この研究は、ポーランド、イタリアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Applied Sciences

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: Crossref

何を明らかにしようとした研究か

コンブチャは、細菌と酵母が共生する種菌「SCOBY(スコビー)」を使って紅茶を発酵させた飲料です。近年は紅茶以外の材料を使った発酵飲料への関心も高まっていますが、著者らによれば、紅茶以外を基質(発酵のもとになる材料)にした場合にどうなるかについての知見はまだ限られています。また、地域の異なるSCOBYどうしで微生物の構成や性質に違いが報告されていることも、比較を難しくしてきました。

そこで研究チームは、発酵の基質の種類と、SCOBYの由来する地域という二つの要因が、できあがる飲料の微生物学的・理化学的な性質、抗酸化活性、抗菌活性にどう影響するかを調べました。研究者らが立てた仮説は、これらの性質が基質の種類とSCOBYの産地(ポーランド産かイタリア産か)によって有意に変わる、というものです。

どのように比べたか

著者らは、紅茶、牛乳、米飲料という組成の異なる三つの基質を選びました。これらは一つの飲料の材料としてではなく、それぞれ独立した発酵の土台として使われています。紅茶は従来のコンブチャの基質、牛乳は動物由来、米飲料は植物由来の代替基質という位置づけで、糖やたんぱく質の量、酸に対する緩衝のはたらき(急な酸性化を和らげる性質)などが互いに大きく異なる点が比較の要になっています。

ポーランドの大学で維持されてきたSCOBYとイタリアの大学から提供されたSCOBYをそれぞれ用い、三つの基質と組み合わせて計六種類の飲料を仕込み、25℃・暗所で72時間発酵させました。この72時間という共通の期間は、基質をまたいでSCOBYのはたらきを直接比べられるようにするために設定されたと説明されています。発酵の前後で、生菌数(総菌数、酢酸菌、乳酸菌、酵母・カビ)、pH、有機酸と糖の量、総ポリフェノール量、抗酸化活性、そして食中毒などに関わる四種類の細菌に対する抗菌活性が測定されました。

報告された主な結果

微生物の増え方には基質による差がはっきり出ました。紅茶と牛乳を基質にした飲料では3日目に総菌数がおよそ6.0〜8.0 log CFU/mLに達した一方、米飲料では微生物の増殖が限られていました。pHはすべての飲料で発酵によって低下しましたが、著者らは、生菌数が最も少なかった米飲料でむしろpHの低下が大きかった点に注目し、米の基質の緩衝能が低いことや、最終的な培養菌数には表れない代謝活動が関係している可能性を挙げています。つまり、pHの変化は必ずしも培養できた菌の数に比例しない、という指摘です。

有機酸の組成も基質ごとに異なりました。紅茶ベースのコンブチャには酢酸、乳酸、グルコン酸がまとまった量で含まれ、乳酸が定量できたのは牛乳ベースの二つの飲料だけで、そこでは発酵によって大きく増加しました。抗酸化活性は紅茶ベースが最も高く、米飲料ベースが最も低いという結果でした。総ポリフェノール量は抗酸化能と正の相関を示しています。

SCOBYの産地による違いも報告されています。ポーランド産のSCOBYを使った飲料のほうが酸性化が進み(pHはおよそ3.66〜4.36)、抗菌活性もより強く、試験した菌のなかでは大腸菌が最も影響を受けやすい菌でした。ただし著者らは、抗菌活性の測定法が半定量的であること、試料間のばらつきが大きかったことを挙げ、数値の細かい比較ではなく阻止の有無や種類間の大まかな違いとして解釈すべきだと注意を促しています。

この研究が示していること

この研究は、コンブチャ様の発酵の結果が、材料である基質によって主に左右され、そこに種菌の由来による違いが重なることを示しました。紅茶が抗酸化活性の高い飲料をつくる基質として適していることが確かめられた一方、牛乳や米飲料といった別の基質でも、それぞれ異なる性質をもつ発酵飲料が生まれうること、ただし抗酸化の面では紅茶ベースに及ばない可能性があることが報告されています。同じ「コンブチャ」という名前でも、何を発酵させ、どこの種菌を使うかによって中身がかなり変わる——本研究が伝えるのは、そうした発酵の多様さです。

著者:Katarzyna Neffe-Skocińska(Institute of Human Nutrition Sciences, Warsaw University of Life Sciences (WULS), Nowoursynowska St. 159, 02-776 Warsaw, Poland)、Arianna De Risi(Department of Biology, University of Naples Federico II, Via Cinthia, Bld. 7, 80126 Naples, Italy)、Monika Godlewska(Institute of Human Nutrition Sciences, Warsaw University of Life Sciences (WULS), Nowoursynowska St. 159, 02-776 Warsaw, Poland)、Marcin Kruk(Institute of Human Nutrition Sciences, Warsaw University of Life Sciences (WULS), Nowoursynowska St. 159, 02-776 Warsaw, Poland)、Patrizia Contursi(Department of Biology, University of Naples Federico II, Via Cinthia, Bld. 7, 80126 Naples, Italy)、Dorota Zielińska(Institute of Human Nutrition Sciences, Warsaw University of Life Sciences (WULS), Nowoursynowska St. 159, 02-776 Warsaw, Poland)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Katarzyna Neffe-Skocińska, Arianna De Risi, Monika Godlewska, et al. The Influence of Substrate and the Origin of Symbiotic Culture of Bacteria and Yeasts on the Microbiological, Antioxidant, and Antibacterial Properties of Kombucha-like Beverages. Applied Sciences 2026-09-01. DOI: 10.3390/app16189067. 原著ライセンス:CC BY.