8月11日は「山の日」でした。この日にちなんで、山菜やきのこ、栗やとちの実といった山の幸に目を向けてみると、初夏から秋にかけて山が私たちに届けてくれる恵みの豊かさに気づかされます。春の若芽から始まり、夏の果実、秋の実りへと続く「山の恵みのリレー」を、栄養成分表のデータとともに眺めてみましょう。
まず春を告げる山菜からです。たらのめは100gあたり葉酸を160µg含み、これは女性30〜49歳の推奨量240µg/日の67%にあたります。同じく春の味覚であるわらびは、あく抜きをして食べる山菜として知られていますが、100gあたりビタミンB2を1.09mg含み、推奨量1.2mg/日(女性30〜49歳)の91%に達します。渦を巻いた若芽が特徴のぜんまいも、葉酸210µg(推奨量の88%)と、山菜の中でも高い数値を示しています。ビタミンB2も葉酸も、多くの栄養素の代謝や赤血球の形成に関わるとされる成分で、山菜はそれぞれ違う持ち味を見せてくれます。
山のきのこの王様、その成分面での際立ち
そして山の幸を語るうえで欠かせないのが、香りの王様と呼ばれるまつたけです。天然ものしか出回らないこのきのこは、香りの高さで知られていますが、成分表を見るとまた別の顔が見えてきます。100gあたりのセレン含有量は82µgで、これは女性30〜49歳の推奨量25µg/日の328%にあたる量です。比較した山の幸の中で2番目に多いのは日本ぐりの3µgですから、その差はおよそ27倍です。セレンは体内で抗酸化に関わる酵素の成分となる栄養素です。なお、セレンには耐容上限量が定められており(女性30〜49歳: 350µg/日)、この328%はあくまで推奨量に対する割合であり、上限量の基準ではありません。まつたけはさらにパントテン酸1.91mg、ビオチン18µgでも比較食材中トップに立っており、香りだけでなく成分面でも存在感を放っています。
「では栗も負けじと続くのか」と思いきや、日本ぐりが誇るのはセレンではなくマンガンでした。100gあたり3.27mgと、女性30〜49歳の目安量3.0mg/日と同水準の値を示しています。マンガンはいくつかの酵素の構成成分として働くとされる、栗ならではの持ち味です。山の恵みは一つの成分軸だけで測れるものではなく、それぞれが違う得意分野を持っているとわかると、見え方がぐっと面白くなります。
山の日ならではの食べ方
秋が近づけば、炊き込みご飯や土瓶蒸しでまつたけの香りを楽しむ人も多いでしょう。まつたけは香りを楽しむ食材として、少量を味わうのが昔ながらの楽しみ方とされています。栗はゆでたり蒸したりして食べるほか、殻ごとポリ袋に入れて冷蔵・冷凍保存する方法も知られています。おにぎりを片手に、山の恵みを少しずつ味わい分けるのも、山の日らしい楽しみ方かもしれません。
まとめ
山の日に並ぶ山の幸を眺めてみると、それぞれが違う持ち味で山の栄養を体現していることに気づきます。たらのめやぜんまいは葉酸で、わらびはビタミンB2で、栗はマンガンで存在感を示す一方、まつたけはセレンという一点で際だった数値を示していました。次に山に登るときは、足元の山菜や頭上の栗の木にも、少しだけ栄養の物語を重ねてみてはいかがでしょうか。詳しい摂取基準については日本人の食事摂取基準もあわせてご覧ください。
※本記事で紹介した栄養素の働きは一般的な知識であり、特定の食品の効果・効能を示すものではありません。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準