強い塩気の漬物といえば、ザーサイ 漬物はくさい 漬物 キムチを思い浮かべる人は多いはずです。ところが100gあたりのナトリウム量を見比べると、ザーサイが5400mg、キムチは1100mgと、実に5倍近い差があります。同じ「塩気の強い漬物」というくくりで語られがちな2つですが、塩気の効かせ方はまったく別物でした。

ナトリウムで攻めるザーサイ、酸で補うキムチ

ザーサイのナトリウム5400mgは、今回並べた食品の中でも際立って高い値です。ナトリウムは細胞外液の浸透圧や量を保ち、神経や筋肉の活動などに関わる成分で、漬け込みの過程でしっかりと塩分が入り込んでいることがうかがえます。

一方のキムチは、ナトリウム量こそ控えめですが、有機酸の内訳を見ると酢酸0.1g、クエン酸0.1gと、発酵由来の酸を含んでいます。クエン酸はクエン酸回路に関わり、エネルギー代謝の中心的な役割を果たす有機酸です。一般に、薄味でも酸味を加えると満足感が得られ減塩に役立つとされ、キムチでもこの発酵の酸味が塩気の印象を後押ししていると考えられます。同じ「しょっぱい」という感覚でも、ザーサイは塩そのもの、キムチは酸との合わせ技で成り立っているようです。

キムチの色素、β-クリプトキサンチン

キムチにはもう一つ注目点があります。100gあたりβ-クリプトキサンチンを110µg含み、今回比較した食品の中ではキムチにのみ値が見られます。体内でビタミンAに変わるプロビタミンAの一種で、とうがらしや白菜由来の色素成分と考えられます。ナトリウムだけでなく、こうした成分の違いも2つの漬物を分ける個性になっています。

漬物・調味料の塩気グラデーション

塩気の強さは漬物同士だけの話ではありません。味つけや保存に塩を使う調味料・加工食品まで見わたすと、負けず劣らずの顔ぶれが並びます。たとえばウスターソースはナトリウム3300mg、オリーブ 塩漬 グリーンオリーブは1400mgと、キムチのナトリウム量とそう変わらない、あるいはそれ以上の値を持ちます。ウスターソースは有機酸も1.5gと多く、その大半を酢酸が占めます。ここでもやはり、酸味と塩気が組み合わさって全体の味を作っている食品があることがわかります。すべてを並べると、ザーサイ(5400mg)、ウスターソース(3300mg)、オリーブ(1400mg)、キムチ(1100mg)という塩気のグラデーションが見えてきます。

ちなみに同じ漬物でもきゅうり 漬物 ピクルス スイート型はナトリウム440mgと少なく、代わりに果糖5.2g・ぶどう糖5g・しょ糖4.9g(いずれも推定値)という糖の並びが示す通り、甘みの効いた漬物であることがうかがえます。塩気だけが漬物の個性ではありません。

一食量に換算すると差はさらに開く

ここまでは100gあたりの数値ですが、実際に口にする量で比べるとどうなるでしょうか。ザーサイの目安量は1個約80g、キムチは1人分約30gです。この目安量で単純換算すると、ザーサイ80gからのナトリウムは約4320mg、キムチ30gからのナトリウムは約330mgとなり、その差は約13倍に広がります。100gあたりで5倍だった差が、一度に食べる量そのものもザーサイの方が多いために、ここまで開く計算です。少量のキムチを箸休めに添えるのと、ザーサイをおかずとして食べるのとでは、体感する塩気の差はデータ以上に開くことになります。食塩相当量の目標量(成人30〜49歳)は男性7.5g以下・女性6.5g以下という点も意識しながら、どちらをどれだけ食卓に乗せるかを考えたいところです。

まとめ

ザーサイとキムチは、どちらも塩気の強い漬物として一括りにされがちですが、ナトリウムそのもので攻めるザーサイと、発酵の酸味で塩気を補うキムチとでは、味の作られ方が違います。ウスターソースやオリーブの塩漬けまで含めて眺めると、漬物・調味料の塩気には食品ごとに異なるグラデーションがあることが見えてきます。次に食卓に並べるときは、同じ「しょっぱい」でもどちらの仕組みで効いているのか、一口味わって確かめてみるのも面白いはずです。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準食品安全委員会e-ヘルスネット「ナトリウム」(厚生労働省)