朝晩に涼しさが混じり、店先に鬼皮のつやが並び始めました。日本ぐり(生)の旬は9月から10月の終わりごろまでで、9月はその走りにあたります。2024年産の収穫量では茨城県が31.8%を占め、全国のおよそ3分の1がこの一県から出ています。

買ってきた栗を、そのままかじる人はいません。ゆでるか、ご飯に炊き込むか、砂糖で煮るかしてから口に入れます。どれを選ぶかで、成分表の栗は別の欄へ移ります。その中で、食べ方によって残ったり消えたりする成分が一つあります。ビタミンCです。

まず「生」の欄から

日本ぐりは山地に自生する柴栗を原種とする栽培種で、丹波栗のような大粒種から、銀寄のような中粒種、柴栗のような小粒種まであります。殻(鬼皮)と渋皮を包丁でむくと、重さの3割は皮です。残った黄色い部分を可食部100gあたりで見ると、炭水化物36.9gのうちでん粉が26.2gを占め、脂質は0.5gしかありません。売り場ではアーモンドと同じ種実類の棚にいますが、中身はでん粉です。そしてこの欄には、ビタミンCが33mg載っています。種実類の棚でそれを探す人は少ないはずですが、栗は持っています。

この欄で目立つのがマンガンの3.27mgです。マンガンはいくつかの酵素の構成成分として働く無機質で、穀物や豆類など植物性の食品に多く含まれます。食事摂取基準の目安量は成人(30〜49歳)で女性3mg、男性3.5mgですから、生の欄だけを読めば「栗100gで1日分」と受け取れます。けれど、生の栗を100g食べる人はいません。生の欄の看板は、食べる形になると当てになりません。

「ゆで」の欄に移ると

成分表には日本ぐり(ゆで)の欄が別に載っています。殻ごとゆでて湯を切った栗で、重さはゆでる前の97%とほとんど減っていません。それなのにマンガンの欄は1.07mgと、生のおよそ3分の1です。栗ご飯やゆで栗として食卓に上るのは、こちらの値のほうです。

ビタミンCは26mgで、生の8割近くが残ります。減るものばかりでもありません。食物繊維総量は6.6gと、生の欄より大きな値が載っています。差はすべて不溶性食物繊維の側で、水溶性食物繊維は0.3gのまま動きません。カリウムたんぱく質も、ゆでの欄のほうがわずかに大きい値です。

ただし、ゆでれば栗の中で食物繊維が増える、と読むのは早合点です。生とゆでは成分表の上で別々に測られた食品で、同じ一粒を追いかけた数字ではありません。表は可食部100gあたり。

成分 日本ぐり 生日本ぐり ゆで日本ぐり 甘露煮中国ぐり 甘ぐり
マンガン3.27mg1.07mg0.75mg1.59mg
ビタミンC33mg26mg0mg2mg
食物繊維総量4.2g6.6g2.8g8.5g
カリウム420mg460mg75mg560mg
たんぱく質2.8g3.5g1.8g4.9g
エネルギー147kcal152kcal232kcal207kcal

甘露煮と甘ぐりでは、ビタミンCはほぼ残らない

栗にはもう一つ、日本ぐり(甘露煮)の欄があります。砂糖で煮て汁を切った栗で、ビタミンCは0mgになります。代わりにエネルギーは232kcalと、生より85kcal多くなります。

街角で売られる天津甘栗は、日本ぐりとは別の種である中国ぐりを焼いたものが多くて、成分表でも中国ぐり(甘ぐり)として別の欄を持ちます。こちらはビタミンCが2mgしかなく、代わりに食物繊維総量は8.5gと、日本ぐりのどの欄より大きい値です。ゆで栗の26mgと見比べると、同じ「栗」の名で買っても、口に入る数字はここまで離れています。

店先で鬼皮のつやを見て選んだ栗は、その時点ではまだ成分表の「生」の欄にいます。鍋で火を通し、湯気の中で殻を割ったとき、数字は「ゆで」の欄へ移っています。生の欄で目立っていたマンガンはそこで脇に退きますが、ビタミンCは大半がそのまま残ります。砂糖で煮れば消え、焼いた中国ぐりにもほとんどありません。栗でビタミンCが手に入るのは、鍋から上げたばかりのゆで栗です。今年はじめてのゆで栗を割るとき、手の中にあるのはそういう栗です。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準農林水産省 作物統計