著者の所属・活動拠点の国は、イタリア、ポルトガルです。
掲載誌:Journal of Food Composition and Analysis
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
ピスタチオは、生のまま、ロースト、塩味付き、菓子の材料など、さまざまな形で食べられているナッツです。香りや風味、油の性質には、加熱で変化しやすい「揮発性成分」(空気中に漂って香りとして感じられる化合物)と、油を構成する「脂肪酸」が大きく関わっています。
研究チームは、イラン、スペイン、米国、トルコという4つの産地表示をもつピスタチオを対象に、ローストによって香り成分と脂肪酸組成がどう変わるかを調べました。あわせて、これらの成分の違いから産地ごとの差を見分けられるかを予備的に検討しています。これまで、ローストの影響と産地の影響はそれぞれ別々に調べられることが多かったと著者らは述べています。そこで本研究では、香り成分と脂肪酸の両方を、生とローストの両方の状態で分析し、統計的にまとめて評価しました。
何をどのように調べたか
試料は、イラン、スペイン、トルコについては1ロットずつ、米国については同じ産地内のばらつきを見るために2ロットを用いました。各ロットを生のものとローストしたものに分け、ローストはオーブンで140℃、45分間行いました。
香り成分は、粉砕した試料の上部の空気に含まれる成分を細い繊維に吸着させて集め、ガスクロマトグラフィー質量分析で種類を特定しました。値は内部標準物質との比較による相対的な量で、絶対的な濃度ではないと論文は説明しています。脂肪酸は、抽出した油を分析しやすい形に変えてから測定し、全脂肪酸に占める割合として示しました。得られたデータは、多くの成分をまとめて試料どうしの違いを探る多変量解析にかけられました。
主な結果
生とローストのピスタチオから、合わせて52種類の揮発性成分が確認されました。生のピスタチオでは、植物由来の香り成分であるテルペン類が主体で、揮発性成分全体のおよそ68%を占めていました。主なものはα-ピネン、リモネン、α-テルピノレンでした。
ローストすると、テルペン類はおよそ66%減少しました。代わりに、糖とアミノ酸などが加熱で反応する「メイラード反応」に由来する成分が増えました。こうした成分は、香ばしさやナッツらしさ、カラメルのような香りに関わるとされます。とくにピラジン類は、生のピスタチオからはどの産地でも検出されず、ローストした試料では一貫して検出されました。著者らは、ピラジン類は産地ではなくロースト処理を示す目印になるとしています。フラン類やピロール類もローストで増えましたが、増え方は試料によって異なりました。
脂肪酸では、どの試料でもオレイン酸とリノール酸が中心で、両者を合わせると全脂肪酸の85%以上を占めました。オレイン酸の割合は生とローストの間で有意な差がなく、論文はローストによる脂肪酸組成の変化は小さかったと報告しています。また、トルコの試料はオレイン酸の割合が約74%と、ほかの試料より有意に高い値でした。
多変量解析では、試料が表示された産地ごとに区別されました。区別に寄与した可能性のある成分として、テルペン類、メイラード反応由来の成分、パルミチン酸が挙げられています。
この研究が示すこと
この研究は、ローストによってピスタチオの香りの構成が、植物がもともと持つ成分中心から加熱で生まれる成分中心へと大きく移る一方、油の脂肪酸組成は比較的安定していることを示しました。香り成分と脂肪酸を組み合わせて解析する方法は、ローストの影響の評価や産地の違いの把握に役立つ可能性があると著者らは述べています。
ただし、各産地の試料は1〜2ロットに限られ、品種や収穫・保管の条件も分かっていません。そのため著者らは、今回の産地間の比較は分析したロットについての探索的なものであり、産地判別の手法として確立したものではないと強調しています。米国の2ロットの間でも違いが見られたことから、差のすべてを産地だけで説明することはできないとしています。
原著論文の著者・所属:G. Pedron(Department of Pharmaceutical Science, Università degli Studi del Piemonte Orientale “A. Avogadro”, Largo Donegani 2, 28100 Novara, Italy)、G. Barbieri(Department of Pharmaceutical Science, Università degli Studi del Piemonte Orientale “A. Avogadro”, Largo Donegani 2, 28100 Novara, Italy)、Y. Jaouhari(Department of Pharmaceutical Science, Università degli Studi del Piemonte Orientale “A. Avogadro”, Largo Donegani 2, 28100 Novara, Italy)、M. Bordiga(Department of Pharmaceutical Science, Università degli Studi del Piemonte Orientale “A. Avogadro”, Largo Donegani 2, 28100 Novara, Italy)、José S. Câmara(CQM – Centro de Química da Madeira, Universidade da Madeira, Campus da Penteada, 9020-105 Funchal, Portugal; Departamento de Química, Faculdade de Ciências Exatas e Engenharia, Universidade da Madeira, Campus da Penteada, 9020-105 Funchal, Portugal)、R. Perestrelo(CQM – Centro de Química da Madeira, Universidade da Madeira, Campus da Penteada, 9020-105 Funchal, Portugal)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):G. Pedron, G. Barbieri, Y. Jaouhari, et al. Volatile and fatty acid profiles of raw and roasted pistachios (Pistacia vera L.) from different geographical origins: A preliminary study. Journal of Food Composition and Analysis 2026-10-04. DOI: 10.1016/j.jfca.2026.109562. 原著ライセンス:CC BY.