著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Animals
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
大豆かすの一部を昆虫由来のたんぱく源に置き換える
文昌鶏は中国南部の在来の黄色い羽の鶏で、柔らかい肉と豊かな風味で市場から高く評価されています。一方で、飼料費が高く、たんぱく源を大豆かすに頼っていることが生産上の課題とされています。
研究チームが注目したのは、アメリカミズアブ(ブラックソルジャーフライ)の幼虫を粉末にした「幼虫ミール」です。論文によると、この素材は乾物あたり約40〜50%の粗たんぱく質を含み、アミノ酸のバランスもよいとされます。さらに幼虫は生ごみや家畜のふんなどの有機廃棄物で育てられます。著者らは、幼虫ミールが大豆かすや魚粉に代わるたんぱく源になりうると考え、文昌鶏の成長、と体の性質、肉質、腸の状態にどのような影響が出るかを調べました。
4種類の飼料で雌の文昌鶏を飼育
実験には生後50日の雌の文昌鶏192羽を使いました。鶏を4群に分け、脂肪を除いていない幼虫ミールを飼料の0%、5%、10%、15%含む飼料をそれぞれ与えました。幼虫ミールは大豆かすの一部と置き換える形で配合し、粗たんぱく質の量はすべての飼料でそろえています。代謝エネルギーの差もわずかになるよう設計しました。一方、幼虫ミールが増えるほど飼料中の脂質も増えました。著者らは、これを全脂肪の幼虫ミールが本来持つ性質であり、今回調べる要因の一部と位置づけています。
研究チームは、体重の増え方や飼料の効率に加えて、肉の色、硬さ、加熱や保存で失われる水分を調べました。さらに、胸肉のアミノ酸と脂肪酸の組成、血液・筋肉・腸に含まれる抗酸化に関わる酵素、腸の消化酵素と構造、盲腸に住む細菌の構成も分析しました。
成長・肉質・腸で報告された変化
成長については、15%群の最終体重が対照群(0%)より有意に重くなりました。15%群では、体重を1増やすのに必要な飼料の量を示す「飼料要求率」も有意に下がっており、少ない飼料で同じだけ成長したことを意味します。体重増加あたりの飼料費も、幼虫ミールを与えた群で低くなりました。一方、と体の歩留まり、胸肉・もも肉の割合、腹部の脂肪、主な臓器の重さには有意な差がありませんでした。
肉質では、15%群で肉の赤みが増しました。肉を切るのに必要な力(せん断力、値が小さいほど柔らかい)は幼虫ミールが増えるほど下がる傾向を示し、有意な低下は15%群でみられました。48時間保存したときの水分の流出と、加熱時の重量減少も有意に減ったと報告されています。筋線維の太さに差はありませんでした。胸肉の成分では、10%群でアスパラギン酸、15%群でメチオニンとロイシンが増えました。10%群と15%群ではオレイン酸を中心とする一価不飽和脂肪酸も増えましたが、飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸の総量は変わりませんでした。
体内の酸化を抑える働き(抗酸化能)にも変化がありました。体内の過酸化物を分解する酵素グルタチオンペルオキシダーゼの活性は、血液ではすべての幼虫ミール群で有意に上がりました。筋肉では15%群で有意に上がっています。また10%群の筋肉では、抗酸化の仕組みを調節するタンパク質Nrf2とKeap1の量が増えていました。腸では、十二指腸と空腸で抗酸化酵素の活性が上がり、空腸ではでんぷんを分解する酵素α-アミラーゼの活性が10%群と15%群で高まりました。論文では、十二指腸と回腸で栄養を吸収する突起(絨毛)が高くなったことも報告されています。10%群と15%群では、腸粘膜の傷みの目安とされる血中ジアミンオキシダーゼの活性が下がりました。空腸では、腸の細胞どうしをつなぎ物質の素通りを防ぐタンパク質(オクルディン、クローディン1)が増えていました。
盲腸の細菌では、細菌の種類の豊富さやかたよりといった多様性の指標に差はありませんでした。それでも、幼虫ミールを与えた群は対照群と全体的な細菌の構成が異なっていました。5%群では善玉菌として知られるビフィズス菌が多くなり、15%群では腸球菌(エンテロコッカス)が多くなっていました。
配合量によって異なる効果と残された課題
著者らは、大豆かすの代わりに幼虫ミールを5〜15%加えると、配合量に応じて文昌鶏に有益な効果が現れると結論づけています。成長、飼料効率、肉質は15%で、腸内のビフィズス菌などは5%で最もよい結果でした。こうした変化は、抗酸化能の高まり、腸のバリア機能の向上、盲腸の細菌構成の変化と関連していると論文は述べています。
一方で著者らは、15%群で腸球菌が増えたことには安全面の懸念があるとし、長期間の給与による評価が必要だと指摘しています。今回の試験は雌だけを対象とした比較的短い期間のもので、食味の官能評価も行っていません。それでも本研究は、昆虫由来のたんぱく源が在来鶏の飼料の選択肢になりうることを示すと同時に、配合量によって得られる効果と注意点が異なることを明らかにしました。
原著論文の著者・所属:Xingke Wang(Animal Nutrition and Feed Laboratory, School of Tropical Agriculture and Forestry, Hainan University, Danzhou 571737, China)、Qin Wang(Animal Nutrition and Feed Laboratory, School of Tropical Agriculture and Forestry, Hainan University, Danzhou 571737, China)、Ruiying Bao(Animal Nutrition and Feed Laboratory, School of Tropical Agriculture and Forestry, Hainan University, Danzhou 571737, China)、Qian Yang(Animal Nutrition and Feed Laboratory, School of Tropical Agriculture and Forestry, Hainan University, Danzhou 571737, China)、Qingchao Yang(Animal Nutrition and Feed Laboratory, School of Tropical Agriculture and Forestry, Hainan University, Danzhou 571737, China)、Zeru Peng(Animal Nutrition and Feed Laboratory, School of Tropical Agriculture and Forestry, Hainan University, Danzhou 571737, China)、Yang Zhang(Animal Nutrition and Feed Laboratory, School of Tropical Agriculture and Forestry, Hainan University, Danzhou 571737, China)、Haiwen Zhang(Animal Nutrition and Feed Laboratory, School of Tropical Agriculture and Forestry, Hainan University, Danzhou 571737, China)、Huiyu Shi(Animal Nutrition and Feed Laboratory, School of Tropical Agriculture and Forestry, Hainan University, Danzhou 571737, China)、Xuemei Wang(Animal Nutrition and Feed Laboratory, School of Tropical Agriculture and Forestry, Hainan University, Danzhou 571737, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Xingke Wang, Qin Wang, Ruiying Bao, et al. Dietary Black Soldier Fly Larvae Meal Improves Growth Performance and Meat Quality Associated with Enhanced Antioxidant Capacity and Intestinal Health in Wenchang Chickens. Animals 2026-08-20. DOI: 10.3390/ani16162608. 原著ライセンス:CC BY.