚に、穀物や卵、香味野菜、ハーブといった素材を組み合わせ、配合を計算で探ることで、完成品の脂肪酸組成を狙いに近づけるレシピ設計の手法を示しました。素材ごとの成分データと栄養基準をもとに製品の脂肪酸バランスを事前に見積もるという考え方が、魚のミンチ製品づくりの具体例として提示された研究です。
原著論文の著者・所属:A. T. Vasyukova(Vernadsky Russian State University of National Economy)、A. R. Edwards(ROSBIOTECH)、N. I. Myachikova(Belgorod State National Research University (NRU "BelSU"))、N. M. Portnov(Federal Nutrition Monitoring Center for Students)、N. V. Vasilievich(K.G. Razumovsky Moscow State University of Technology and Management (PKU))
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):A. T. Vasyukova, A. R. Edwards, N. I. Myachikova, et al. Forecasting fatty acid profiles of minced fish products. Fisheries 2026-07-31. DOI: 10.36038/0131-6184-2026-3-153-162. 原著ライセンス:CC BY.